今週注目するのは、SKY-HIさんがリリースした3枚組のベストアルバム『SKY-HI's THE BEST』。

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SKY-HIさん、これが初のベストアルバム、ということですが、なぜ今、ベストをリリースしようと考えたのでしょうか?

「一つはストリーミング全盛の時代に自分の昔の曲を聴いたり、使ったりしている人を見たときに、ヴォーカルプロダクトだったりドラムの鳴りだったり今聴くと恥ずかしいなと思うものがあったので、録り直してコンパイルしたいとは少し前から思っていて。ちょうど去年くらいの段階で、一回ピリオドを打ちたいなというか、正直、引退しようかなと思ったこともあるんです。基本的に人は音楽を耳だけでなく目でも聴くとよく言いますし、付随する情報で音楽を聴くと思っているんですけど、自分の場合は付随する情報があまりにも多すぎて。もちろん自分が生きてきた中でくっつけてさせてきた情報なんですけど、それをできるかぎり削ぎ落としたいなという気持ちはかねてからあったと思います。でも、それで例えば自分が引退してしまうと、自分は本名がわれてしまっているので、全然得策じゃないなとは思いましたね。」

自分にまつわる情報をそぎ落とすために、一度は『引退』という言葉も浮かんだ、と語るSKY-HIさん。しかし、今は前向きに自分のベストをつくし、46曲をコンパイル。Disc1、『-POPS BEST-』の1曲目は、「カミツレベルべット2020」。もともとは2015年にリリースされた曲で、ファン投票で1位に輝いたナンバーです。

「ポップスを作ろうと思いまして。ラッパーとしての背骨はどうしたって背骨なので、望もうが望まなかろうがラッパーであることは変わりないんだけど、その上でちゃんとポップスを作れる様になりたいと2013、2014でもがき、あがき、一番集大成というか、自分の中で一番ポップな曲を作れたのが、2015年の『カミツレベルベット』でしたね。ポップ、というのは、階段をのぼることだと思っていて、本当に大変な作業だったんですが、人生の機微、2015年当時までに色々あった人生の機微を言葉で表せないといけないし、階段を降りた曲は作りたくなかったんです。機微ということではいいばかりではないので、自分で自分を追い詰める感情に向き合ってかけたと思うので、それがいろんな人の人生に、すごく雑で軽くてきざい言い方をすると、人生の応援歌になる力があったんだなと思うとファン投票で1位というのも納得ができるし。」

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今回のベストアルバムは3枚組。『-POPS BEST-』『-RAP BEST-』『-COLLABORATION BEST-』この3枚に分かれています。

「活動理念というか、もしかしたら生きている上での理念かもしれないんですが、激しく対極にあるものにすごく惹かれるし、激しく対極にあるものにすごく呪われているとも思うんですが、生きる上でのテーマ、音楽をやる上でのテーマ。表裏一体ですよね。それこそ『カミツレベルベット』みたいなものを作るために、自分を追い詰めたりとか突き詰めたりする作業と、DISC2の1曲目の『フリージア』みたいな自分が自分であるために作る作業は対極にあるようで同じようなものだと深く思っていて、そこまで話すとすごく長く、自分の生きている意味みたいになるのでちょっとあれなんだけど。(笑)

ラップを突き詰めるということ、ポップであるということ、コラボレーションはそのエクステンド、というか、音楽はコミュニケーションだと思っているので、コラボレーションべスト。どうやって生きてきたのか、ベストアルバムってひと口で説明しないといけないと思うので、『-POPS BEST-』『-RAP BEST-』『-COLLABORATION BEST-』というのを作るアーティストなんだなというのが自分にとっての意思表示なんだなと思ったので。」

『-RAP BEST-』に収録された新曲のタイトルは、「Sky's The Limit」。これは、新たなチャプターへ突き進む、SKY-HIさんの宣言なのでしょうか?

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「そういう意思表示は明確にしたいと思いました。それをするときに励ますとか、勇気づけるという言葉ではなく、暴論で行きたいなと思いました。少なからず、世間の目、世の中、様々ナシステムにファイティングポーズをとる形で生きてきたというのは自分のファクターとしてあるので、それはそのまま曲にすると暴論になるし、暴論を吐いてやろうと思って書きました。ほんとにまだ限界はないと思いますし、もっと広く知れ渡ってもいいのにという気持ちは強くある。こんなもので限界だとは思って欲しくないし、書いて再確認するというか、感情の一部分、すごく強い自分の一部分を明確に歌にしたら、このくらいの気持ちが出てきた、ということなのかなと思います。」

取材を担当したディレクターが、SKY-HIさんにアルバムの感想をこう話しました。

『聴いていて、元気が出た。』

「それは俺も実は同じようなことを感じて、ポピュラリティを得る、ポップスとして強いものを作りたい、ラッパーとして技術を研鑽したいとか、周りにいるライバルとの関係とか、生きてきてものすごく振り返るともがいたりあがいたりしていることが多かったと思うんです。でも、全て今言ったポップスに関してもラップに関してもライバルに関しても、もがきやあがきが強かったと思ってたんですけど、思ってただけで、曲を聴いたら、決して明るい曲ばかりじゃないけど、ものすごく前向きなエナジーが言葉やメロディに込められていて。あ、なるほどねと。すごく真剣にもがいたり、あがいたりした結果、生み出されたものにはこれだけ前向きなエナジーが込められていたんだなと思ったら、音楽やっててよかったなと思ったし、なんか、自分に背中を押されましたね、振り返っていたら。」

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