今回は、何らかの事情でひとりで食事をとる子どもたちや満足に食事をとることができない子どもたちに食事を提供する【子ども食堂】。

この【子ども食堂】をライヴハウスで展開している方がいらっしゃいます。ミュージシャン・景山潤一郎さんのHidden Story。

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東京メトロ、早稲田駅のすぐ近くにあるライヴハウスZONE-Bで先月、子ども食堂が開かれました。発案したのは、ミュージシャンとして活動する景山潤一郎さんです。まずは、子ども食堂をやろうと思ったきっかけを教えていただきました。

友達から子ども食堂という存在を聞いてからずっと気になっていていたんですが、自分が40歳になってモノの見方が変わっていって、子ども食堂をやろうと決めました。

それまでは自分が人に何かできるような立場でもないし、どちらかというと自分が愛されることばかりをのぞむ日常生活でした。

でも、僕に何ができるのか、次の世代に何を返していけるのか、ということを考えるようになりましたね。自分がやっているバンドは東京ドームでやるようなバンドでもないし、自分は音楽活動とか執筆活動も全国誌でやってるんですけど、それがうるおっているから返す、ということではなく、自分が生きてきた中で、音楽とかライヴハウスでもらったものは、お金やものではなく、意識や考え方だったので、それを本気で考えていこうかと。」

40歳を迎えた景山さんが 、子ども食堂をライヴハウスで実施しようと思ったのには、もうひとつ、こんな理由がありました。

「子ども食堂になったのは、自分の生い立ちが関係しています。養護施設に行ってたんですが、その前、母親とふたりで暮らしているときに、母親の帰りが夜の9時10時で、ひとりでごはんを食べてたんです。

でも、それって寂しいじゃないですか。みんなでごはんを食べると楽しいというのは知っていたので、もしそういうことが自分にできればいいなということを考えました。

ライヴハウスでやろうと思った理由は、自分は18歳で岡山から上京して来たんですけど、養護施設出身だったんで実家がなかったんです。

保証人もいないなかで東京に来て、何とか生きて来れたんですけど、それはライヴハウス中心で生活してて、そこで一生の付き合いになる仲間や同志、先輩だったり後輩だったりに支えられてきたからで、だから今もそうなんですが、ライヴハウスが実家のような気持ちだし、どうせやるならライヴハウスでやりたいなという気持ちになりましたね。」

相談を持ちかけたのは、景山さんが18歳のころから出演を続けるライヴハウスの店主、以前は、西荻窪のWATTS、現在は 早稲田でZONE-Bを運営する五十嵐さんでした。

そのとき、五十嵐さんのリアクションは、、、  

「『いいね。』って。『何か理由があるんだろ。全面的に協力するし、平日自由に使ってくれよ。』という感じで、結構ぶつかりあうんですけど、本気でぶつけあうんで、そういうときは何か理由があるんだろと気持ちをくんでくれるんです。」

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食品衛生責任者の資格をとり、新宿区の保健所の許可も得るなど、準備は徐々に進みました。1回目の開催は今年の春。ライヴハウスの子ども食堂でカレーライスが振る舞われました。

「最初に来てくれたとき、ごはんを食べて『美味しかった』って。で、おなかいっぱいになると遊びたくなるじゃないですか。ライヴハウスなのでステージとフロアがあって、『そこも遊べるよ』って言うと、子ども達がそこでいきなり演奏を始めたんです。

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ドラムとかパカーンパカーンって。そのうち『マイクで歌いたい』って言い出して、マイクの音量を入れると叫ぶわけです。これ、すごいなって話になって、ほっといたら2時間くらいやってるんですよね。みんな仲良く叫んだり歌ったりしてるんで、『これは次から開放しようか』となって、今は開放してます。」

早稲田のライヴハウスZONE-Bでおこなわれている子ども食堂。子どもたちの食事は無料で提供されています。この資金は、どうやって調達しているのでしょうか?

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「この子ども食堂は17時から20時までが子ども食堂の時間にしていて、それ以降は大人の時間にしています。

ひとりぼっちで寂しい大人が誰かとお話しながらお酒飲めればなということで、バーにしてるんです。

そこで自分がホスト役をやってその売り上げを回してます。寄付もお声をたくさんいただくんですが、いただかないようにしてるんで、ここはライヴハウスと自分のやり方というか、それでやっていこうと。」    

景山潤一郎さんに、最後うかがいました。

ライヴハウスでの子ども食堂、どんな場所にしていきたいと考えていますか?

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「もっと子ども達のコミュニケーションや異文化コミュニケーションの場になればいいなと思います。

2回目とか3回目になると大久保エリアっていろんな人種の方が住んでいて、ネパールの方とかが来たんです。

ちょっと喧嘩したけど仲直りして『一緒に歌おう、俺たち友達だよな』って。それを見た時はやってよかったなと思いましたね。

例えば、学校でいじめにあっていてもそこに来れば『僕には他に友達がいるんだぞ』という、そういう場所になるといいなと思います。

大声で叫んで思いっきり楽しんでもらいたいなと。昨日まで他人だった人と意気投合して歌って同じステージで手を握って、すごい光景だと思いますよ。こうあるべきなんじゃないかなと。見ててほんとにびっくりします、こんなに仲良くなるんだって。家と日常の繰り返しとはまた別のものになってますね。自分の学区の学校には行きたくないけど、誰かと接したいという気持ちの子どもはいると思うんです。

親もまいっちゃってるし、そういうときに『あ、こんなところがあるんだ』と思って来てもらえば、いくらでも遊んで行ってもらいたい。バンド組もうぜみたいな話を小耳にはさんだんで、これはうちにあるギターとかベースとか持って行こうかと思っています。」

景山潤一郎さんTwitter 

景山さんのバンド活動もぜひ注目を!

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ZOBE-B公式サイト