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今週は、きのうから渋谷区文化総合センター、大和田・伝承ホールで上演がスタートしたミュージカル、『Signs!~微力だけど無力じゃない~』のHidden Story。

『Signs!~微力だけど無力じゃない~』、このミュージカルは、1998年、長崎から始まった「高校生平和大使」という活動を テーマにしています。去年、ノーベル平和賞の候補にもなった「高校生平和大使」。その始まりと、ミュージカルで取り上げようと思った理由を今回の公演を手がける ミュージカル・ギルドq. の代表、演出家・田中広喜さんに うかがいました。 

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「1998年にインドとパキスタンで核実験が行われたときに、長崎の人々が核実験禁止の署名を集めたんです。その署名をニューヨークの国連本部に持って行こうという話になったとき、誰に託すか議論になったんです。

そこで時代をになう若い人たちに持って行ってもらったらいいのでは、ということで始まったのが、高校生を選んで国連に行くという活動だったんですね。

国連に行って平和を訴える若い人たち、高校生の平和大使ということで名前がついて、国連ではpeace messengerと言われているそうです。

一番遊びたい盛りの高校生が毎週土日に駅などに立って署名を訴えるという活動を誰に頼まれたでもなく自分たちの意思でやっているのは素晴らしいことだなと思って、それをもっと多くの人に知ってもらいたい、というのが、作ろうと思った率直な理由、きっかけですよね。」

高校生平和大使は、核兵器廃絶を求める署名を集め、毎年、国連の機関へ届けてきました。長崎で始まり、現在は、全国各地の高校生も活動に参加しています。このアクションをミュージカル化するにあたり、田中さんは 綿密な取材をおこないました。

「もちろん現地の高校生たちやOB、OGの人たちに話を聞いて、彼らから聞いたエピソードや想いを散りばめようとおもって構成してます。

ひとつは長崎の子たちを取材しました。やっぱり遊びたい盛りじゃないですか、『どうして毎週毎週こういう風に署名をするの?』って聞いたら、ひとつは肉親の中に被爆者がいて、小さい頃から被爆者の話を聞いて来て、それを次につなげていくのが自分たちの役割と自覚をされているということです。

平和運動って、僕らどうしても思想がかったと思われがちですが、彼らは『こういうことをするのはすごくかっこいいじゃないですか』って言うんです。

自分たちがいろんなことを主張することや未来についてこういう風にしていきたいと言うことはすごく当たり前で、それを先頭に立ってやるというのはすごくかっこいいと彼らが思っているのは、すごく印象に残ってますね。」

このミュージカル、主演はAKB48の元メンバーで女優の岩田華怜さん。

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「高校生平和大使というものが長崎にあって、20年以上署名活動を続けているというのを知らなかったんです。

それを知ったとき、私も2011年に地元で東日本大震災があって被災しているんですけど、そういう経験もあってずっとデビューからの8年間は震災復興にも関わってきました。

昔あったことを風化させちゃいけないという想いは自分の中でもすごく強くて、そういう子たちが長崎にもいるというのがすごく嬉しかったんですよね。

自分と同世代の若い子たちがふるさとの悲しみも背負いながら未来への活動をしている、というのを聞いて、すごく仲間が増えたような気分になったといいますか、この活動をもっと知ってもらいたいなと思いました。」

ミュージカルのタイトル、『Signs!~微力だけど無力じゃない~』。このタイトルはどうやってつけたのか、田中広喜さんに教えていただきます。

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これは長崎の高校生たちに『ぜひタイトルを決めてください』と台本を書いて読んでいただいたんです。

Signsは署名するということですけど、『微力だけど無力じゃない』というのは、2001年、署名をジュネーヴに持って行ったあと、ちょうど8月に軍縮会議があってそこに持っていくんですけど、その直後に起きたのが911のテロだったんです。

そのときに彼らは無力感を感じて、自分たちがこういう風に署名をひとりひとりとっていても世界は変わらないんじゃないかと議論があったらしいんです。

そのときに、それでもひとりひとりの力は小さいけれど、自分たちの力はゼロじゃない、そういう議論になったそうなんです。それを副題としていかさせていただきました。」

最後に、主演の岩田華怜さんにうかがいました。このミュージカルを通して伝えたいのはどんなことですか?

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世界には核兵器がなくなるどころか増えていて、そんな中で日本で地味に署名していても意味ないんじゃないかって言われることもあると高校生の子たちも言っています。

実際私も長崎に行った後にそう言われることもあったんですけど、でもやっぱり無意味なことって絶対ないと思いますし、その子たちの想いが絶対世界をちょっとでも動かす力になる日が必ず来る!と信じるしかないと思うので、そういう意味でもまずは長崎の高校生平和大使、いま全国でも高校生平和大使が広がっているので、それを知ってもらいたい。

あと、今回作品を見てあすにでも募金活動始めてください、平和のために動いてください、と言いたいわけではなくて、ただ、やっぱり自分たちの未来は自分たちでしか作れないと思うので、今より平和な未来が来るといいよねと思ってもらえたらそれだけでも今回やる意味はあると思うんです。

だから、ぜひみなさんも肩の力を抜いてミュージカルの作品を楽しみに来ていただけたらすごく嬉しいです。歌もあるしダンスもあるので、きっと楽しんでいただけると思います。」

ミュージカル『Signs!~微力だけど無力じゃない~』渋谷区文化総合センター、大和田・伝承ホールで2019年8月8日~8月12日まで 

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