今回注目するのは【YATAI CAFÉ】。

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この【YATAI CAFÉ】、コーヒーやクッキーを提供していますが、運営するのは飲食業の方ではありません。屋台を引くのは、医師=お医者さんです。なぜお医者さんが?? そこにはどんな意図が??兵庫県豊岡市の医師、守本陽一さんにお話をうかがいました。

現在は、兵庫県の公立豊岡病院 出石医療センターに勤務されている医師の守本陽一さん。

【YATAI CAFÉ】のきっかけは、守本さんが関東地方で医学部に通っていた学生時代、医学部の学生などと始めた『医療教室』、という活動でした。

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「もともと地域診断ということをやっていて、その地域のなかで医療者の役割は病気を治すことなんですが、治すだけじゃなく、地域の中の健康課題とか、病気にならないようにするにはどうすればいいんだろうとか、病気になってもwell beingに生きていけばいいかというのも、医療の役割だと思うんです。なので、そういった地域の中での医療の課題がないかヒアリング調査をしている中で、コミュニティが希薄化していたり、救急車を呼びにくいという住民性があって、その課題を地域住民の方に知ってもらおうということで医療教室をしていたんですが、なかなか人が集まらないということがありました。そこで当時、東京大学の家庭医の孫大輔先生、密山先生がされていた『モバイル屋台de健康カフェ』という活動に僕も参加させていただいていたんです。」

医療教室に人が集まらないのであれば、街に出てみよう。東京大学の医師が 谷中・根津・千駄木、いわゆる谷根千でおこなった『モバイル屋台de健康カフェ』。2016年、守本さんはこちらに参加しました。そして、そのあとすぐ、出身地の兵庫県で自らYATAI CAFÉをスタート。活動は今も続いています。

「今は、始めた時のメンバーとは結構変わってるんですけど、同じように街に出て行って予防の活動とか地域の人の居場所を見つけたいとか、そういう想いを持っている人が6~7人いるので、みんなが集まりやすい、おやすみの日にやっています。

屋台は、コーヒーが基本になるんですけど、特徴的なのが、物々交換でコーヒーを提供しよう、ということにしているところです。

地域の方がいろいろ差し入れてくださるので、豆をいただいたりお菓子をいただいたりピザ屋さんに行ったらピザを1枚いただいたり、地域のあたたかさに触れながら活動しています。結構、他愛もない話をすることも多いですし、人によっては、なぜこういうことをやってるんですか?とか聞いてくる方がいれば、そういう方には実はお医者さんをやっていてと話すと、相談が出てきたりとか、こういう困りごとがあってとかいう話が出てきたりもします。」

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さらに、YATAI CAFÉをおこなう中で、こんな出来事もありました。

「健康相談もするんですけど、他にも、世間話をしたりとか、高校生がコーヒーを飲む横でおじさんがコーヒーを飲んでて、そこで、地域の人の繋がりが再構成されていて、普段は出会わないと思うので、そういう出会いがあるのも面白いなと思ってやってます。実際に学校でなじみにくいような学生さんも来てくれたんですが、そこで出会った人と音楽の趣味が共通していて、そういうところに遊びに行かせてもらって地域に居場所ができました、ということもありますね。」

街に出て、そこで出会った人と 健康のことを話す。 2016年からスタートした【YATAI CAFÉ】ですが、 その活動をさらに進め、今度は、図書館を作りたい、ということで ただいま、クラウドファンディングを実施中。

「【YATAI CAFÉ】は地域に出ていくんですが月に1回程度とか少ない回数なので、いろんな人と出会えるのはいいんですが、やはりずっと開いている場所がある、固定した場所がある方がいいのかなと思いました。

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前回、YATAI CAFÉはコーヒーだったので、今度は本、というところで、図書館を街の商店街の空き店舗に作ってみようということでやっています。豊岡自体が結構、今、演劇の街を目ざしていて、平田オリザさんが移住されたり、大学ができたり盛り上がってきていて、地域でイベントをやる人が出てきていますが、そういうイベントをやったりとかわいわい人と話す場所も大切ですが、話したりイベントに行くのは抵抗があっても、図書館に本を借りに行ったり、買いに行ったり、というくらいなら好きで行く方も多いのかなと思っていて、そういう暮らしの導線上で今度相談室をやってますとか、本を借りにきてケアの相談ができます、ということであれば、必要なケアにつながることもあるのかなというところで。」

守本陽一さんに、最後にうかがいました。 医師として病院で仕事をすることに加えて、 【YATAI CAFÉ】や 新たな図書館を作る理由、 そして、その活動に先に思い描く未来とは?

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「医療というのは人が生きていく上での一部なのかなと思うので、生きていく上で、より健康になるといいなと思っていますが、なかなか医療と接点がなかったり、その人の自己責任にされることも多いかと思います。

最近だと格差とか孤独、貧困がかなり人の寿命に影響しているのでは、と言われることも多いので、そういったことを街全体で、医療者だけじゃなく、地域の人たちとパートナーシップを結びながら活動していって、住んでいたら健康になるという街がいつかできたら素敵なんじゃないかなという風に思ってます。」

【YATAI CAFÉ】が挑戦中のクラウドファンディング(11/27まで)