今回、注目するのはNPO法人【おてらおやつクラブ】です。

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おてらおやつクラブ、どんな活動をしているのかというと、、、?「全国のお寺にお供えされるお菓子や果物など、お供えものですね。これをさまざまな事情で生活困窮する、主にひとり親の家庭におすそわけする活動です。国内の子どもの貧困という課題を解決することを目指して活動しています。」

今回、取材にお答えいただいたのは、NPO法人【おてらおやつクラブ】の代表理事、奈良県にある安養寺の住職、松島靖朗さんです。松島さんに この活動を始めたきっかけを教えていただきました。

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「今から7年ほど前くらいに始めた活動なんですが、お寺にはたくさんのお供え物があります。ときにはお菓子や果物、お野菜など、お寺の中では食べきれないほどいただくこともあります。その一方で、一日一食の食事に困るひとり親家庭が増えている、いまの日本の状況もあります。2013年5月24日、大阪でお母さんと息子さんが餓死状態で見つかるという事件がありました。この事件は大変衝撃的で日本国内にもいろんな問題を提起しましたが、二度とこの悲劇を繰り返さないためにも、お寺にあるお供えをいろんな事情により一日一食の食事に困る子ども達に届けることができないかということで始めたのがこのおてらおやつクラブの活動です。」

さまざまな事情によって、一日一食の食事に困る家庭にお寺のお供えものをおすそわけしたい。松島さんは、大阪で立ち上がった支援団体CPAOに食料をおくる活動を始めました。最初は、安養寺の独自のアクションだったのですが、松島さんはもっと活動を広げる必要を痛感することになります。

最初、私の個人的な活動だったんですが、他のお寺にも広げようと思ったのにはきっかけがあります。最初お持ちしていた大阪の団体さんの代表が私にこうおっしゃったんです。『月に1回おすそわけを届けてくれるのは嬉しい。だけど、まだまだ数が足りない』。その団体が日常的に支援する家庭は何十何百とある。それに対して私がお持ちするのはダンボール2箱くらいですから、まだまだ足りないんです。『もっともっとおすそわけを届けたい家庭があるんですよ』とおっしゃられて。私自身は個人的に何かよいことをしているなと思っていましたから、そういうご相談を聞いてハッとさせられたというか、まだまだやることがあるな、多くの力が必要だなと考えるようになりました。」

先輩のお寺に直接声をかけたり、インターネットで情報を発信したり、松島さんは 仲間を増やすことに力を注ぎました。【おてらおやつクラブ】は、2017年にNPO法人化。活動は全国に広がっていきました。必要としている方へ食料を届ける仕組みは、支援団体を通して届ける形や、【おてらおやつクラブ】から直接届ける形があります。

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「様々な状況でおてらおやつクラブにおすそわけを届けてほしいという声をいただきます。いろんな事情で団体さんとつながれていないお母さんには、直接私たちNPO法人の事務局から届けつつ、相談にのりながら地域の団体さんを紹介したりそのお母さんが必要な支援をご紹介しています。私たちの事務局がやっている業務はメインが地域のお寺と地域の支援団体をつなぐことで、その地域の間でおすそわけをおくり受け取っていただく。そのことを通じてそれぞれの地域で見守りを作っていく活動です。全国津々浦々お寺はありますし、子どもの貧困は全国さまざまな地域で起こっています。ですから、それを解決しようと立ち上がる地域の支援団体と、地域で昔からお供えものがあるお寺をつなげることで、その地域での貧困問題を解決する。そんなネットワークを作るのが私たちの活動です。」

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お寺にお供えされるお菓子のほか お米、野菜、果物、レトルト食品、缶詰、さらに、文房具、日用品まで さまざまなものを必要としている家庭へ届ける【おてらおやつクラブ】。

今月上旬の段階で、参加しているお寺の数は全国で1465。毎月およそ1万人の子ども達に おすそわけが送られています。数は増えていますが しかし、代表の松島靖朗さんは、こう考えています。

「実は全国にお寺は7万あると言われているんですね。そう考えますとまだ数パーセントの活動ですからまだまだ広げていけるポテンシャルもあると思います。なので、貧困問題をもっと知ってもらう啓発をしていくと同時に、参加する人たちを増やしていく必要があると思います。7万すべてというのは難しいと思うのですが、これが何千何万となっていきますと、お寺は全国津々浦々にありますから、社会インフラとして貧困問題を解決する、その地域の社会インフラとして機能するポテンシャルは十分あると考えています。単純に食べ物をおくっているということではなくて、地域のつながりもそうですし、困りごとを相談できるということもあります。また、実際顔をあわせることはほとんどないんですが、自分たちがどこか会ったことはないけれど誰かに見守られている、そんな安心を届けている活動でもあります。」

松島さんに最後にうかがいました。

いま、新型コロナウイルスの影響を受け、活動を利用する方からはどんな声が聞こえてきますか?

「全国のお母さんから助けての声がこれまで以上に届くようになりました。活動の基本は先ほど申しました通り、地域のお寺と地域の支援団体をつなぐことでおすそわけを通じて地域の見守りを作るということなんですが、すでにあるセーフティネットにアクセスできないお母さんがコロナのなか増えてきている状況があって、助けての声が届くようになっています。そうした声に事務局からは直接おすそわけを届けつつ、ご相談にのっています。

いま、コロナ禍に加えて、災害ですね、大雨災害もあります。そんななかで特に取り残されてしまうのが、ひとり親家庭です。ひとり親家庭におすそわけを届けるためにしっかり活動を続けていく。その先には誰ひとり取り残されない、どんな環境で生まれても笑顔でいられる社会を作っていけると信じて活動を続けていきたいと思っています。」

おてらおやつクラブウェブサイト