今回ご紹介するのは、ビートルズのカバーを演奏するバンドのみなさんによる復興支援プロジェクト、【ビートルズのチカラ!】。お話をうかがったのは【ビートルズのチカラ!】代表のGenky松浦さん。福島県福島市にお住まいの松浦さんに、まずは、【ビートルズのチカラ!】とはどんなプロジェクトなのか、教えていただきました。

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「2011年の7月、震災の4ヶ月後に、東北のビートルズプレーヤーが集まって、被災地をツアーして元気を発信する、そして、そこで得た収益を被災地に送ろう!ということからスタートしました。その前の4月に私の個人バンドのワンマンライヴがあったんですが、そのときはさすがに震災後だったので、ライヴをやめようかなと思ったんです。でも、せっかくだからやってみようということでやったら、思った以上にお客さんが来られて、我々の演奏で喜んでくれたり涙したり、いろんな状況をその場で見ることができました。僕らのように活動しているビートルズプレーヤーは東北に6つか7ついるので、そのバンド全部に声をかけて『やってみないか?』と聞いたら、みんなが『ぜひやりたい』と言ってくれたんです。」

2011年7月16日。宮城県仙台市のライヴハウス、ペニーレーンに東北のビートルズバンドが集まって、ライヴをおこないました。

「このときはお客さんもたくさん来てくれたんですが、なかでも印象的だったのが、津波で家を流されたお客さんが来てくれたことでした。『つらいな』って言ってたのを今でも思い出しますね。とにかく自分たちも久しぶりに音を出すし、意味あることだからやっていこうということでスタートしました。当時のことを思い出すと涙が出てきます。すごくいいライヴだったと思いますよ。アマチュアですが想いの詰まったライヴになったかなと思っています。」

ビートルズをカバーするバンドが集まり、演奏し、その収益を被災したみなさんに寄付する【ビートルズのチカラ!】。プロジェクトは東北をめぐることになります。その後、現在までさまざまな街でライヴをおこなってきましたが、活動のなかで、ひとつ大切にしていることがあります。

我々はこれをバンド大会にはしたくなくて、東北人としての想いを伝えないといけないと思っているので、必ずお話はさせてもらっています。MCでも入りますし、その時間をとってもらったり、必ず話すことをルールにしています。当時は、東北に元気を発信しようということでスタートしたんですが、最近は風化を防ぐという流れになってきているかなと思いますね。今オリンピックとか明るい話も世の中にあって、その中でやっぱり東北が忘れられがちになってきていると思うので、我々が感じたこと、経験したことを次の世代に伝えるために、当時あったこと、今思っていることを伝えていこう、ということです。気仙沼の友人に聞いても、復興は進んでいるように見えるけど、実際人はいない、産業は停滞している、そして、若い人はいない。それはなかなかニュースではやらないわけです。原発のこともそうですけど、一方では変わらずに粛々と動いている人もいるんです。原発については、とにかく今は帰村をすすめて人を集めようとしていますが、我々の仲間にもいわきの仲間がいます。ラブ&ピースというバンドで、もともとは楢葉町出身のバンド。避難して家族もみんないわきにいるんですが、まだ半分くらいしか戻ってないと言ってました。その戻っている方もご老人とか年齢が上の方がほとんど。帰村がすすんでいるとニュースでは言うけれど、それで実際、町が動くのかい?という、そういうとこまで伝えていくつもりでいます。」

活動をスタートして数年後、嬉しい出来事がありました。【ビートルズのチカラ!】のことを、あの人が聞きつけたのです。

ポール・マッカートニー側の方が我々の活動を知って、『被災地の方とポールが会いたがっているんだけど、会ってみないか?』ということで連絡をくれて、お話をさせてもらいました。ドームで『リハーサルが終わるまで待っててね。』と言われて、その袖でお会いしたんです。そのときに東北のことを非常に心配してくれて、一緒に会った仲間も現実を話しながら、『がんばってね!』という言葉をいただきました。私は、『東北でツアーをしてほしい。』とポールに言ったんです。『あなたの歌はとても力があるから東北に来てくれないか?』と聞きましたら、ポールは、『Promise』と言ってくれたのを覚えています。」

ポールはその夜、「For Fukushima」と言って、『Yesterday』を演奏しました。

「変わっていないところは変わっていない。8年前から変わっていないエリアもあります。復興支援というと、防波堤とか道路とかハードはどんどんできあがっているけれども、そのときに感じた心の傷とかソフトの部分の復興ってまだまだなんです。関東の方はなかなか感じなかったかもしれないけれど、僕らの仲間にはご遺体と一晩一緒にいたとか、そういうことを経験した奴らもいるんです。そういう奴らの感じた想いを、まだまだつなげていかなきゃいけない8年目かなと思っています。道路も橋も大事だけど、人の心が復興しなければ本当の復興とは言えません。そして原発に関しては、まだふるさとに戻れない人もいる。その現実をみなさんに知ってもらいたいなという風に思っています。」

東北の今を伝えること。ビートルズを愛する仲間たちとともに、ビートルズの音楽とともに、旅は今も続いています。

2011年、2012年当時、九州や四国の仲間から支援をもらってきましたが、ここ数年は、九州で大雨があったり地震があったりということもあって、最近は『被災地をつないでいこうよ』という流れに変わってきています。九州と東北が一緒になって発信をすればもっと広がるよね、ということで今度、もしかしたら5月に仙台で【ビートルズのチカラ】をやるかもしれないんですが、そのときに熊本の奴らが来たいって言ってくれているんです。もし熊本から来てくれたら熊本の話もしてもらって、熊本の奴らは東北で感じたことを熊本に持ち帰ってくれる。それで地域の人にその話をしてくれたら、つながりますよね。おそらく行政は地域地域の復興支援はやるけれど、その横串をさすという活動はしてないので、我々はそれをやりたいと思っています。そうするともっと広がるし、お互いに支援できるな、と思っています。」

【ビートルズのチカラ!】

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