今回注目するのは、野菜や果物の『流通』についてひとつの提案をしている 兵庫県神戸市の会社【タベモノガタリ】。

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代表は20代前半の女性、竹下友里絵さんです。フードロスを減らすため、かかげた屋号は『八百屋のタケシタ』。そのHidden Story、ご紹介します。

竹下友里絵さんが展開する『八百屋のタケシタ』。

まずは、どんな活動をされているのか教えていただきました。

「もともとフードロスをテーマにした八百屋さんなんですが、規格外野菜が捨てられているのがすごく悲しいなという思いからスタートしました。例えば、形が悪いものだったり傷がついたお野菜は流通に乗せられずに廃棄されている現状があって、そういうところからうちは規格のない八百屋さんをやろうということで、形不選別で農家さんから直接仕入れているんです。そこから卸売りで飲食店とかケーキ屋さんとか、ときどきイベントで一般の方に販売したり、ということを行なっています。」

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では、そもそもなぜフードロスの課題に関心を持ったのでしょうか?

「中学生くらいから国際協力に興味を持っていて、貧困とか食べられない人がいるって悲しいなということで、将来は国連とかJICAで働きたいと思っていたんです。そんな中、高校2年生のときに1年間カナダに留学しまして、ホームステイ先での食べ残しがひどくて、それに衝撃を受けました。ここでは食べ物が捨てられているのに、一方では食べられずに死んでしまう人がいる、という世界全体の食のアンバランスに問題意識を持ったのが、フードロスに興味関心を持ち始めたきっかけになります。カナダだけなんかなと思って日本のフードロスも調べてみたら、日本もめちゃめちゃ捨ててるやないかと気づきました。」

竹下さんは大学4年生のときに休学をして、2つの企業でインターンシップを経験。そこで、こう感じます。 

『ビジネスの力はすごい。自分でも事業をおこしてみたい。』 

社会課題をビジネスの力を使って解決するということのいいところは、持続可能というところだと思っています。消費者にとっては欲を満たすためのいち消費行動なんだけれども、その消費行動によって課題が解決されていく、その循環が自然でいいなと思いました。」

去年、竹下さんはビジネスコンテストに参加。これをきっかけに今年2月、『タベモノガタリ株式会社』を設立します。神戸に、規格のない八百屋さんが誕生しました。

【八百屋のタケシタ】、現在の事業としては、

「今はレストラン、ケーキ屋さんへの野菜の卸売りがメインです。神戸の西区が農業の盛んな地域で、そこに提携農家が15軒ほどありまして、押部谷と岩岡という地域にそれぞれ集荷場があります。農家さんに発注したものを集荷場に持って来ていただいて、その集荷場から飲食店さんに配送する流れです。三宮とか元町とかいわゆる神戸というエリアには飲食店がたくさんあるんですけど、地場の野菜が全然流通してなくて、間をつなぐ物流がないというのがネックになっているところです。結構、レストラン側からも好評で、神戸の企業さんって神戸への愛着がすごくあって、それはお客さんもしかりで、神戸野菜でメニュー構成できたり、果物も桃、いちじく、梨とか、神戸の果物を使った神戸スイーツをつくれるというのは喜んでいただけているところです。」

【八百屋のタケシタ】のアクションは、神戸のレストラン、ケーキ屋さんに大好評。

そして、農家のみなさんからはこんな声もあるそうです。

「うちはフードロスをテーマにしているので、例えば農家さんのところで受発注がうまくいかなくて『ミニトマトが100キロ余りました』みたいな連絡がうちに来るんですね。『100キロだったら何とか頑張ります』という形でレストランさんに安い価格にはなるんですがお出ししてそういう小さいロスをなくす流通ができているかなと思います。量的にはまだまだなんですけど、去年から比較すると農家さんにもフードロスの削減という意味でも貢献できたと思うので、着実にソーシャルインパクトは増やしていけているのかなと感じています。」

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最後にうかがいました。『タベモノガタリ株式会社』の代表、 竹下友里絵さんが思い描くヴィジョンとは?

「目指したい世界観としては、生産者がつくったものをすべて消費者に美味しく食べていただく、これを当たり前にしたいなと思って、そのためには流通を変えないといけないと思ったので、私は農産物流通事業を始めました。自分の地元なので神戸、関西を中心に展開しながら、他の地域にもどんどん広げていきたいなという想いはあります。どこも抱えている課題は一緒なんじゃないかなと思っていて。あとは、ちょっと話が変わってしまうかもしれませんが、有機農業をしたい方って、新規就農の方に多いと思うんですが、有機農業だとどうしても形がわるくなったりとか虫食いができたりとか、そういうのは仕方がないことなんです。ただ、そういう有機農業者に寄り添える流通がまだまだ少なくて、有機農業を続けるのが難しい状態なのがもったいない。3年以内に3割から4割が離農してしまうというのが現状としてあるので、そういうことにも寄り添える流通にしたいなとはすごく思いますね。」

八百屋のタケシタ