今週ご紹介するのは、栃木県の那須高原で作られているお菓子

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【バターのいとこ】です。

「【バターのいとこ】とは、商品自体はフランスのリール地方という『フランダースの犬』の舞台となった場所なんですけど、そこの地方菓子【ゴーフル】を持って来たものです。食感がふわっとしまして、なかに季節のジャムやバタークリームなどを入れられるんですけど、僕らは那須地域で酪農がすごく盛んなんですが、酪農家がバターを作る時に出てしまう、スキムミルクを中にはさんで販売しています。」

お話をうかがったのは、マルシェ、ダイニング、ゲストハウスの複合施設『Chus』の代表、そして、株式会社【バターのいとこ】の宮本吾一さん。そもそも【バターのいとこ】というお菓子を作るきっかけはどんなことだったのでしょうか?

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「きっかけは、私自身がやっている『Chus』という飲食店があります。そちらはコンセプトが地域の生産者さんとつながりながらやったり、産直だったりというる飲食店なんですが、そこで直接話をする機会がたくさんありまして、その生産者のひとりである酪農家が『今度、バターを作りたいんだけど、バターを作るときにスキムミルクができて困っている』と相談を受けました。なので、僕らでスキムミルクを使ってお菓子にして那須高原のお土産として作ればバターも作ることができるよね、ということで作ることになったんです。分量でいうと、バターって牛乳からたった4%しかできず、残りの90%以上がスキムミルク。一方でバターはたくさん使いますが、スキムミルクは毎日食べることはないんです。23~24倍の分量ができるほうのものが使いづらくて、たった4%のほうが毎日使いやすい。すごくバランスが悪いんですよね。」

バターは牛乳のわずか4%しかできず、9割はスキムミルク、つまり無脂肪乳。一般にこのスキムミルクは脱脂粉乳として安く販売されています。そうではなく、スキムミルクの価値を高めることができれば、酪農家のみなさんも安定して牛乳を生産できるし、バターをつくることができる。そして一方、宮本さんは、こんなことも感じていました。

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「僕がやっている飲食店の『Chus』は観光客もたくさんいらっしゃるんです。そこに来られた方が帰りに何を買って帰られるのか調べてみたら『お菓子』が一番多かったので、トレーサビリティがあり、地域とつながる食材を使ってお菓子づくりができないかというのは僕自身もずっと考えていました。それと酪農家さんがバターづくりをするときにスキムミルクができてしまうという課題をマッチングさせたんです。」

そして、お菓子づくりには頼もしい仲間が加わってくれました。

「僕の友人に素晴らしいパティシエで、東京の渋谷でPATHというレストランをやっている後藤裕一というシェフがいるんですが、彼に、こういうコンセプトで何かできないかなと相談したときに監修ということで手を挙げてくれました。そして、一緒に二人三脚で作ったお菓子なんです。本当に彼の心意気がたくさん入ったお菓子なんじゃないかなと思っています。」

【バターのいとこ】は、2018年3月に発売開始。そして、同じ名前の会社も設立されました。

「働き方とか暮らし方に念頭を置いた会社をやりたくて、今、障がいのある方と子どもを持っているお母さんに作ってもらっています。それはどういうことかというと、地方で働き手に若い方がいなくなる。そういう未来を想像したときにお子さんがいて働き口がないなとか、障がいのある方で健常者の方が働くところに入るのは難しいなという方、ふたつのマイノリティの方にやっていただける仕組みを作ったんですね。具体的にいうと朝9時に出勤してもらって夕方3時には終わるという、実働5時間の製造場所なんです。経営的にはたくさん作ったほうがいいんですけど、逆に、その時間で作った数を売るという考え方にすると、お客様が待ってくださるという考え方に変わるので、その流れができると一生懸命働く時間が短くできるんです。働き手の暮らし方にまで影響するお菓子になると素敵だなと思って。それでそういう働き方に特化したいという想いからもう一つ会社を作ったんですね。」

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最後にうかがいました。

宮本吾一さんが、これからやっていきたいと考えていることとは?

「幸せの連鎖と呼んでいるんですけど、食べていただく方もハッピーだし、働き手もハッピーだし、生産者もハッピーになれるような、三方よしと江戸時代から商売の鉄則と言う人がいますが、世間がいい状態を作るためにこのお菓子を始めたんですね。くさい話なんですけど僕自身は幸せになりたいと常日頃思ってまして、幸せになるというのはどういう状態かというと、僕の暮らしている周りにいる人が幸せになってほしいなという、周りの人が笑顔だと僕も幸せを感じることができるなと思っています。」

バターのいとこ 公式ウェブサイト