今回、お話をうかがったのはシンガーソングライターのあいみょんさんです。

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先週リリースされたニューアルバム。

その制作は、『マリーゴールド』がヒットしていた去年の夏に始まりました。 

アルバムタイトル『瞬間的シックスセンス』は早い段階であいみょんさんの中にありました。

「私はいつもならアルバムタイトルは最後に決めるタイプなんです。でも、今回のアルバムに関しては作る前から、なので去年の8月くらいにはこのタイトルでいこうと決めていました。もともとものづくりがすごく好きで、芸術とかアートが生まれるきっかけっていうのは、瞬間的な第六感からかなと思っています。飲み物を飲んで『美味しい』とかは味覚から感じることですが、曲の土台となる歌詞やメロディが浮かぶ瞬間というのは、どこからの情報でもなくて第六感からかなと思って。だから私が作る音楽は、瞬間的な好奇心とひらめきからくる第六感からきてるのかなということで、『瞬間的シックスセンス』というタイトルにしました。『マリーゴールド』を作ったときもそうだったんですけど、"麦わら帽子をかぶっている女の子の後ろ姿が、揺れるマリーゴールドに似てる"というのを思いついた瞬間が第六感かなと思っていて、ほんまに急にきます。麦わら帽子の女の子も見てないんですけど、麦わら帽子の後ろ姿がマリーゴールドに似てるなというところから物語が始まって曲作りがスタートしました。基本的には、自分の作るものに自信を持とうと思っていて、あの曲ができたときはやっぱりこの曲が自分の代表曲になればいいなと思うくらい、背中がゾワッとする感じがあって、この曲が私の夏を変えてくれるなと思っていました。」

アルバムには12曲が収録されていますが、曲はアルバム用に書き下ろすのでしょうか? それとも?

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「私は日々、曲を作りまくっているので、アルバム用とかそういうのはあまりないです。この1年間というか、15歳から曲を作り貯めてるのでそこから選んだりとか、ストックは200曲を越えてます。でも、十代の頃から比べると作る曲の数は減りました。去年は40曲くらい作りましたが、それでもすごく減ったなと思うくらい、19歳か20歳のときは100曲とか作っていたと思います。作詞作曲するのが楽しくて、趣味に近いというか、癖みたいな感じになってます。今回のアルバムは2018年に作った曲が多いですが。」

『瞬間的シックスセンス』、4曲目に収録されているのは『二人だけの国』。

「これは、映画を見てその映画の主題歌っぽく作ろう、という感覚で作りました。若い頃、といっても今も23なんですけど、昔そういうことをよくやってたんです。映画を見て、自分がもしこの映画の主題歌を作ったらどうなるか。その名残といいますか、『失楽園』という映画を見て作りました。『失楽園』は前々から見てたんですけど、あらためて見て"すごい映画やな"と、この主題歌を作ってみようと思いました。言葉を冒頭に並べると漢字だけになってお経っぽいなということで、お経っぽく歌ってみようとなったりと、面白い、変わった曲になったと思います。アレンジもすごくきれいというか水面っぽい、水たまりっぽいアレンジですごく素敵にアレンジしてくださいました。」

アルバムの中盤、7曲目は『恋をしたから』。すぐそばであいみょんさんが歌っているようなアレンジの1曲です。

すぐそばで演奏している感じを出したくて、ブースに入らず部屋で一発録りでレコーディングしました。私の声とギターは一発です。あとからクラリネットとか鳥の鳴き声とかを上から重ねて作った感じですね。近くで演奏してて距離感が近い曲やなと思いきや、途中からクラリネットとか入ってくることで"結局、ここはどこなんや?"といいますか、異空間というか違和感・奇妙な感じを出せたらいいなとすごく思っていて。」

この曲の歌詞について、そして ラヴソングについて、語っていただきました。

「恋愛というものが人間に与える影響力のすごさを感じることがあって、よく『恋愛すると女の子はかわいくなる』って言うじゃないですか。そういうのってあるのかなって思っていたんです。恋愛をするとその好きな人の音楽を聴きますし、好きな人の好きな食べ物を食べますし、知らず知らずのうちに聴覚も味覚も変わっていくんやなと思うと、確かに恋愛は人の人格を変えてしまうなと思っていて、これはそういう感じの曲なんです。恋愛をしたから今日の空がきれいであしたがすごく楽しみですけど、恋愛をしたからあしたが怖い日もあるし空が寂しく思える日もある。いろんな感情になれる恋愛ってすごいなと思って、当時の私は書いてたんやと思います。自分の物語かどうかは意外と自分では分からなくて、どっちかというとこの曲を2~3年後に聴いたときに自分の曲だとあらためて分かるかもしれないですね。最初は認めたくないんですよ、これが自分の体験談やとか曲やっていうのは。でも、たまに10代の頃に出したインディーズのラヴソングが今の私に届くこともあるので、2~3年後にもしかしたら自分に届くのかもしれないですね。もう10代の頃の自分は過去の自分なので、まったくちがう人物なんやと思います。」

今週、東京メトロで実施している【メトロソングス】。中吊りポスターに、聴くと前向きになれる曲の歌詞を掲載していますが、この企画について、あいみょんさん自身が選んでくれたのが、『ひかりもの』というナンバー。

「この曲はめずらしく感情的になって作った曲で、基本的に私、寂しいとか苦しいとか、そういう感情で曲を作ることはないんですけど、これはすごく悔しくてウワーッてなって曲を作りました。つまらんことで泣いてる場合じゃないなと感じたことがあったんです。でも涙は流すためにあるので、どんどん流すんですけど、そのときは"こんなつまらんことで泣いてるのがもったいない"って思ってましたし、23歳ってだいたいのことでは傷ついてきたなと思ってたんですけど、やっぱりまだまだ傷ついて悔しいことってあるんやなと思って、それでできた曲です。」

あいみょんさん、最後に、ラジオについてこんなことを話してくれました。

「ラジオで聴いて私を知ってくださった方がすごく多いんです。私は自分の曲を熱心にラジオでたくさんかけてくださっててすごく嬉しいです。私も10代の頃、ラジオからふと流れた曲で『おお、めっちゃいい!』と思ったのもありましたし、そこから知ってもらえるのはありがたいです。そのあと自分で調べることができるじゃないですか。ラジオから流れてくると『この曲何やろ、調べよ』という感じで、そこから他の曲にもつながっていくという、そういう連鎖はすごく素敵でいいなと思います。私、それこそ制作しているときにスタッフさんと『この曲、ラジオばえしますね』っていう会話が生まれるくらいラジオのこと考えたりしてるんですよ。なので、やっぱり流してほしいと思ってたりはしますね(笑)」

あいみょんオフィシャルウェブサイト