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今週ご紹介するのは杉並区高円寺、

JR中央線の高円寺駅と阿佐ヶ谷駅の中間あたり、

高架の脇にある【高円寺アパートメント】。

「一言で言うと賃貸住宅なんですけども、住人さん同士の交流があったり、隣近所にどういう人が住んでいるのか、顔が見える場所ということを大切にしています。プラスで目の前に芝生が広がっているので、街に開かれて地域の人も訪れることができ、また1階には飲食店と店舗兼住宅があるのでそこに街の人がお越しになって住人さんと街の方が交流する、というパブリックとプライベートの境があいまいな場所となっています。」

お話をうかがったのは、高円寺アパートメントの運営を担当する、株式会社まめくらしの宮田サラさん。1階の店舗兼住宅エリアで『まめくらし研究所』というお店も展開。さらに、高円寺アパートメントの【女将】としてここに暮らしながら、コミュニティづくりに取り組まれています。では、そもそもどういう経緯で この高円寺アパートメントは誕生したのでしょうか?

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「2017年にスタートしまして、もともとJR東日本さんがオーナーさんでその社宅だった場所なんです。しばらく空いていて、周りの人からは廃墟というか薄暗いイメージを持たれるような場所だったんですが、そこをジェイアール東日本都市開発さんがきちんと新しく住宅として改装する、ということでOpenAさんという設計事務所に相談してリノベーションをすることになっていたんです。そのときに、街に開いたりだとか、住人の交流が生まれるというコンセプトができて、そのあとに私たちが関わるようになりました。」

宮田さんがここに関わり始めたのは、ある程度、建物のリノベーションができあがったタイミングでした。

「設計やデザインを担当されたOpenAの馬場正尊さんが、『これからは賃貸住宅もできて完成ではなくて、住人さんにとってはできてからがスタートなので、賃貸住宅は運営の時代だ。』とおっしゃって、運営に力を入れた方がいいのではないかということで最初にご相談いただきました。その時、JRさんからは通いでこの場所を運営してくれないかとお話をいただいたんですけど、これまで私たちが運営した住宅は誰かしら運営するメンバーが住みながらやっていたことが多かったのと、50世帯という規模も大きいものだったので通いでよそからやってきた人がここの場所についてあれこれ言うのもみなさんに信頼してもらえないんじゃないかなということで、実際に私が1階に住んで店舗兼住宅の店舗のところでお店をして街に開いて住人さんとの交流も作っているというところです。ここでは私は女将と名乗らせていただいていまして、一般的にはコミュニティマネージャーということになると思うんですが、コミュニティマネージャーってよくわからないじゃないですか。なので呼びやすい女将というのを通称としてつけさせていただいています。『よっコミュニティマネージャー』とは言うのが難しいけど、『よっ女将』だったら、言いやすいのかなと思って女将にしました(笑)」

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街に開かれ、住人同士の交流もある集合住宅を目指してスタートした高円寺アパートメント。最初におこなったのは、どんなことだったのでしょうか?

ここに住んでいるのがどんな人が分からない状態だったので、まずは顔見知りになろうということで、目の前の芝生で【同じ釜のめしを食べようの会】というイベントを住人さん向けに開催しました。

大きい釜をお借りして高円寺のお米屋さんでたまたま『縁結び』というお米があったのでその辺のゲンもかつぎました。そして、『ごはんは炊くのでみなさんはお箸とお茶碗とお料理一品持って来てください』とアナウンスをして、そのときは27人の方にお越しいただいて、ごはんを食べながら住人さん同士挨拶をしてもらったりとか、目の前の芝生で使う小さいローテーブルを作るワークショップをおこなって、ごはんを食べるのと共同作業をするということで仲良くなるきっかけ作りをしました。」

1階部分の店舗兼住宅。どんなお店が入居されているのかというと、

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「【高円寺アパートメント101】が雑貨屋さんと建築事務所をされていて、そこから順に【ReBeat】時計の修理屋さん、【Snack&Co.】というお酒にあうスナック菓子とアンティーク雑貨のお店、私が運営している【まめくらし研究所】という雑貨屋、

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【アンドビール】というビールとカレーのお店、そして、その隣りが焙煎コーヒー屋さん【JULES VERNE COFFEE】です。だから、下手するとこの敷地から出ないときもあるんです。(笑)お昼は隣りでカレーを食べ、おやつの時間にコーヒーを飲みふらふらっと他のお店をのぞきつつ、また夜は【アンドビール】でごはんを食べる、みたいな。(笑)」

これまで、【高円寺アパートメント】では、街とつながるイベントも開催されてきました。

「住人さんや地域の方向けに、流しそうめんと餅つき。あとはマルシェに加えて、となりのアンドビールさんがある程度主体となっていろんなブルワリーさんをお呼びしてビアフェスを開催しました。それと、この物件がジェイアール東日本都市開発さんなので、昨年協力して、高架下の映画祭を開催しました。高架下に空いている倉庫や空き店舗があったので高円寺から阿佐ヶ谷までの間で気になった映画に立ち寄って映画が観れるというイベントをおこないました。」

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最後にうかがいました。宮田サラさんが考える、住まいを街にひらくことの大切さとは?

「私自身が岡山県出身で、街や住んでいる場所の人との関わりがある暮らしをしたいなとずっと思っていたんですけど、それが地方でしかできないのかというとそういうわけではないと思っています。暮らす人当事者自身がどう暮らすかによって欲しい暮らしは手に入れられるんじゃないかなという自分なりの実験というか、暮らしの実験のようなことをここでやっています。住宅というとすごくプライベートな空間で閉ざしてしまうことも簡単なんですけど、やっぱり家に住むということは街に住むということなので、家と街の境目をあいまいすることでそこに住む人が高円寺の街というもの自体を家ととらえてこの場所で暮らして行くということにつながるんじゃないかなと思って、街に開くことが大切だなと思っています。」

高円寺アパートメント公式ウェブサイト