今週は、発売している商品が、甘酒の『玄米がユメヲミタ』、お米『コシヒカリアモーレ』お米のヌカを使ったカイロ『ぬくぬくのぬか』、そのカイロをさらに進化させた『ヌカモフ』。ユニークな名前の商品を届ける 株式会社 山燕庵をご紹介します。代表取締役の杉原晋一さんにお話をうかがいました。

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山燕庵は、今回取材にお答えいただいた杉原晋一さんのお父様、杉原正利さんが始めた会社です。出版社でお仕事をされていた正利さんは、老後のビジネスとして福島県に農業生産法人をたちあげ、お米づくりをスタート。そこに、息子の晋一さんが加わりました。

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「私が一緒にやり始めたのは、東日本大震災がきっかけとなります。それまでずっと手伝いで入っていたんですが、震災を経験して福島県の会社なのでいろいろ内側から見ることになりまして、そこでどうやって今後生きていこうとか、食べ物を選ぶのはどうしたらいいんだろうとか、いろいろ考えが変わりました。そこで、それまでの会社を辞めて2013年から父と働こうということになり、やっぱり自分自身も安全で美味しいものを今後も食べていきたいと考えて、そうすると究極自分で作るのが信頼できるので、じゃあその自分で作るものをみんなに食べてもらう仕事を続けたいなと思いました。これまでの会社を辞めるのは大変でしたが、今後楽しく生きるにはやっぱりお米作って売った方が自分にはあってるなと感じまして。」

晋一さんが加わって1年、山燕庵は甘酒を発売します。商品名は『玄米がユメヲミタ』。

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「『玄米がユメヲミタ』というタイトルは日暮真三さんというコピーライターの方に考えてもらいました。日暮真三さんは有名どころでは『無印良品』の名前を考えた方でもあるので、素晴らしい商品名にしていただきましたね。父がずっと出版業界で働いていて、その繋がりで商品開発の時もお手伝いしていただきました。

『玄米がユメヲミタ』の特徴は、自社生産のお米を使っていることと、玄米で作っているということです。白米で作る甘酒が一般的なんですが、玄米で作っています。そして、発酵しているのは、石川の金沢にあるヤマト醤油味噌さんで、玄米をそこのお味噌蔵で発酵していただいています。」

さらに、日暮真三さんは、山燕庵のお米をこう名付けました。

『コシヒカリアモーレ』!そして山燕庵の情熱的な商品作りは、その後、『ぬくぬくのぬか』というヒットを生み出します。これは、米ぬかを使ったカイロです。

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「『ぬくぬくのぬか』はぬかで作ったカイロです。中身がぬかとお米とお塩、あとハーブを何種類か入れています。それを布の袋に入れて電子レンジで温めるとほかほかと保温時間が続いて、部屋の中だと30~40分は温かいですし、何度も繰り返し使えるのでエコな商品です。

もともと、ぬかのカイロはうちの母が作っていたもので、私が小学生の頃に近所のおばちゃんにレシピを教わって作っていたんです。久しぶりにタンスの奥から出てきてあっためたら、こりゃいいわ、ということで、5年くらい前にそれをきっかけにワークショップを始めた、ということになります。」

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この『ぬくぬくのぬか』はこんな商品に発展しました。毛布のようにあたたかい生地を使ったカイロ、名前は『ヌカモフ』。

「『ぬくぬくのぬか』がとても評判が良くて、コラボレーション企画もありました。これは『ヌカモフ』という商品なんですけど、70seedsというPR会社さんと出会いがありまして、そのPR会社さんから『すごくいい商品なので一緒に商品を作りましょう』ということでクラウドファンディングをやったんです。ここでアパレルブランドのALL YOURSさんと、障害者の方にスポットをあてる実験ユニットのヘラルボニーさんをつなげてくださいまして、ALL YOURSさんの生地を使って、ヘラルボニーさんが紹介してくださった障害者施設の方に縫製をお願いして、PR会社の70seedsの力を借りて販売する、という商品です。今でもその障害者施設さんで『ぬくぬくのぬか』の縫製は全部やってもらっています。」

お米の生産だけでなく、自由な発想とさまざまな人とのつながりで事業の幅が大きく広がりました。今、山燕庵はこんなコラボレーションもおこなっています。

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「今、銭湯とコラボしているんです。うちのぬかを高円寺の小杉湯さんで小杉湯のぬかのお風呂としてやってもらっています。『もったいない風呂』っていう企画で、うちのぬかは捨てちゃうものがほとんどなんで、そのぬかを入浴剤として使ってもらっています。それが好評で、小杉湯の隣りにできた小杉湯となりという施設のごはんとしてうちのお米を使っていただいたりもしています。お米作って、うちのお米美味しいぞ、と売るだけだと厳しいのは間違いなかったんですけど、いろんな人といろんなつながりでいろんな見せ方、お米でもできるんだぞというのが最近わかってとっても楽しいです。お米が銭湯になるとは思わなかったですからね。」

山燕庵ウェブサイト