スカパラメンバーが明かす、『倒れないドミノ』誕生秘話

今回は、1989年にデビュー、先月、30周年イヤーの集大成とも言えるベストアルバムを発表した、東京スカパラダイスオーケストラのHidden Story。

語っていただくのは、ギターの加藤隆志さんとバリトン・サックスの谷中敦さん。まずは、デビュー当初からのメンバー、谷中敦さんにスカパラはどんな想いで世の中に飛び出したのか、教えていただきました。

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谷中さん:時代の中で浮くくらいのことをしてみたかったです。当時は揃いのスーツでやっているバンドもなかったし、悪目立ちでもいいからちょっと目立ちたいなという想いで始めました。それもスカという音楽で乗り出していくというか、小船で太平洋に乗り出すような感覚ですね。」

加藤隆志さんがグループに正式加入したのは、2000年。スカパラは、それ以前から、ヴォーカリストをフィーチャーしてカバー曲を発表していました。その後、2001年、茂木欣一さんが加入して今の体制になり、オリジナル楽曲にヴォーカリストを迎えるスタイルがスタート。作詞は、谷中敦さんが担当することになりました。

加藤さん:谷中さんは携帯電話で詩を作ってメンバーに送ってくれたりしていたんですよね。今日あったこととか、海外にツアーに行ったらその景色とか空気感を詩にして僕らに送ってくれるみたいな。これ、詩の能力があるんなら歌詞にしたほうがいいんじゃない?ってなって、そこからですね。歌詞とはまた違うんだろうけど。

谷中さん:詩を書いたときはそうだったね。当時はカメラがついてなかったから、写真を送れない分、文章で伝えようみたいなことをやってたことを覚えてますね。それが歌詞の大元です。自分としては34歳作詞デビューだったんでなかなか緊張するスタートだっんですけど。」

最新のコラボレーションは、aikoさんを迎えた『Good Morning ~ ブルー・デイジー』。作詞はもちろん、谷中敦さんです。

谷中さん:aikoさんに歌詞を書くなんて信じられなかったし、恋愛の歌詞とか書いてたらaikoさんにかなわないよなぁと思っていました。曲が先で歌詞をつけてるんですけど、この曲は恋愛じゃない歌詞っていうメロディじゃないなぁというか。だから恋愛の歌詞を書こうと思った時に、その時期にaikoちゃんが世の中に言いたいこととか、どういう歌詞を歌ってみたいとか、ありますか?というのをaikoちゃんにLINEで聞いたんですけど、いっさい返事が来ない。あとで聞いたら『谷中さんの書いた歌詞を歌いたかったんです』って言われたんで、そうか、意図的に返事をくれなかったんだなと思いました。でも、微調整はしたね、レコーディングのときに。aikoちゃんらしい歌いっぷりを彼女なりに作っていったのを間近に感じましたね。

加藤さん:それはaikoさんの歌唱の実力がそうさせているんだろうなと思いますけどね。

谷中さん:あれってさ、レコーディングのときってリバーブってほとんど使ってないよね?

加藤さん:生声ですよね。

谷中さん:そうだよね、テレビ局でもリバーブをイヤモニに返さないでください、って言われてて、そうかレコーディングのときもそうだったなと思って。リバーブとかエコーみたいなものを使わないから身近に感じる歌っていうのがあるのかなと思いました。」

そして、、、「いつもと違う時だからこそ、いつもと同じ声と音楽で東京に前向きなバイブスを!」 J-WAVE GOOD MUSIC, GOOD VIBESのテーマソングは東京スカパラダイスオーケストラ、『倒れないドミノ』。

加藤さん:最初にこのお話をいただいたときは、日本の状況も今と違っていて、もっと春らしい明るい曲にしたいなと思っていたんですけども、ちょうどレコーディングする直前くらいに、日本の今のコロナの状況が出てきたところだったんです。谷中さん、メンバーとも話して、明るいだけじゃなくて、いったん立ち止まるかもしれないけれど、さらに先がまだまだあるんだよという、春は必ず来るよっていうキーワードの曲にしよう、ということでこういうメロディになりました。メロディは僕ブリティッシュロックも好きで、80年代のニューウェーブの雰囲気を持った曲にできたらいいなと思ったんですが、スカパラがホーンでね演奏してホーンセクションがついてくるとすごく明るくなるし、そのさじ加減がスカパラらしいアレンジになってよかったなと思います。

谷中さん:BUMP OF CHIKENの藤原君がイントロのギター、かっこいいって言ってくれてたよ。むっちゃ気に入ってくれてた。

加藤さん:最近聞き直してて、CUREとかSMITHSとか、ああいうバンドも大好きなので、コード感とかメロディとか、ギターもそうなんですけど、ああいうのをスカパラでできたらいなと思って。

谷中さん:何て言うんだろう、CUREとかSMITHSって赤い炎じゃなくて、青い炎だよね。(笑)ブルーフレイムだね。」

『倒れないドミノ』というタイトルについて谷中さんは、こんなことを話してくれました。

谷中さん:自分なりに考えて立ち止まることも必要だと思うんです。言ってみれば、流れを止めるというときはお前のせいで流れが止まっているぞと言われるかもしれないけれど、悪い流れのときは、それをあえて考えて止めないといけないときもあるんじゃないかなと、立ち止まって考える必要があるんじゃないかなと思って。そして立ち尽くしたドミノが空を見た時に遠い場所から別のドミノが空を見ていてつながっている、という絵面を思いながら書きましたね。」

最後にうかがいました。いま、スカパラが届けたい音楽とは?

加藤さん:今こういう状況なので、先が見えないというのはありますが、とにかく前を向いて、みんなで団結しながら前に進むしかない。そんななか、スカパラの音楽で、スカパラの音楽が鳴ったらすごくやっぱり力がよみがえる、みなぎるというか、すごく前向きな気持ちになれるということになればやってて意味があるなと思うし、それはずっとこれからもやり続けたいと思いますね。

谷中さん:ほんとにそうだね。」

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