今回注目するのは【今朝の浜】という缶詰です。

水揚げされた魚によって、毎朝中身が変わる缶詰【今朝の浜】。

島根県浜田市の株式会社シーライフ、専務取締役の河上清貴さんにお話をうかがいました。

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島根県浜田市の浜田漁港は、水産業の振興上、特に重要な漁港として全国の13の港だけが指定されている『特定第3種漁港』です。そんな漁業が盛んな街、浜田にある会社 シーライフ。

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まずは、【今朝の浜】という缶詰を始めた経緯を教えていただきました。

「【今朝の浜】のコンセプトがその日に水揚げされて余っている魚、値がつかなかった魚を缶詰にしたものです。漁師さんがせっかくとってきても規格が大きかったり数がそろわなかったりで流通にのらない魚が浜田港にはあふれていたので、そういう魚を使った缶詰です。もともと浜田市は水産加工業が有名なんですが、干物屋さんが多くて、干物に適さないような大きすぎる魚、小さすぎる魚、干物に向かない魚種が未利用魚になりやすくなります。漁師さんとか港の関係者が仕分けをする時に、発泡スチロール1ケースに満たない魚であったり、あとは1匹2匹とれたものが港にはありますので、そういう魚を使っています。きっかけは仲のいい漁師さんがいて、『余っている魚があって困ってるんだけど、どうにかしてくれないか』と言われて考え始めました。」

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株式会社シーライフは、今回お話をうかがった河上清貴さんのお父様、河上清志さんが水産加工会社から独立し 立ち上げた会社です。当初は干物に特化していましたが、2017年、缶詰の事業をスタートします。

「創業してから弊社も干物一本でやってきていたんですが、干物だけだと苦しいですし、魚はいっぱいあるのに干物以外は作れなくてもやもやしていたので、新しい加工品を作りたいなと思って缶詰に挑戦しました。きっかけは、のどぐろという魚がブームになって観光客の方も増えたんですが、干物は冷凍品なのでお土産として持って帰れないから、簡単に持って帰れるものを、という声がきっかけでした。弊社は今でも干物が主業なんですが、干物にして美味しい魚をあえて缶詰にしてみました。」

数年前から大人気となっている のどぐろ。そして、あじ、かれい などを缶詰にして販売していたところへ、漁師さんや漁業関係者から、未利用魚=流通にのせられない魚について相談がありました。 これを受けて、【今朝の浜】というシリーズが誕生したのです。

「通常の缶詰会社、大手の缶詰工場さんは一回にロットが何万缶と決まっているんですが、弊社の場合はすべて手作業小ロット、一日300缶しかできない缶詰工場なんです。だから例えば、一尾の魚で5缶とか、三尾の魚で10缶とか、そういう小ロット生産も対応できます。全部手作業なので、魚一尾だろうが、大きかろうが小さかろうが、小回りきいて動き回っています。」

その日の朝、島根県の浜田漁港に水揚げされた魚によって 中身が変わる缶詰、【今朝の浜】。シーライフはこれまで、多くの種類の魚を缶詰にしてきました。

今、実際、魚は50種類くらいあるんですが、すべて今朝とれたものだよと新鮮でフレッシュなシリーズとなっています。毎日毎朝水揚げされる魚が違うので、ほんとに毎日いろんな魚を缶詰にしています。通販もやっていますが、通販はおまかせ、旬の魚おすすめ6缶セットとか24缶セットとかこちらで旬の美味しいものを選んで出荷しています。例えば6缶セットだと4缶くらいは聞き覚えがあるけれど、2缶くらいはレアな魚、珍しい魚を入れて楽しんでもらえるようにしています。ユメカサゴとか、ダツ、ヤガラ、おそらく見たこともないような魚になります。今まで食べたことない魚、聞いたことがない魚でも美味しいものがあるんだという発見の声をいただきました。

流通にのらない魚を缶詰に。この発想が生まれたもうひとつの背景にあるのは、海の環境の変化です。

いま漁業といいますか、水産でとれる魚が、漁師さんたちも見当をつけるのが難しいくらい環境が変わってきているので、ほんとにたまたま揚がったものとか、まぎれていたものがあって。夏とれていたものが春にとれたり、毎年とれていたものが今年は全くとれなかったり、というように変わってきています。地球温暖化とか、あとは魚のえさの問題とか、魚の多さの問題がかなり深刻になっていると思います。」

河上清貴さんに最後にうかがいました。缶詰【今朝の浜】、どんな食べ方がおすすめですか?

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弊社の缶詰は非常に薄味なので料理に使っていただくことをおすすめしています。中でも缶詰の汁には非常に美味しい出汁が含まれているで、汁を一緒に使う料理、炊き込み御飯とか、パスタとか、アクアパッツァとか、汁を上手に使って身と一緒に楽しんでいただければと思います。

いま、魚がなかなか食べられない、魚の人気が低下しているなかで、産地で工夫して漁師さんや加工会社が協力しあって新しい商品とか販売の仕方を考えているので、ぜひ食べていただければなと思います。」

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株式会社シーライフ WEBサイト