今回ピックアップするのは万年筆です。
東京・表参道店が先月3周年を迎えた 万年筆とオリジナルインクのお店【BUNGU BOX】の Hidden Story。
東京メトロ 表参道駅から歩いて3分ほどの場所にある【BUNGU BOX】。そもそもは、静岡でスタートしたお店です。
その始まりについて、【BUNGU BOX】の代表、山岸薫さんに教えていただきました。
「一番最初は静岡県の御前崎で、他の会社がやっている個店でした。私はそこで店長をしていました。その店名がBUNGU BOX。
最初はおしゃれな文房具と雑貨のお店という意味で BUNGU BOXでした。
私が中学校入学のときは、万年筆をプレゼントにもらう時代だったので、万年筆をもらってお友達と交換日記をやっていたました。BUNGU BOXをやる前にたまたま押し入れを整理していたら当時の交換日記が出て来て、すっかり忘れていた『万年筆』を思い出しまして、BUNGU BOXやるときに万年筆は絶対置きたいなと思ったんです。」
静岡県の御前崎で 文房具と雑貨のお店として始まったBUNGU BOX。2012年、浜松で万年筆とオリジナルインクのお店として新たなスタートを切ります。
オリジナルインクは、うなぎの蒲焼きのタレの色をイメージした『蒲焼き』や『浜名湖フレッシュみかん』など、ご当地の素材の色をインクで表現。加えて、オリジナルの万年筆も展開されてきました
「最初の頃はblogが全盛だったんですけど、その後twitterとかfacebook、instagramとか...今はすごいじゃないですか。その発信を私も一生懸命やりました。するとそれが海外の人に伝わっていって、海外からのお客様が来るようになりました。
そんな中、アメリカでペンショーというのがあるのを知りました。それはアメリカのペンのコレクターの方たちが自分たちがコレクトしているペンを並べて売り買いする、そんな文化で始まったペンショーが毎月のようにアメリカの大都市であるんです。
それを知って、私も行ってみよう!と思って、ロサンゼルスのペンショーに行ってみたんです。
そこでは、みんな生き生きと売り買いしていて、これはすごくいいと思いました。ここに来ない手はないだろう!と思い、翌年の夏にワシントンDCのスーパーペンショーに出展しました。」
SNSでの発信に加えて、アメリカ、ワシントンDCのスーパーペンショーに出展。アメリカの『Pen Addict』というPODCASTでも厚く取り上げられ、海外からのお客様もさらに増えていきました。
「そんな中、私も東京出身なので浜松だけではなくて東京に自分もお店を持ちたいと思うようになりました。
やはり発信するなら東京が一番いいし、自分も育った場所なので2号店を探し始めたんです。
2ヶ月間くらい、ちょっと行っては不動産屋さんを見たりしていましたが、なかなか良い物件がなくて...。
そんな時、たまたまポップアップショップを同業者が表参道でやっていたので、それを見に表参道に行きました。
迷って、疲れてプロントに入って、この辺にいい物件ないのかなと...ピッピッっとやったら、ポッと出て来たのが、表参道の2号店になる物件です。」
【BUNGU BOX】表参道店のオリジナル商品としては、例えば、こんなインクがあります。
「ご当地インクを作っている経緯があるなかで、東京に行ったら東京の色を作らなければ...!と思っていました。
だけど、後からいろんなところがご当地インクに参戦していて、どこどこの森の緑とか、どこどこの湖のブルーとか...、そういうのは私の中では違う?かなと思って、すごく悩んでいました。
そしたら、私がいつも乗っている地下鉄で「これだ!」と思うものを見つけました。それがメトロインクです。東京メトロの9色をインクにしています。これ、東京メトロのお墨付きで、シールもついているんですよ。」
銀座線・丸ノ内線・日比谷線・東西線・千代田線・有楽町線・半蔵門線・南北線・副都心線。9路線の9色を20ml入りのミニボトルに入れたセットが完成。今も人気となっています。
表参道店がオープンして3年。山岸薫さんはお店のほかに、こんな活動もおこなわれています。
「アメリカのペンショーに行っていて私が感じたのは、なんでこんな素敵なショーが、日本に、しかも東京にない!という事。
東京に出店して1年たったときに、東京でペンショーをやりたいと思いました。出店1周年で来てくれてた同業の方に『ペンショーをやりたいんだけど』と相談しました。
海外のペンショーは、どちらかというとコレクターの方が集まってペンの売買をするというマニアックな感じですが、私は万年筆の文化、手書きの文化を伝え、広め、残すという気持ちがあるので、敷居を低くして、体験型ワークショップやトークショーなどをたくさん取り入れたいと思いました。
万年筆は、高いというイメージがありますが、敷居をもっと低くして、みんなに知ってもらうショーにしたかったので、第一回からそういうコンセプトでやっています。」
最後に、山岸薫さんにうかがいました。ハイヒールのような形のオリジナルのボトルインクにつけられた名前、【Ink tells more】の意味。そして、これから伝えていきたいこととは?
「【Ink tells more】は、うちからみなさまへのメッセージです。万年筆でインクが出て来て、色々したためる...
『書く文字はいろんな想いも伝えるよ』というフレーズが私は大好きです。
私の中に...伝えたい想いをインクに託して、というキャッチコピーがあるんです。
今デジタルがどんどん進んでいますが、人間ってアナログなものじゃないですか...。なので、絶対アナログは必要!書くことは人にしかできないもの。
子ども達には書くことは大切だと思ってほしい、そしてリタイアした方にも書いて楽しんでもらえれば、豊かなものになると思います。
そういう意味でこの仕事はやりがいがあると思っています。」