今回は、秦 基博さんのニューアルバム【コペルニクス】のHidden Story。

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もちろん、秦 基博さんご本人に語っていただきます。オリジナルアルバムとしては、およそ4年ぶりとなる【コペルニクス】。その制作は、どんな風に始まったのでしょうか?

20191213h04.jpg 「デビュー10周年があって、そのときに『All Time Best』とか横浜スタジアムのライヴがあったんです。そこで結構、自分としても一区切りついた感覚があったので、それが終わったあと2017年後半くらいから、少しずつ6枚目のオリジナルアルバムづくりに向かっていきました。それまで、自分のペースみたいなものができあがっていたので、サイクルというか、もう一度フラットな状態からものづくり、曲づくりができたらいいなという感覚がありました。なので、締め切りをつくらずに、浮かんだら書く、浮かんだら書く、というスケジュール感にして、そういう日々を半年くらい過ごしていました。今までのやり方、というか一般的なやり方は締め切りがあってそこに向かってつくっていくんですけど、少しペースはゆるくなりますが、曲が生まれて来た、という感じというんですかね、その曲として自分の中からこぼれ落ちたような感覚で曲がいくつか生まれるといいなというのがあって。」

自分の中から『こぼれ落ちるような感覚』で生まれた音楽。最初にできた数曲のなかに、この曲がありました。ギターのリフが印象的な『Raspberry Lover』。

その締め切りのない日々の中で、リフものの曲を作ろうかなというアイディアがあって、じゃあかっこいいリフを探そうというのでギターを弾いていた時に、『Raspberry Lover』のリフが浮かんできました。どういうリズムをぶつけようとか、それに対してどういうメロディを書こうかなというのが曲の始まりですね。どういう言葉をそこにぶつけるかというときに、少しダークでスリリングで、という曲のイメージがあるなかで、それでもポップではありたいなと思っていました。それを歌詞でどう表現しようかと考えていたら、『Raspberry Lover』というフレーズが浮かんで、それをサビで歌おうというところから始まって、それはどういう女性なのかとか、そういうのを書いていった感じでしたね。」

『Raspberry Lover』は、サウンド面でも今回のアルバムを象徴しています。

「そのリフと4つ打ちのキックだったり、それにからんでくる生楽器、特にストリングスとか、そういうのはこの『コペルニクス』のサウンドコンセプトのひとつでもありました。歌とアコギが真ん中にあって、それをリズムトラックとシンセ、ストリングスが支えていく、彩っていくというのがアルバム全体のイメージだったので、それはすごく体現されていると思いますね。」

この音を秦さんとともに作ったのは、共同サウンドプロデューサーとして迎えられたトオミヨウさん。

「トオミさんは土岐麻子さんの作品を聞いていて、かっこいいなと思っていました。このサウンドをどうやって作っているのかなというところでトオミさんのお名前を拝見して、自分が6枚目のアルバムでやりたい音像、やりたい世界がまずあって、トオミさんとやったらおもしろいんじゃないかなと。具体的には、歌とアコギっていう世界をどう彩っていくかというところなんですが、リズムトラックのあり方、打ち込み、生音、いろんな世界があるんですが、それを彩る上ものをストリングス、シンセに特化して作っていこうというのは決めていたんです。今回、アルバムを通してエレキギターが1曲も入ってないんですけど、その方向を考えたときにトオミさんと一緒にやりたいなと思いました。歌とアコギと同じ中域にある楽器を、しかも同じギターという楽器なので、それはあえてなくして、歌とアコギのスペースをあけて、他の帯域の楽器で彩っていく、そういうサウンドの設計図ではありましたね。」

アルバムのラストに収録されているのは、『Rainsongs』。 

「この曲はメロディとかサウンドしかない時点からアルバムのラストの曲だなという予感があって、そんなこともあって最後に歌詞を書きました。アルバムの他の曲を全部書いたあとに何を歌おうかなと考えて、2019年という年に出るアルバムでもあるので、今の社会、時代の中で自分が何を感じているのか、というのが一番出る曲になるといいなと思いました。すごく身近な、日頃日常の中の感覚から大きなところにつながればいいなというイメージで歌詞は書きました。その曲ごとに何を言うのかというのはその曲が呼ぶもの、サウンドが呼ぶもので書いていくんですけど、それをどういう順番で並べるのか、どういうストーリーでアルバムを構成するのかは、『この曲は最後だな』とか自分のイメージがあります。」

『歌詞は、その曲が呼ぶもの』という言葉がありましたが、最後に、秦 基博さんの作詞についてのHidden Story。

単純に景色のようなものとか、ニュアンス、この曲は何を言おうとしているのか、というのが呼ばれることもあるし、純粋に音の響き、このメロディのここの母音は『あ』とか、そういうのが自分の中にあって、それを一個にしていきます。パッと出てくるときもあるんですけど、基本的には曲とじっくり向き合って、ある瞬間に出てくる。ずーっと考えて、探しているというか、そこに何があるか見つめているという感じですかね。どういう景色があるかというのを、、、曲を作っている時点でそこに景色はあるんですけど、それを具体的な言葉にどうしていくかというのを考えたり感じたりしながら作っていますね。」

締め切りを設けず、自分の中からこぼれ落ちるように生まれた音楽。その音が、メロディが 呼ぶ言葉。

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そして、【コペルニクス】というタイトルの意味は、『ひとつの転換点、新しい自分を見せられたら』という想い。秦 基博さん、6枚目のオリジナルアルバム【コペルニクス】。

秦 基博ウェブサイト