今回は映画『グレイテスト・ショーマン』で体の一部がつながっている双子、Chang & EngのChangを演じた、小森悠冊さんのHidden Story。
小森悠冊さんは、1990年ニューヨーク生まれ。 ダンサーであるお母様、小森美紀さんの仕事の関係で子どものころはニューヨーク、アムステルダム、そして東京で育ちました。
「ちょうど高校２年生のころだったと思うんですけど、ニューヨークで活躍している母の知り合いのダンサーさんが、僕の母が東京で経営するスタジオでワークショップをすることになったんです。そのときに、『彼がニューヨークに来てみたら？』って誘ってくれて。自分の母親が戦ってきた街で挑戦してみるのもいいのかなと思いました。」
お母様のダンススタジオでワークショップをおこなったダンサー、クリストファー・ハギンズさんにもすすめられ、小森悠冊さんは、ニューヨーク行きを決意。エイリースクールでダンスを学び、ダンスチームでショーに出演するようになります。そして、2016年からは、MSAという事務所に所属。運命の電話がかかってきます。
「僕のマネージャーの方から電話がありまして、『こういう仕事があって悠冊にあってると思うけど、興味ない？』って言われて。そのときは、ヒュー・ジャックマンが主演の映画で、タイトルは『Greatest Showman』か『A Greatest Showman on the earth』。まだ題名が決まってなくて、そのどっちかだけど、興味ない？みたいな。なかなかおおざっぱな説明だったので、僕もよく分からないままオーディション会場に向かうことになりました。」
映画『グレイテスト・ショーマン』のオーディション、2回目に参加した際、予想外のテストが小森さんを待っていました。
「ダンスを踊ったあとに、『今度はひとりずつ歌を歌ってもらいます。』と言われまして、みんなスタジオの外に出されたんです。僕は正直、踊るだけだと思っていたので、何も用意してなくて。でも、回りを見てみると僕以外みんな楽譜を持っていて、ひとりずつ歌い出すんですけど、部屋の中からピアノの音も聞こえる。いざ自分の番になって部屋の中に入ってみると、ピアノを弾く方に楽譜を渡して、その楽曲をピアノの演奏者の方に弾いてもらうという形。僕は何も用意がなかったんですが、ちょうど僕の知り合いでその日に誕生日の人がいたので、『きょう用意はないんだけど、その彼のためにハッピーバースデイソングを歌わせてください』とお願いをして、なんとか歌い切りました。それがよかったのかは分からないですけど、そこで本決まりになりまして。」
『グレイテスト・ショーマン』、撮影中のHidden Story。こんなことがありました。
「劇中に火事のシーンがあるんですけど、そのときに本当に建物を燃やしたんです。ものすごい火で、監督も大満足だったんですけど、火が大きくなりすぎて、隣の建物にも火が移ってしまって。その建物は楽屋になっていて、自分たちの荷物が置いてあったので、僕たちも朝まで帰れずずっと待機でした。」
さらに、主演のヒュー・ジャックマンと共演したシーンについてのエピソードも教えていただきました。
「劇中、最後のほうに"From Now On"という、主役のヒュー・ジャックマンがすべてを失ってしまって、彼がバーでひとりでいるときに僕たちがみんなバーの中に入って彼を励ます、というシーンから始まる曲があります。その曲の初めてのリハーサルのときに、曲が始まる前にヒュー・ジャックマンがセリフをしゃべるんですが、彼がもう本当に役に入り込んで、号泣しだしたんです。そして、そのまま自分たちのほう振り返った瞬間、自分たちキャストもスタッフも全員が号泣する、という、すごいリハーサルがありました。」
人とは違っていてもいい。いや、違うからこそ素晴らしい。いろんな立場の人が登場する『グレイテスト・ショーマン』。実は、撮影期間が、アメリカ大統領選挙と重なっていました。
「ちょうどリハーサル期間がアメリカの大統領選挙と重なっていたんですけど、そんな中トランプが当選して。監督がそのときにみんなを集めて『こんな時代だからこそ、この映画が今このときに公開することに意味がある』という話をしたんです。多分、そのときくらいからキャスト・スタッフ全員で、本当にいいものを作り上げようという気持ちひとつでこの作品ができあがったんじゃないかなと思います。壁をつくることでは何も生まれなくて、ひとりひとりが手をあわせていくことで何か大きいことが成し遂げられるんじゃないかと思います。」