今回は、目標と公言していた横浜スタジアムでのライヴを9月に開催する、SuchmosのHidden Story。

20190719h02.jpg

ヴォーカルのYONCEさんに語っていただきました。バンドを結成した2013年ごろ、Suchmosが出演していたのは新宿のMARS、下北沢のGarage、今はなき横浜のLizard、とったライヴハウスでした。その当時から、横浜スタジアムという目標はあったのでしょうか?

「あったと言えばあったんですけど、確実にものにする、というような実態を持った野望というよりは、ちょっと口からこぼれるっていうんですかね。でかいところでやるっしょ、みたいな。横浜スタジアムが具体的に見え出したのは、いつぐらいだったんだろうな、『THE BAY』を出して、僕らの音楽が世の中に受け入れてもらえた、という感覚を持ってからは、ほんとにやりようによっては行っちまうんじゃねえか、みたいなのは思いました。当時、自分らはそれをものすごいモチベーションにしてたし、またそういう自信が新しいガソリンとなって注入されたなというのがちょうどアルバム出したくらいの時期だったなと思います。」

20190719h03.jpg

2015年7月、ファーストアルバム【THE BAY】リリース。

その後、『STAY TUNE』を含むEP【LOVE & VICE】、『MINT』を含むEP【MINT CONDITION】、さらに 2017年1月のセカンドアルバム【THE KIDS】でSuchmosは 一気に加速します。

「そう考えると、やつぎばやにいろんなことをやってたんだなと思いますね。制作とツアーと大事なライヴが何本もあって、ていう状況がずっとあって、だから気づいたら、なだれこむように、自分たちにとってはあんまり振り返る間もなく来てるので、気づいたら、という感覚が僕は強いですね。」

去年の春にはホールツアー。そして11月には、横浜アリーナでライヴ。ここでは、ファーストアルバムに収録されたナンバー『Pacific』が、『Pacific Blues』として披露されました。

「ちょうど平行してこないだ出た3rdアルバム【THE ANYMAL】を制作レコーディングしていた時期なんですけど、そのとき作っているアルバムのモードのアレンジをアリーナに来るお客さんにも見てもらいたい、というのがあったんです。この日、アルバムに入ってる『In The Zoo』もやってるんですけど、この曲もこのときのテイクからまったくの別物に変わってるので、アルバム制作のモード、制作中に常に移り変わるモードを表現するのに『Pacific』っていう曲がキャンバスとしてふさわしいなというのがあったのでライブでやってみたら最高な感じになりました。素晴らしい思い出ですね、この曲は。」

今年3月にリリースされたサードアルバム【THE ANYMAL】。1曲目は、J-WAVE 30TH ANNIVERSARY SONGとしてもオンエアしたナンバー、『WATER』。

「これはもともと、隼太、ベースのHSUが、こういうアイディアがあって、あと、テーマとなるキーワードというか、歌詞を連想させるような言葉とか、WATERという言葉がまさにそうで、そういうところからやってみようということで始まったんです。これは一番芯になるのは歌だったり、抑制されたビートが続く場面とか、解放される瞬間が最後の最後に訪れるとか、隠し味的な、流して聞いてるとなかなか気づかない部分、細部にこだわった結果、たどりついたアレンジ。これがアルバムの制作モード、レコーディングで最初に録った曲だったんですけど、これを録ったときに、ま、これだよね、とアルバムのテンションを占う曲になったかなと思います。わかりやすいアッパーなもの、とかいうのがみんな頭のなかになくて、じっくり聴くとか、じっくりプレイするということに僕らこだわっていたなと思います。」

20190719h04.jpg

アルバム『THE ANYMAL』の制作について、YONCEさんは「リラックスしたモードだった」と語ります。では、そうした雰囲気になったのは、どんな理由からだったのでしょうか?

「やっぱりリラックスというのも、リラックスする必要があったからリラックスなんだなというのはあります。それこそステージが大きくなるにつれて、関わる人間が多くなるにつれて、名前が売れるにつれてとか、ほんとにささいなことかもしれないです。人からしたら鼻で笑っちゃうことかもしれないけれど、俺らなりに抱えていたフラストレーションとかプレッシャーから、このときの俺らはリラックスする必要があって、そういうノイジーなことから離れたところで音楽を作りたいなというのがありました。それを結構素直にぶつけた結果なのかなと思います。だからこそリラックスしているナンバーもあれば、リラックスが極度にいきすぎて、Indigo Bluesみたいな長尺で抑制と発散が繰り返される曲ができたり、そういうのは、僕らのライフスタイルとか置かれている心境とかがなんだかんだにじみ出てるというか、それは出るものだと思うので。」

9月8日、ついに、横浜スタジアムで ライヴが開催されます。最後にうかがいました。Suchmosのメンバー6人で横浜スタジアムのステージに立つこと。その想いとは?

2019070719h01.jpg

「もう、抜きには語れないんじゃないですか。最近思うんですけど、家族に悪態をついてしまう瞬間があるとか、家族ゆえに言えないことがあるとか、それすらもわかってるし、俺から見たみんなもわかってるし、あえて言わないことがあるよなとか。でもそれをあえて言う瞬間もあるし、そうじゃないとできなことが多くて。なぜなら、ひとりで音楽を作らないからなんですけど。これ、表現が難しいな。なんかすごく自分のやわらかい部分というか、ふにゃふにゃした部分を持って行ける場所です。だからこそ、俺もうちょっと頑張ろうとか思うし、これもうだめだ、俺ちょっといましんどいです、というのをみんなで分かち合うというのをこの何年間かかけてやってきて、それってすごい奇跡的なことだと思うんですよね。普通に生きてて普通に友達とかで成り立つものじゃないと思うし、この6人で1個曲を作って、それが世にでることってすごいと思うし。あまつさえ、3万人入るような場所を1日貸し切って、全国から来いよって言っちゃってるわけじゃないですか。俺、とてもじゃないけどひとりでは無理だから、3万人の前にひとりで立つとか。だから、ほんとにいてくれてよかったと思うし、なんか長生きしたいよね、と最近思いますね。」

Suchmosウェブサイト