今週は、無人の古本屋さん『BOOK ROAD』を東京の武蔵野市で運営さらに、いま、同じく武蔵野市 吉祥寺の あるビルに『ブックマンンション』という新しい形の本屋さんをオープンするべくクラウドファンディングを実施中、中西 功さんのHidden Story。

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2013年、IT関係の会社に勤務されていた中西 功さんは『無人の古本屋さん』を開店しました。会社員でありながら、古本屋さんをオープン。しかも、無人の??どういう理由で? そして、『無人の古本屋さん』とは??

本を買うのが好きで、本屋さんに行くのも好きだったんです。だから、本を買い続けていたら自宅の本が1000冊くらいになって、本棚もたわむ感じになってしまったんです。妻からも『これだけの量の本、なんとかしてよ』と言われて、捨てるのも売るのも忍びないなと思っていたので、それがきっかけでした。実際、本屋さんを作りたいと思ったときに、本屋さんをバーッと見に行って、自分なりの新しい本屋さんができないかと思っていたんですよ。いろいろうかがうなかで、お客さんがお店に入られて立ち読みされて、買われずに出て行かれるのがストレスになるという話を聞きました。そうした場合、自分がお店に立たなければストレスは発生しないと思って、自分が立たない形で運営できたらいいなと思いました。あと、固定費を下げるじゃないですが、人が介在しない形での販売といえば、農家さんの軒先で無人販売があると思うんですけど、それを組み合わせる形で、無人の販売ってできるかもしれないと思い、取り組んでみようと思ったんですよ。」

ヒントとなったのは、農家さんの無人販売、でした。

「無人の販売所を30カ所くらい回って、実際に大根とか小松菜を自分で買ったんです。買う時に、例えば大根は150円ですって書いてあって150円払って大根を持つじゃないですか。ちょうど大根を持った時、近くに人が通ったんですよね。『僕これ買いましたよ、お金払いました』って言いたかったんですけど言う術がないんです。お金を払ったことの証明ってしっかりやっていく必要があるなと思って。お客さんの会計で、買ったことの証明として袋を渡せればいいなと思って、がちゃがちゃを設置して、カプセルのなかに特徴的なビニール袋を入れておけば、お金払いましたという証明にそのビニール袋を持って店外に出てもらえればいいんだと思って、そういう風に工夫しました。」

オープンするとすぐ、本屋さんを好きな方が お店を発見。噂はあっという間に広まり、開店2日目には、がちゃがちゃの玉が切れてしまうほど。今も、わずか2坪の広さに 450冊程度を並べ、無人の古本屋さん「BOOK ROAD」は 営業を続けています。 

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無人だからこそのつながりってあるのかなって思ってますね。本の陳列も変えられたりしていて、一角がチェゲバラの本だけでまとめてあったり、目立つところがあるんですが、そこが美術系の本になっていたりとか、お客さんがこの本おもしろいよっていう他のお客さんにリコメンドしてくれる形になってるんで。本が売れると隙間ができるんですが、そこを埋めてくれたり。だから僕が物件の契約はしていますが、お客さんが他のお客さんのことを考えてやってくれるなというのは思っていますね。その最たる例が、無人の本屋さんで冷房つけてないんで、夏場は暑いんです。サウナ状態です。どうなるかというと毎年毎年うちわが店内に置かれるんです。お客さんが暑いから自分用にうちわを持ってこられて、他のお客さんも暑いでしょうからうちわ使ってください、と実際コメントもいただいてたりするんですけど、僕以上に他のお客さんのケアをしてくれるのがお客さんという。」

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IT関連の会社で勤務しながら、無人の古本屋さんを運営して来た中西 功さん。今度は、吉祥寺駅から徒歩5分の場所のビルを借り、そこに、新しい形の本屋さんやコーヒースタンド、イベントスペースをオープンしようと準備中。

本屋さんは、ブックマンションというスタイルを考えているそうです。20190621hidden06.jpg

「今回の本屋さんも一般的な本屋さんとは違うんです。一般的なところは書籍に詳しい方がひとりで、そのスタッフの方と運営されていると思いますが、今回はひとりの方の想いで作るというよりは、みんなが本を持ち寄ってみんなで運営する、という形の本屋さんなんですよね。

本屋さんのなかで本棚ってあると思うんですけど、その本棚をお貸しする形で棚をお貸しして借りていただいたみんなで実際に一緒に運営をしていく、ということですね。

で、僕、この本屋さんを作ろうと思ったのが2012年なんですけど、「シェアの未来」というシンポジウムがあって、そこで国分寺にある、つくし文具店の萩原修さんという方の講演を聞いて、萩原さんの文具店では「日直制」といって、萩原さんがやっている小さいデザイン教室というのがあるんですけど、そこに参加されている方が日直当番としてつくし文具店に立つ、というのをやられていて、すごくいいなと思って。」

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「ブックマンション」には、すでに、本棚を借りたい、という方が 続々と集まっています。

「実際にクラウドファンディングで棚を借りたい方を募集していまして、借りられている方の中には学者さん、出版社の方、漫画家さんも借りたいと言っていただいて、バラエティ豊かなんですよね。僕が全部ひとりで運用しようとしたら出てこない本がいっぱいあると思うんですが、そういった形で借りた方の個性が出た棚を作ってもらったら、100人くらいに借りてほしいと思っていますが、100棚それぞれ全然違った個性の棚ができるので面白いかなと思っていますね。好きが反映された本棚がずらっと並んでいる本屋さんって新しい形で面白いと思っているので。単に本屋さんがあるというよりは、本はいろんな世界の入り口だと思うんですよね。

なので、入り口になるようなコンテンツは持っておきたいので、夜は本屋だけどイベントスペースとして運用したくて。違うものをどんどん吸収して変化させていきたいなと思っていますね。これもありだよ、これもありだよとやっていくと、借りてただいている方からもいろんな意見をいただけると思うので、いろんな意見ウェルカムという感じではありますね。」

いろんな人が関わって、いろんな意見を反映して本屋さんをはじめ ビル全体を運営していく。つながり、をキーワードに、新たな挑戦が始まります。ちなみに、代表の中西 功さんは今回、それまで勤務されていた会社をやめて、このプロジェクトにのぞまれています。ご家族からはどんな声があったのでしょうか?  

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「家族から今回反対されなかったんですよね。11月19日に内見してその場で借りたいですと言ったはいいものの、一番説得しないといけないのは妻で、それが妻が今回あれなんですよ、決めてきたんならいいなじゃない?と許してくれて、肩すかしをくらったというか。うちの妻が好きなトンカツが出て来たタイミングでパソコンを見せて、「実は」って形で聞いて、この場所でかなりお金はかかるんだけど、本屋さんを増やしたいのでやりたいんだよねと言ったら、押してくれたので、いま僕40歳なんですけど、40歳にして家族も息子もいて完全にリスクをとらせてもらったので、完全に妻さまさまですよね。」

ブックマンションオープンに向けてクラウドファンディング実施中!
https://readyfor.jp/projects/x4