今回は、RADWIMPSのニューアルバム『ANTI ANTI GENERATION』のHidden Story。

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2016年、RADWIMPSは映画『君の名は。』の音楽を担当。

さらに、オリジナルアルバム『人間開花』も大ヒット。ツアーも精力的におこないました。めまぐるしい日々のなか、次のアルバムへの準備はどのように始まったのでしょうか?

野田:いつもそうなんですが、入り口はそのときやりたい曲をまず作っていっていきます。それでなんとなくアルバムの骨格が見えてきて、あ、きっとこういうアルバムになるなとわかった瞬間があるんですけど、それが僕らにとっては去年の12月くらいでした。そのときに合宿のレコーディングに入ったりもして。やっぱりビートとかトラックだったり、そういうビートミュージックとバンドの音を今の僕ららしく融合したいなというのがあって、それが『カタルシスト』とか、そういうシングル曲になったんですけど、あれのデモを一緒に作って。

武田:その合宿で全員で音を出すタイミングはほとんどなかったんですけど、アルバムに向かってここで作業していくというのはいい体験だったり、バンドにとってもいい環境だったと思います。

野田:あとはなにより夜とかずっと一緒にいるんですが、そういう時間も今まであんまりなかったんです。あれがでかかったよね、いろんな話ししたりして。もうあんまり、集まろうと言わないと集まらないので、ああいう風に音楽作って、めし食って、適当に一緒に遊んで、っていうあの空間はよかったと思います。」

アルバム制作のひとつの鍵となったナンバー『カタルシスト』。ヒップホップ的なアプローチを考えたのは、どんな理由からだったのでしょうか?

野田:避けがたく今の時代の流れを感じますし、潮流として、ヒップホップ的なアプローチが世の中にあふれている。その気持ちよさを僕もひしひしと感じているし、じゃあ、そういう音楽といま僕がやっている音楽のフォーマットで新しく何ができるかな?というのは、音楽を作る者として自然な興味がありました。でも、ただヒップホップをやるだけとか、ただビートを作るだけでも面白くないし、それをRADWIMPSというものを媒介にして何ができるのか、じゃあそれをどうやってやろうかと思って、試行錯誤して、第一形態としてたどり着いたのが『カタルシスト』。その1個前段階として、『洗脳』という曲も作りました。ロックバンドというフォーマットがなかなかもう主流ではなくなりつつあるというか、ロックバンドは消えはしないし、なくならないと思うんですけど、今の現代、音を鳴らす側としては、ロックバンド然としていればいいかというとそうではなくて。僕らはそこにいつづけるというよりは、今の時代の中でなにが鳴らせるかを常に考えてきたバンドだと思うので、僕たちは変わり続けることを選んで音を鳴らすんだろうなと思います。」

そして、今回のアルバム『ANTI ANTI GENERATION』。これまでと違うのは、フィーチャリング、という形でさまざまなアーティストが参加していることです。野田洋次郎さんはこう語ります。

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野田:僕自身、最近いろんなプロデュースワークとか楽曲提供とか自分の曲を他の人に歌ってもらうということをここ数年やっていて、その楽しさも味わってきた。そのなかで自然とRADWIMPSのアルバムのなかにも違う声がほしいなと思ったんです。ふたりにも話したら、『いいんじゃない?』と言ってくれて、一番最初にTAKAに声をかけたのかな。」

ONE OK ROCKのTAKAさんをフィーチャーしたナンバー『IKIJIBIKI』の制作秘話。ドラムは、現在 休養中の山口 智史さんが演奏しています。    

野田:この曲は実はオケ自体は4年前くらいにとっているので、ドラムはこの曲だけ智史が叩いていて、すごい時空を超えたコラボレーションになってるんです。自分じゃない声でサビを歌ってほしいなという想いがずっとあって寝かしていたんですけど、満を持してね。どれがいいかな?みたいな感じで3曲くらい候補を出して、全部英語詞のもあったし、バラードもあったし、どうしよっか?って言ったら、『いや、もうどれでもいいよ!どれもいい曲だよ。』っていう感じですごい軽いノリで言われて。(笑)だったら中途半端にならずに突き抜けようかなと思ったんです。イメージ通りというか、イメージを超えるイメージ通りさ。あの声はすごいですね。ほんと嬉しかったね。でもなんか、TAKAは別のスタジオでとってくれたものを僕らに送ってくれるんですけど、毎回どっか抜けてるんだよね。

武田:そう、お願いしたはずなんだけど毎回どこか抜けてて、俺らあわてるっていう。

野田:『歌詞の黄色い部分、TAKAここ歌ってね』って送るんだけど、毎回どっか忘れてて、結局3往復くらいして。だから、TAKAはなぜか最後のほうキレ気味だった。(笑)いやいや違うんだって、歌えって言ったところ歌ってないんだって。(笑)」

あいみょんさんをフィーチャーした『泣き出しそうだよ』。この曲についても、Hidden Story、教えていただきました。

野田:あいみょんとは2曲渡アレンジ進めてて、両方いいね、どうしようか?って。

武田:メンバーも迷ってスタッフにも投げかけたら、スタッフもきれいに分かれて。もう最終的にあいみょんに決めてもらおうって。

野田:そしたら、あいみょんがこっちがいいって言ってくれたんです。この曲は前作までにはあまりなかったR&Bよりというか、アプローチというか、サウンドもそうだし、コード感も含めて、確かにこっちのほうが新しいなという感覚がありました。あいみょんの歌どりも僕らのスタジオでやったんですけど、わかっていてもやっぱり天性の歌声というか、素晴らしい歌を持ってるなと思ったし、あの声があれば俺、アルバム1枚くらいあいみょんの作れるなと思いました。ちょうどこの前ビデオの撮影もして、あいみょんに『あのもう1曲どうするんすか、洋次郎さん!』って言われて、『どうしようかね。』って。(笑)めっちゃいい曲なんですよ。ずっとハモってる。」

最後にうかがいました。アルバム『ANTI ANTI GENERATION』を発表した今、どんなことを感じていますか?

野田:すごく面白いアルバムになったと思います。この3人が音楽集団として円熟味を増している気がして、だから、ハッとさせられることも多かったし、新しいRADWIMPSの面白い形というか、RADWIMPSってこういう面白いバンドなんだ、という感じがすごく詰まったアルバムだと思います。

武田:僕は歌詞にすごく感情をいろんな方向に振れさせてもらいました。元気づけられることもあったし、中にいる身なんだけど、本当に大好きなアルバムができたなと思っています。

桑原:洋次郎が全曲作っているんですけど、同じ人間なのかなと。すごい触れ幅ですよね。

野田:作りたいんですよね、作りたくてしょうがいないんです。今もスタジオばっか入ってます。あんまり、作り終えたって消耗しきった感じではないです。

武田:アルバムできて3日後くらいにスタジオ入ってたもんね。

野田:入ってたな~。来年以降のものいろいろ作っているので、待っててほしいですね。面白いことがいっぱい起きると思います。」

RADWIMPS