今回はシーズン終盤を迎え、ここからさらに盛り上がる男子プロバスケットボールリーグ、【B.LEAGUE】のHidden Story。取材にお答えいただいたのは、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ常務理事、事務局長の葦原一正さん。B.LEAGUEの立ち上げに参画し、リーグの経営戦略、ヴィジョンの策定、そのほか全体をまとめる事務局を運営されてきました。まずは葦原さんに、2016年9月のB.LEAGUE開幕に際して考えていたことをうかがいました。

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「立ち上げ当時、バスケをやっている人やファンの人は非常に多かったんですが、ビジネスとして成り立っているかというとそうではなくて、売り上げも少なかったし、お客さんも少なかったんです。なので、最初の事業計画で意識したのは、いかにたくさんの人に来てもらって収益基盤をつくるかということでした。実際バスケをやられている方は60万人いますし、調査をするとバスケが好きという方が全国に700万人いらっしゃるということもわかったんです。でも、好きなのに実際観戦にいらっしゃっていない方が大半だったので、そこをどう崩していくかがポイントでした。バスケファンの人の属性というか、どんな人がバスケが好きなのか調査してみると、若くていろいろスマホで見ている方が多かったので、ビジネスモデルをスマホファースト、すべての動作をスマホで展開しました。チケットもスマホで買ってすぐ入場できるとか、中継もスマホで見られる、グッズもスマホで買える、というような感じです。目の前にある端末で見たり買ったり楽しめる環境を作ることが大事だと、それを基本思想に具体的な設計を落とし込んでいきました。」

たとえば、B.LEAGUEのチケットサイトを開設。チームのウェブサイトではなく、リーグのサイトでいったん登録すればどのチームのチケットでもスマートフォンで買うことができます。また、ひとつの挑戦として、オールスターゲームのパブリックビューイングを、次世代型ライブビューイング【B.LIVE】として実施しました。

「従来のパブリックビューイングだと画面をみんなで見るだけだったのが、このライブビューイングは日本の持っているテクノロジーを使って、パブリックビューイングをより豪華に楽しんでもらえます。映像は8Kで非常にクリアな音、さらに振動も伝わる形で、よりリアル、もしくはリアルを超えた体感をしていただいています。何よりパブリックビューイングと違うのはお金をいただいていることで、チケット代は4000円なんですが、新しいスポーツ観戦のスタイルを提案させていただいているイベントになっています。富山でオールスターをやったんですけど、見てるだけじゃおもしろくないと思ったので、東京のライブビューイングの会場にも選手やチアに来てもらったんです。試合中は選手たちのトークだったり、クオーター間ではチアの演出があったりと、画面も見るし、自分の目の前でもいろいろあるし、というハイブリッドな環境をつくりました。」

昨年、そして、今年のオールスターゲームでおこなわれたライブビューイング。その背景にはこんな想いもありました。

「スポーツビジネス特有の問題なんですが、今たくさんのお客さんに来ていただいていて、B1でも満員の試合が多くなっているなかで、新たな収入源をとっていく必要がありました。例えば、地元のチームがアウェイに行ったとき、地元のホームアリーナでパブリックビューイングをしてみんなで盛り上がる。そうすると興行的にも回数が増えてチームの売り上げにもなりますし、ファンの方も楽しむ機会が倍になる。そういうことを話していて、オールスターは2回目でしたがやらせてもらいました。将来的にはレギュラーシーズンでできると一番いいかなと思っています。私が思っているのは、もちろん家で見るのも楽しいし、アリーナで見るのも楽しいんですけど、スポーツの本質はみんなで盛り上がることだと思うんです。だから、家でひとりで見るくらいならお友達とか他の人も連れてきて見ていただいて、また応援してもらえればいいかなという発想から来ております。」

B.LEAGUEの葦原一正さん。バスケットボール、さらに、スポーツやエンターテイメントの未来について、大きなヴィジョンを抱いています。

「今B1だとキャパが5000人くらいのアリーナが多いんですけど、NBAだと18000人くらいになります。横浜アリーナのキャパで12000くらいなのでもっと大きなアリーナが全国各地にある、それがNBAなので、もっと大きなアリーナを今後5年10年20年かけて増やしていかないといけないと思っています。あと、例えばNBAだとマジソンスクエアガーデンが有名ですが、ニューヨークの真ん中に大きなアリーナがあるんです。そこで平日の夜にはバスケの試合がおこなわれていたり、コンサートもバンバンおこなわれて、そういうエンターテイメントが街の真ん中にある、そういう街が日本にもっとあればいいなと思います。街の中心からはずれたところではなくて、やはりアリーナは街の真ん中にないと、とは思っています。でも、簡単に東京の真ん中に作れるかというとそうではないので、あせらずやっていきたいと思っています。日本ではエンターテイメントにお金を払う文化というのが、最近は築かれつつあるとは思いますが、まだまだアメリカに比べると違うので、そういう風にアリーナが街の真ん中にできたり、あるいは、スポーツも1つのスポーツをずっとやったり見続けるんじゃなくて、いろんなスポーツをやって、いろんなスポーツを見る。そんな国になるといいなという想いもあるので、そういう文化を築くのがひとつ大きな目標かなと思っています。」

最後にもうひとつ。ワールドカップ出場を決めたバスケットボールの日本代表についてコメントをいただきました。

「ラグビーのワールドカップが注目されていますが、その前にバスケのワールドカップがあります。8月下旬から中国で開催されますので、ぜひ注目してください。自力でワールドカップに行ったのは21年ぶりになります。2006年に自国開催していますが、みなさんご存じないかもしれません。そういう意味では久々のワールドカップなので、世界を相手にどこまで戦えるか私も注目しているところです。そのワールドカップにはもちろんB.LEAGUEの選手も出ますが、今、海外で活躍する八村選手や渡辺選手も合流して戦う場でもあるんです。いまは歴代で最も強いチームと言われているので、そのチームが世界を相手にどこまでできるかが一番のポイントかなと思っております。」

B.LEAGUE公式サイト

https://www.bleague.jp