今週ご紹介するのは『限界集落から宇宙へ』を合い言葉に広島県の中山間地域、北広島町を拠点に活動中の井筒智彦さん。

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「宇宙博士という肩書きもあるんですけど、宇宙タレントとして広島でラジオとかテレビに出させてもらいつつ、宇宙町おこしプロデューサーとして田舎を宇宙のイベントで盛り上げようとしています。また、去年から本づくりにも携わっていて装丁家、あと狩猟免許も持っていてハンターでもあったり、いろいろチャレンジしているという感じです。」

広島県北広島町の、過疎の集落から『宇宙』をテーマに発信をしている井筒智彦さん。ご出身は、東京です。高校生のころ、オーロラの研究者にまつわるテレビ番組を見て宇宙に興味を持った井筒さん。東京工業大学、さらに、東京大学の大学院に進学。そして、この大学院在籍中に大きな出会いがありました。

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「博士号をとったあとにそのまま研究者になるという夢もあったんですが、細分化した研究をやっている中で、やっぱり自分がしたことで直接喜んでもらえることがしたいなと思うようになったんです。僕は宇宙と自然と動物が好きだったんですが、あるとき『動物、ソーシャルビジネス』とインターネットで検索してみたら、ゾウのウンチをリサイクルして紙をつくる植田紘栄志さんのミチ・コーポレーションが出てきて、そこにインターンで行ってみようと思いました。」

東京をベース 途上国と関わる事業を展開していたミチ・コーポレーションです。しかし、井筒さんがたずねたときは、代表の植田紘栄志さんが、日本の過疎の地域を盛り上げよう、という方向へ 活動を転換しているところでした。2013年、井筒さんは広島県北広島町へ移住することになります。

「僕は実は宇宙が使えるとは思っていなかったんです。そしたらちょうどその時に植田さんがいたところが広島県北広島町の芸北地域といって豪雪地帯で保存食の文化がある地域で、保存食を商品化しようというアイディアがあがっていました。そこで僕が『宇宙のことをやってます』と言ったら、『じゃあ、保存食を宇宙食にしてNASAに売ったら面白いんじゃない?』と植田さんからアイディアが出て来て、そのときに、『もしかしたら宇宙というテーマで田舎を盛り上げることができるかもしれないな』とホワンとそれくらいの感覚があって。宇宙で博士号をとって限界集落に移住している人って聞いたことないなと思って、誰もやってないし世界初だなと思って、チャレンジしてみようと移住しました。」

広島へ移住後、井筒さんは星空観測会など 宇宙にまつわるイベントを開催。これが徐々に話題となっていきました。

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「初めは地元の長老さんもたくさん来てくれたりしたんですが、だんだん広まってそのうち広島市内の星が見えない地域から来てくれるようになりました。あと、実はJAXAの宇宙飛行士さんって11人いるんですが、みなさん東日本出身で、いろいろ要因はあると思いますが宇宙に触れる機会が関東に比べると少ないんですよね。田舎の山奥にも宇宙飛行士になりたいという小学生や中学生がいて、そういう子たちにも喜んでもらえてどんどん広がったというところがありますね。」

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北広島町でイベントをおこない、地域を盛り上げると同時に、宇宙を身近に感じてもらう活動をされている井筒さん。イベントでは、例えば、こんなお話が飛び出すそうです。

「宇宙ってなかなか遠い世界だったりするんですけど、実は身近に楽しめる話題もあるんです。例えば、子ども達ってコーラが好きなんですけど、宇宙でコーラって飲めるのかどうか、とか。これはですね、炭酸というのは空気の泡なので、普通は炭酸が軽いのでしゅわしゅわ浮いてくるんです。でも、無重力だと重いとか軽いとかがないので小さい泡がくっついて大きな泡になって、その状態で缶を開けるとボボンと吹き出てくる。だから宇宙では炭酸は飲めないんです。かと思いきや、コカコーラ社がなんと5000万円かけて宇宙コーラ容器というのを作りました。その特殊なノズルでコーラが飲めるよと。実際宇宙飛行士さんが試したこともあって飲めるようになったんですね。ただ、宇宙には冷蔵庫がないんです。実験用のサンプルを冷やす冷蔵庫はあるんですけど、飲み物を冷やす冷蔵庫がないので、、、やっぱりきんきんに冷やして飲みたいね、というのと、宇宙でゲップってなかなか出せなくて、無重力だと胃の中で空気と食べ物がまざりあって、空気だけがゲップとして出るのが少ないんです。だから、結局炭酸はだめですよと。なので、コーラだったり炭酸が飲めるのは地球の重力のおかげですよと、そうやって味わって飲みましょう、みたいな感じで、宇宙に視野を広げると身近なものが特別に感じられませんか?みたいな。」

現在はラジオへのレギュラー出演や本の出版など、さまざまな分野で宇宙の魅力を伝える井筒智彦さん。

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最後にうかがいました。みなさんに届けたいのは どんなメッセージでしょうか?

「とにかく宇宙の視野を持ってみましょうと。いま、世の中にイライラやクヨクヨが蔓延しているじゃないですか。でも、そんなにイライラしなさんなというか。例えばLINEの返事が来ないとか、会議に遅刻しそうとか、いろいろあると思いますが、太陽系の46億年に比べれば誤差じゃないですか、誤差誤差みたいな感じで。いま、ほんとに大して悪いこと言ってないのに言葉じりをとらえてSNSで炎上すると思うんですが、そうやってすぐに言葉じりを悪く悪くとらえると子ども達がチャレンジしづらいんじゃないかなと思うんです。やっぱり許し合える社会になってほしいし、みんなチャレンジするし、みんな失敗するし、それを悪く言うんじゃなくて次はこうすればいいよねと言えるとか、そういう社会になるといいなと思います。そういう社会になるために、宇宙のこういう考え方もありますよ、というひとつの提案ですかね。結構悩みも宇宙のこと考えても解決しないでしょうと広島のリスナーさんにも言われたんですけど、なんかこう、日本が世界で一番夜空を見上げる国になったらいいなというのもあって、夜みんなで星を見上げられるって平和そのものじゃないですか。今はスマホ見てたり下を見てる人が多いんで、みんなで一緒に全国でつながって星を見れる日というのが来たらいいなというか、そういう日を作りたいなと思って。」

井筒智彦さんオフィシャルサイト