今回は今年の春、下北沢に誕生した新たなスタイルの商店街、【BONUS TRACK】のHidden Storyです。

20200821h01.jpg

小田急線の東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅のあいだが地下化したことによる、線路の跡地。このうち、下北沢駅と世田谷代田駅の中間に生まれたのが【BONUS TRACK】です。

運営を担当する、株式会社 散歩社の小野裕之さんにお話をうかがいました。

「もともと線路だった部分、線路なので幅30~40メートルくらい、長さが2キロくらい空き地ができまして、そこにBONUS TRACKという区画を作りましょうということで始まったプロジェクトです。僕がこのプロジェクトに関わり始めて小田急電鉄と話始めたのは3年前でした。その時は、住宅街の中におもしろい現代版の商店街、と言っていたんですが、2階がおうちで、1階にお店、という形でいろんなテナントさんに入ってもらって運営したいんだけど、と言われました。」

20200821h02.jpg

2017年、小野さんは小田急電鉄から相談を受けました。

「もともと僕はgreenz.jpというウェブマガジンをやってまして、greenzはソーシャルとかエコとか地方創生とか、そういうことを14年前からやっていたウェブマガジンです。そこでいろんなソーシャルヴェンチャーとか社会起業家とかローカルで頑張っている方を紹介していたんですが、その現代版の商店街を作りたい、ということを小田急電鉄さんが考えたときに、greenz.jpの取材先、そこに出てくるような若者たちが出店してくれるようなエリアを作りたいんだ、ということで相談をいただいたのが2017年の秋でしたかね。」

小野さん、当初は、アドバイザー的な役割でしたが、新しい街についての議論が進む中で、街全体の管理・運営を担当することになりました。小野さんは、下北沢でB&Bという書店を経営して来た内沼晋太郎さんと一緒に『散歩社』という会社を設立。ともに、BONUS TRACKに入居するテナントについて検討を始めました。 

内沼と僕がふたりで経営している、ということがよく出ていると思います。内沼は、ずっと本屋という業界、出版業界、映画の配給したり、出版事業をしたり、カルチャー色が強いんです。そして、僕は社会起業とかローカルとかソーシャルとかローカルの文脈が強くて、このソーシャル、ローカル、カルチャーというのは今となってはおもしろい仕事だと言っていただけるんですが、ビジネスのためにビジネスをやっているわけではない。他にもっと大事なことがあるよね、ということも含んだビジネスなので、どんどん儲かるビジネスではないんです。どの店舗もただのビジネスというよりは、社会福祉法人がやっていたり、B&Bだったら新刊書店がいまきついなかで、どうやったら書店を街に残していけるか。そういうビジネスとかお金を稼ぐ以外に大事なことがあるよね、ということを続けるためにいろんな工夫をしている人たち集まって、結果として、僕がつながりのあった方が半分、内沼がつながりのあった方が半分のような、いいバランスに収まっていったというのが実態ですね。

20200821h03.jpg

新しい商店街【BONUS TRACK】は、小田急線の下北沢駅と世田谷代田駅の中間に今年の4月、開業。どんなお店があるのかというと、、、例えば、このコーナーでもご紹介した、恋する豚研究所。障害がある人もそうでない人も同じ目線で働くことを大切にする、恋する豚研究所が運営する『コロッケカフェ』。地方と都会をつなぐ日本橋のおむすびスタンド『ANDON』の2号店、『お粥とお酒 ANDON』。そして、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが、発酵文化をテーマにオープンした『発酵デパートメント』などが入居しています。

「ぱっと見、普通に見えるお店、ぱっと見、何のお店だろうとフワッとした感じに思われる方も多いんですが、それぞれほんとにこだわりの、というか、さっき言った商売をまわす以外の哲学とか、社会がこういう風になったら、という想いを全員が持っているんです。でもただ、お店のよさというのは気軽に来れる。メディアをやってると聴いてもらったり見てもらったり記事を読んでもらうとか選んでもらう必要がありますが、お店ってふらっと入るとか、目的もなくただずむとか、そういうのがゆるされるのが魅力だと思うんです。いろんな社会のひずみとかもっとこうなったらいいのにという問題意識を持っているオーナーばかりなんですが、普段はそれほど暑苦しくなく、普通に入っていただけて、詳しく知りたければお話したり、リーフレットがあるお店も多いですが、気軽に楽しんでもらえたら嬉しいです。」

20200821h04.jpg

【BONUS TRACK】の運営を担当する小野裕之さんに最後にうかがいました。これから、【BONUS TRACK】をどんな街にしていきたいと考えていますか?

「まずひとつは気持ちのいい場所なので、引き続き散歩で来てもらえればと思います。で、今後、コロナが落ち着いたらイベントもやっていきたいと思うんですが、実はコーヒー屋として開業したい、ケーキ屋さんとして開業したい、あるいは本業じゃなくても料理が得意なので振る舞いたい、それに料金をもらって小商いみたいにやりたい、そういう何か新しいチャレンジをしたい方に出店をつのるマルシェもやっていきたいと思っています。こういうチャレンジをしたいとか将来やりたいことについて話せる友達がまわりにいないということであれば、相談にももちろんのりますし、テナントのオーナーさんもそうやって自分で20代からそういうことをやってきた方ばかりで、たまたまですが、35~40歳の方がオーナーとしては多いので、そういう風景に触れていただいたりとか、具体的に相談を持ち込んでいただいたり、そういうこともできる場所になったらいいなと思っています。いろんな関わり方を提供したいと思っていますので、乞うご期待、ということですね。」

BONUS TRACKウェブサイト