JリーグJ3のクラブ、ガイナーレ鳥取。

実は、サッカー以外のプロジェクトとして芝生を生産する事業に取り組んでいます。今週は、そのプロジェクト『Shibafull』のHidden Story。

今回、取材にお答えいただいたのは、ガイナーレ鳥取を運営する株式会社SC鳥取の 高島祐亮さん。まずは、サッカークラブがなぜ芝生の生産にチャレンジすることになったのか、そのきっかけを教えていただきました。

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ストーリーは2つあるかなと思ってまして、ひとつは我々のスポンサーである株式会社チュウブさんという芝生の専門会社さんがあるんですが、チュウブさんと話すなかで、普通スタジアムは造園業者さんとかに委託して運営しているんです。でも、あまり胸をはって言えることではないんですが、お金がなかったので自分たちで管理していて、チュウブさん的にはスタジアムを自分たちで管理すると芝が枯れたりだめになると想定していたそうなんですが、年々よくなっていると。ならそのノウハウをいかせば芝生も売れるんじゃないかという気づきをいただいたのがひとつ。そして、ガイナーレはいまJ3というJリーグでいえば3部で、どうしても親会社がないもので、資金的にいろいろと新しい売り上げを作らなければならないと。そういった背景があったのが2つ目になります。この2つが組み合わさって事業を立ち上げようと。これが経緯になります。」

クラブのスポンサーで、ガイナーレ鳥取のホームスタジアムのひとつ【チュウブYAJINスタジアム】にも名前が使われている株式会社チュウブ。

「鳥取県にある芝生の専門会社さんで、みなさんご存知の新国立競技場の芝生を作っている会社さんです。鳥取県は実は芝生どころでして、芝生の生産量は全国2位の都道府県なので、その中にある芝生の生産会社がチュウブさんです。実際に僕たちがいるチュウブYAJINスタジアムがあるのは米子市で、弓浜半島という砂でできた半島にあるんです。そこで砂をベースに作れる作物は、実は芝生がぴったりで、目の前というか周りを見渡すと荒れ果てた休耕地があって『もしかしたらこれ畑に使えるんじゃないか』というのは土地勘として持っていたので。」

芝生を育てるのに適した環境。そして、『荒れ果てた休耕地を活用し、そこに緑を復活させること』。このヴィジョンにクラブのスポンサーのみなさんも賛同。2017年、【Shibafull】がスタートしました。

「芝生という文字とfull、満たすをかけた造語で、芝生で満たされた町になってほしいとか、芝生で笑顔が増えるとか、そういう意味を込めてこのプロジェクト名にしました。満面の笑み、みたいな。初年度は5000平米ほど農地を借りて芝生を作りました。その活動のなかで、そういった活動をやっているならうちも芝生化したいという声もいただいて、境港市にあるつばさ保育園に出荷をさせていただきました。去年ですと、宿泊施設『OOE VALLEY STAY』というところがあるんですが、そこに出荷させていただきました。」

プロジェクトを手がける高島祐亮さんは今後の展開について、こう考えています。

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「芝生の使い道はどうしても公園だとか学校だとかと思われがちですが、もっと家庭だとか法人の社屋だとかいろんな使い方ができるということを提案していきたいと思います。また、これまでは基本は鳥取県内のつながりがあるみなさんに販売をしていましたが、もっと全国のみなさんに鳥取の芝生を買っていただく、知っていただく機会も増やしていきたいですし、今の活動を広げて、興味を持ってくださる方が増えれば、僕たちも生産面積を増やして、地元の耕作放棄地の解消につながるので、そういうリンクを持ちながら活動を続けていければなと考えています。」

【Shibafull】は、100年続くクラブを目指す『SC鳥取百年構想』。ここに込められた想いを形にした活動です。高島さんは、最後にこんなことを話してくれました。

「100年構想って、100年続くクラブのためにやっていくべきことは何かというのを3つに分けているんですが、そのひとつに『地域社会の一員としてお役に立つ』というフレーズがあります。このShibafull】がそれに沿ったものだなと思ってゴーサインを出しました。なかなか難しいんですけど、僕自身もITヴェンチャーでイケイケどんどんでやってきたなかで、全然異業種のところにきて、どうやって生きていこうかと思ったときに、ひとつ気づきとしてあったのは、やっぱり地方で生きていくにはつながりを大事にしなきゃいけないなと。単純に試合の勝ち負けで応援してください、というだけでなくて、地域のお役に立つようなことが事業としてリンクして発信していくことでつながりが増えていくとか、そのつながりの深さが出てくるというのも大事だなとこのプロジェクトを通して感じたところです。やっぱりこうやって目線を変えて行動してみると、自治体のみなさんとか地域のみなさんも、畑で草とりをしていると『何やってんの』と声がけをいただいたり、そういった方が『今度試合見に行くわ』と言ってくださるとやっててよかったなと思いますし、いろんな機会をもらえるので、多角的にやっていくのはありなんじゃないかなと思ったりします。

【Shibafull】ウェブサイト