今回は廃棄物から丁寧に素材を取り出し、それを活用することを提案、実践する会社をご紹介します。

20201002h07.jpg

群馬県の工場に持ち込まれる廃棄物は1日60トンから70トン、という 株式会社ナカダイ。そして、その廃棄物にまつわる課題をクリエイティブに解決する 株式会社モノファクトリー。2つの会社の代表をつとめる、中台澄之さんにお話をうかがいました。

20201002h04.jpg

株式会社ナカダイは、今回取材にお答えいただいた中台澄之さんのおじいさまが立ち上げた会社。澄之さんは大学卒業後、証券会社での勤務を経て1999年、ナカダイに入社。環境への意識の高まりとともに、会社の業績も上がりました。しかし、、、

「手前味噌的になりますが、リユースもします、リサイクルもします。もともと鉄のスクラップの仕事もやっていたので解体の技術もあって、ほとんど全てのものをリサイクルできるということもあって、非常に拡大をしていったんですけども、ご多聞にもれず来季の売り上げどうするかという話をする中で、結局、前年より何10トン廃棄物を増やすという話にしかならなくて、その気持ち悪さがあったんです。どこかで廃棄物を減らす、という社会的なニーズに応えなきゃならない、というのと、私は営業畑なので、営業をすると廃棄物を出すお客さんは、『廃棄物を出さない方法はないのか?』とか『コストを下げる方法は?』と聞かれるんです。もちろん教えるんですけど、これ教えちゃうと売り上げが減っちゃうんだよなとか、気持ち悪い、いやらしい気持ちも腹の中にはあって、とにかく、お客さんのニーズ、社会のニーズと私たちの利益が全く一致していないという状況を打破したい、と強く強く思ったのが2006年ですかね。そこでテンパってしまって、ふんぎったという感じですかね。」

社会の利益と、自分たち会社の利益が一致しない。この状況を打破するために、中台さんはこう考えました。

「製造業さんがやるように、自分たちの工場に入ってきた部品をきっちりその特徴を掴んで組み合わせて付加価値をつけて何か新しい製品を作ってお客様に売る。そうすることで自社の中で付加価値をつけてるよね、というのと同じで、私たちが部品として仕入れるのは何ですか、というと廃棄物なので、廃棄物の魅力だったりスペックをどんどん掘っていって、中台から出ていくときに、その廃棄物で入ってきたものの魅力を一番持った状態で外に出してあげる。

20201002h02.jpg

すごくおかしな言い方ですけど、廃棄物、ゴミで入ってきたものの魅力を再発見することが一番キーだ、ということに理屈上着地して、そこからビジネスのスキームを変えて、これまでの効率的にリサイクル処理をしてリサイクル率を高めるリサイクル処理から、丁寧に選別、分別、解体して、素材を生産する会社だよ、と会社のコンセプトを変えて、動き始めたのが2008年、ですかね。」

廃棄物から丁寧に取り出され、よみがえった素材。まずは、ファッションや建築の業界から活用され、例えば、このコーナーでも以前ご紹介しました、、、建築家、隈研吾さんが内装を手掛けた、吉祥寺 ハモニカ横丁の焼き鳥屋さん てっちゃんでは、ナカダイが提供した LANケーブルやアクリルが 使われました。

群馬県にある株式会社ナカダイ、その工場に運びこまれる廃棄物の量は、1日あたり、60トンから70トン。そのうち、実に99%がリサイクルされています。

「リサイクルをずっと詰めていくと、グシャーっと入ってきた廃棄物を大きな機械でガシャガシャガシャと効率的に処理するのは人件費、人はほとんどいらずに、粉塵も出るし、音も大きいので機械でやってもらうのがいいのかもしれないです。でも、ちゃんと丁寧にお客さん自体が分別して置いていってくれたら、パソコンもグシャグシャってやらずに、1個1個ドライバーで解体していった方がリサイクル率は高いし、コストも安くなるんです。それは、1個ずつ解体することで、丁寧に分別しているので、それぞれで売れる金額が結構高くなる。どこかに人件費をペイしてくれる臨界点があって、私たちは実はそこをかなりこだわって追求しているんです。だから、廃棄物の現場って、ゴミ分別してるだけでしょと思われるかもしれませんが、少なくともナカダイでは、そのモノそのモノに1個ずつ対峙していかないといけないので、めっちゃくちゃクリエイティブな現場なんですよね。」

20201002h01.jpg

その廃棄物にはどんな素材が含まれていて、どうすればそれを取り出すことができるのか? そのために最適な道具は何なのか?それを瞬時に判断して 作業する。70人ほどのスタッフが、そんなクリエイティブな仕事に日々取り組んでいます。

「だから、ナカダイだけできてね、という話をしてても仕方ないので、僕らのここ数年のチャレンジは、機械でグシャグシャって処理するのと、ナカダイみたいに人かかえて人件費使って分別するのと、どっちがもうかりますかっていうと、ナカダイスキームの方がはるかにもうかります、というのを、証明しなきゃいけないということで頑張ってきて。

実は一昨年くらいからもともとやっていたよりはるかにいい結果が出るようになってきているので、今は声高に一見、人件費がかかってコスト高に見えるけれど、実はこっちの方が収益も上がるし、従業員のことを考えてもクリエイティブに仕事ができるということをいろんなところに言って、それを導入したいという廃棄物業者さんも何社か出てきてますね。」

20201002h05.jpg

自分たちの会社だけではなく、この方法を他の業者にも広めたい。中台澄之さんは そう考えています。それは、環境についてこんな想いがあるからです。

環境のことは、一度ダメージを受けたら、環境をなおすワクチンは絶対にないので、自然が治癒するまでひたすら待つしかないんですね。大気汚染がひどいので外出禁止してください、って言われたら大気汚染が収まるまでじっと待つしかない、っていう最悪の事態になるというのはもう何となく肌で感じていると思います。環境のことはなってからやるのでは全く遅いので、ならないように、一人一人ができることを行動するということと、企業の方については、そういうことが起こらないように、自社の商品はしっかりマネージメントしていきましょう、ということは訴えておきたいですかね。」

株式会社 ナカダイ WEBサイト

株式会社 モノファクトリー WEBサイト