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今回は、一時は市場から姿を消した国産の線香花火の復活秘話。東京 蔵前の花火・おもちゃ問屋、山縣商店の山縣常浩さんにお話をうかがいました。

山縣常浩さんによると、線香花火の歴史は、江戸時代に『鍵屋~、玉屋~』で知られる【鍵屋】が作ったもので、わらの先に火薬をつけた『スボ手牡丹』と呼ばれるものが始まり。

そして のちに、紙を撚って作ったものも 親しまれるようになりますが、こちらは、【玉屋】が流行させたと言われています。

時は流れ、その後、昭和50年代ごろまで、線香花火は国産のものが主流でした。しかし、中国から輸入品が格安で入ってくるようになり国産の商品は減少していきます。

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一番はじめは信州が昭和の時代になくなっちゃって、平成8年に岡崎で三河牡丹っていうのをやっていた入江さんが廃業されて、平成10年に九州の八女の熊本さんもとうとう商売をやめる。それで平成10年に花火屋さんで商品として売っている線香花火の国産品がなくなちゃった。スボ手牡丹から数えると300年続いて、長手牡丹とか、こんな素晴らしい商品ないよね、世界でも。0.1グラムの火薬よ。それであれだけさ、人生みたいに起承転結があって、きれいな花が咲くのに、それでなくしちゃうまくないと。」

線香花火の三大産地、信州、三河、そして、北九州。つまり、いまの 長野県上田、愛知県の岡崎、福岡県の八女。これらが相次いで、生産を中止。国産の線香花火が、市場から 消えました。

「さあ、困ったなと思って、岡崎の若松屋さんって日本一の大きい問屋さんの社長さんと懇意にしていたので、2011年に一杯飲みに行ったんですよ。

線香花火の話をする目的じゃなく、いろんな話をしに、、、で、飲んでるうちに、大きい花火のメーカーの三州火工さんの花火を作っている親父が稲垣さんってすごく仲良しで、3人で飲んでいるうちに、『線香花火作れない?』って話になった。

その三州さんの奥さんが信州の北上煙火さんっていうところのお嬢さんでお嫁に来てた。それで嫁入り道具に、和紙と、レシピを持ってきてると。

だいたい一子相伝で教えないんだ、そんなものはね。

何混ぜてるとか、松煙どのくらい混ぜるとか、低音でいぶした松煙とか、桐をいぶしてまぶして入れた方がいいとか、そういう文書があんの。

どうも、それを嫁さんが持って来てるよと。火薬は三州さんも昔、線香花火作ってたから火薬はねれますよ、って。和紙はかみさんのレシピを持って焼津とか静岡とかあの辺製紙屋さんじゃない、あの辺に行って、これと同じのないかって探して、そしたら焼津で見つかった、全く同じ。その和紙がこれなんだけどね。」

材料は そろいました。でも、もうひとつ、大事なことがありました。

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「さあ、今度はよらなきゃなんねえのに、よるばあさんがいねえ。あとはお金だよ。そりゃ中国が1円とか5円で入って来てるのに、ある程度出さないとおばあちゃんたちよらないもんな。

そしたら偶然、その昭和の名人と言われた入山さんってなくなっちゃったおばあちゃんに教わった人がいたのよ。まあ、岡崎だからそんなに大きな街じゃないから。

で、より手が見つかった、火薬はできた、和紙は見つかった。だけど、いくらなら売れる?っていう話になったのよ。

いかんせんさ、50円で売らないとあわないんだよ。ばあさんたちがよってくれないんだよ。さあ、どうしようと。じゃあ、1本ずつ比べるから高いんであって、これを10本入れて、きれいな袋に入れて500円。

それがよかった。それで、(平成)12年の12月12日に大江戸線が通ったのよ。それで、じゃあ、大江戸線の大江戸もらって、大江戸牡丹って名前にしたんですよ。」

東京 蔵前の山縣商店が中心となって復活させた 国産の線香花火。

山縣常浩さんによると、線香花火は 火をつけると、まるで人の一生のように 火花が形を変えていきます。この様子を花にたとえて解説いただきました。

「赤い玉になっているのが『牡丹』、江戸時代は洋花が入ってないからすべて日本の花で、一番豪華な花だというのが、牡丹ということで、牡丹。

『松葉』っていうのは、パッパッって散るじゃない、要するに世の中に出て一番華やかなりし時代だよ人間の。で50くらいになると角がとれてくる、会社でいうと部長くらいになって丸くなる、それが『柳』。

最後は『散り菊』って言って、人生の終焉を迎えたときに菊の花のように割れない。それを散り菊って名付けたんだけどね。そういう現象が、いい和紙を使うと和紙のなかに火薬がなじむから落ちないんだよ、玉が。それが大江戸牡丹、日本の和紙を使った線香花火というのはしっかり出る。」

最後に教えていただいたのは、線香花火が長く愛され続ける理由。山縣常浩さんは、こう考えています。

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「線香花火って、なんでみんな好きかっていうとね、花火をやるとしたら『火をつけるから危ないぞ、花火やるぞ、みんなどいてどいてどいて』って花火をやる。

線香花火は、『線香花火やるから寄って、寄って、寄って、こっちいらっしゃい、いらっしゃい』って、みんな仲良くなるじゃん。ひとつの線香花火をさ。

1本の線香花火を何人でも楽しめるからね。

そういう魅力がある、線香花火は。あのはかない火。

こんな小さい玉だもんね、魅力がありますよね、線香花火は。」

山縣商店ウェブサイト