20190802h01.jpg

今週は、皇室の帽子も手がけられてきた 帽子デザイナー、平田欧子さんのHidden Story。

東京・西麻布。大きな通りから一本入った静かな場所に帽子デザイナー、平田欧子さんのアトリエ、ショップがあります。

1階がショップになっていて、平田さんの手がけた帽子がずらり。欧子さんのブランド【H.at】のほか、今は亡きお父様のブランド【Akio Hirata】の帽子も並んでいます。

20190802h03.jpg

「いま私が見ているブランドは、まず【Akio Hirata】という、父の名前をそのまま使って、私はデザイナーをやっているブランドです。【Akio Hirata】ではオーダーものを受けたり、そうでないものもありますが、一点ものを中心としたブランドです。そのほかに、【H.at】というブランドがあってそちらは日常的にかぶっていただいて、機能性も充実させている帽子も作っています。」

帽子デザイナー 平田暁夫さんを父に持つ平田欧子さん。帽子づくりの道に進むきっかけは、どんなことだったのでしょうか?

20190802h02.jpg

父が帽子デザイナーをやっていたので、そういう家庭に生まれたというのはもちろん大きいんですけど、父が作っていた帽子が他の帽子とは違うと認識したのは私が大人になってからで、帽子を一番手軽に見れるのはやはり百貨店とかだと思うんですが、そこで『あれ?すごくかぶりにくい。』と思って、私が知っている帽子と違うのにびっくりしたんです。『世の中の帽子ってこんなにかぶりにくいものだったんだ。』とショックを受けて、私の知っている帽子がなくなってしまったら、これが一般的な帽子と思われるのは悲しいというか、やはり、父の帽子は残さなくてはいけないとそこであらためて思いました。それが20歳ちょっとすぎくらいです。」

では、お父様、平田暁夫さんの帽子は、どんな帽子だったのでしょうか?暁夫さんの歩みについても、教えていただきました。

「日本でもいろんな洋服のデザイナーさんの帽子を作らせてもらったりしていたんですが、帽子デザイナーってあまりいなかったので、帽子のデザインが父のところに集中したらしいんです。昔はファッションショーというのは何十人っていうデザイナーさんが一度にファッションショーをするんですけど、その帽子は全部うちの父が手がけているような時代。もうアイディアも尽きちゃって、本場のヨーロッパのものづくりが見たいと思って、アトリエをお休みして、パリに行きました。そこでジャン・バルテという当時トップクラスの帽子デザイナーのアトリエに入ることができ、3年間帽子の勉強をしたら、自分が作っていた帽子の作り方と全く違っていたんですって。今までは、ある型の組み合わせでしかなかったんですが、そこでは型そのものを自分で作っていたのにすごく驚き、『あ、こういうことができるんだ。これができれば全て形にできる。』ということで、のめり込んだみたいですね。自分のイメージした形を自分で作る。型屋さんだと職人さんの癖が出たりとか、シャープにしたいのにここなんで丸いの?っていうようなことになるんです。だから型を作れるというのはデザイナーとしては最高なわけですよ。」

20190802h05.jpg

1960年代に、お父様の平田暁夫さんがパリで学んだ帽子づくり。これを引き継いでいるのが、帽子デザイナーの平田欧子さんです。2016年、パリで個展を開いた欧子さん。そのとき、こんな出会いがありました。

「パリの個展をやっているときに面白いできごとがありました。ギャラリーがいっぱい並んでいる通りでやったんですが、そこである男性がパッとウインドウをのぞいたら帽子が見えて、入って来て『こんな帽子、1960年代のジャン・バルテ以来見たことない!』っておっしゃって、『え?父はまさにそのジャン・バルテのアトリエで勉強して、で、いま私がそのやり方でやっていて、今回持って来たんです』と言ったらすごく喜んでくださって。」

そして、平田欧子さんは、お父様と同じく、皇室の帽子を手がけられてきました。上皇后さまとのエピソード、例えば、上皇后さまがベトナムを訪問されたときには笹の葉をあしらったデザインの帽子が制作されました。 

20190802h04.jpg

「上皇后さまは出向かれる場所によってメッセージを込めて作られるんです。例えば、ベトナムに行かれるときに、ベトナムの人たちは竹とか笹とかを大事にしている人たちだから、『笹をモチーフに何かできないかしら?』というので、とりあえず笹の葉を作ってこれをどうしたらデザインになるのかなというのを持って行って、一緒に『こうしたらいいんじゃないかしら』という上皇后さまとのやりとりのなかでこういう帽子にしていきました。」

最後にうかがいました。これから、どんな帽子を届けていきたいと考えていますか?

「割りと最近、ちょっと帽子をかぶってみた、という方が増えていると思うんですが、日本の方って今年流行ったらみなさん同じような帽子をかぶりますよね。ちょっとかぶることに慣れたら、今度は自分に似合う帽子は何なのかと掘り下げてもらったら、帽子の世界が広がるので、似合うものとか、それによって自分の個性が出せるものを見つけて、日常的に帽子をかぶると気持ちがあがるんですよ。そういうことを体験して、実際に感じてもらえたらいいなと思います。」

帽子ブランド〈Akio Hirata〉〈H.at〉〈H.at Black Label〉公式ウェブサイト