今回、注目するのは大分県の湯布院にあるお店【ジャズとようかん】。そして、こちらで販売されているスイーツ『ジャズ羊羹』のHidden Story。

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【ジャズとようかん】大分県でこのユニークな名前のお店を運営するのは谷川義行さん。まずはどんなお店なのか、教えていただきました。

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大分県湯布院にございますセレクトショップです。音楽が大好きな店で、音楽を中心において、その暮らしの中にあったらいいなと思う食品や食器、まさに直球で音楽のCDだったりレコード、アクセサリーなどを置いています。このアクセサリーも多くが音楽を愛している個人作家たちのブローチだったり、あるいはオリジナルの音楽をモチーフにした雑貨類を中心にしていまして、音楽にまつわる商品ばかりを集めたお店になります。」

開店のきっかけは、羊羹ではなく音楽でした。

「目的がはっきりしていまして、音楽をもっと日常的に多くの人に聞いてもらいたいという想いでスタートしました。私はコンサートの企画という仕事を2003年から九州全域、あとは一部アジア圏までカバーしながらやっていて、自分が今後50年100年300年と残ってほしいと思うミュージシャンを広め残す活動をしていたんですけど、なかなか広がらない。音楽が好きな人、詳しい人はどんどん詳しくなる一方で、自分たちが紹介したい、聞いてほしいな、触れてほしいなと思うような音楽やカルチャーに、どこから入っていったらいいのか入り口を見つけられないでいる方がたくさんいるのかなと思いました。その状況をどうしたものかと考えているなかで、ひとつの仮説を立てまして、自分は旅が非常に好きで、旅先での出会い方というのにヒントを得て、旅をしている最中の方に音楽を紹介してはどうかというアイディアを数年前からあたためておりました。また、私は"音楽は音楽だけでは輝かない"という持論を持っていまして、音楽単体で紹介するのではなくて、音楽がよく響く、楽しく響くようなものも一緒に紹介したいというのもあったんです。空間として音楽を紹介したい、かつ、それを非日常の旅先にいる方々、家族や恋人、友人と旅行する、また、個人に戻って旅行するなかで、普段の自分のことを考えてみたり、これからのことを考えてみたり、そういう時間が旅先にはあるんじゃないだろうか。そういうところに僕が紹介したい音楽があっけなく転がっている。このあっけない出会いというのがテーマなんです。」

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旅先での予想していなかった出会い。これを生むために旅人が多く訪れる、大分県の湯布院にお店を構えました。さらに、谷川さんは『旅する音楽』というタイトルのもとコンサートも開催されてきました。

日常のスピード感のある暮らしのなかでは、間とか隙間をこわがるというか、ちょっと時間があると携帯に目を落としていますが、旅というのはむしろ携帯はかばんのなかにしまって、足下にあるようなものだったり、自分の頭上に広がっている世界や風景、自分を囲んでいるものを感じるというのが楽しみ方だと思います。隙間をこわがらなくていいよ、というか、素敵なものは自分のまわりにすでにころがっているよ、というようなことを教えてくれるアーティストを当初は湯布院に集めていました。大橋トリオさん、haruka nakamura、畠山美由紀さん、コトリンゴとか、隙間にあふれた豊かな余白というか、そういう時間を楽しむ体験を提供できたらいいなと思って企画をしてきました。」

ところで、気になるのは店名の【ジャズとようかん】。名前は、お店で販売している『ジャズ羊羹』にちなんでいます。『ジャズ羊羹』は、下の方は小豆の色で、その上にピアノ鍵盤がのっているようなデザインになっています。

「『ジャズ羊羹』は表面にピアノの鍵盤を模していて、このデザインが印象的な羊羹になっています。僕もそうですが、普段コーヒーを飲むことが多かったりしませんか?このままのライフスタイルにストンと落ちる和菓子があってもいいのかなと思いまして、コーヒー、そしてワインにあう羊羹を作りたいなと商品開発を始めて、洋服を着た和菓子というのが『ジャズ羊羹』です。中身は小豆あん。お砂糖は沖縄県産の黒糖を使っておりまして、あとは一晩ワインにひたしたドライいちじくが白黒二種類、ごろごろ入っています。その上は白い部分がミルク羊羹で、さらにその上のピアノの黒鍵の部分があるんですが、これも羊羹です。竹炭を練り込んだ羊羹で、職人がひとつひとつ手刷りで竹炭入りの羊羹を刷り込んでいます。ジャズとつけたのは、ジャズと羊羹という言葉って別々に記憶して別の箱に入れていると思うんですが、そういう一見、ふたつの相まみえない空気感をまとったものをひとつにすることで、おもしろがってもらえるんじゃないかと思いました。」

谷川 義行さんいわく、『このジャズ羊羹をきっかけに、コンサート[旅する音楽]にも参加してほしい』。

「ジャズ羊羹は、僕らが本当に伝えていきたいことの入り口にしかすぎないんです。同時に、入り口があるからには、その先が大切になってくる。やっぱり出口としては、【旅する音楽】に参加してほしいですね。普通のコンサートはコンサート開催地の近くの方が来るのが一般的だと思うんですが、僕らの【旅する音楽】は、遠く離れたお客さんがコンサートをきっかけに旅をしようと思うような提案をしていまして、音楽だけを楽しむんじゃなくて、僕らが提供したいのは、コンサートの前後にある旅そのものなんです。それをさらに巻き戻して、『何で僕は知らない街にコンサート見に来たんだろうな?』と思い返せば、ジャズ羊羹が最初のきっかけだったんだなと。そして気づけば、その先にある音楽や丁寧に作られたものを知って、自分の暮らしをより楽しく豊かにデザインしていこうと思ったり、他者や他の街への理解が生まれたりするようなきっかけになっていけるように、準備をしておきたいなと思っています。」

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ジャズ羊羹を入り口に、コンサート【旅する音楽】に参加して、その旅での出会いによって、人生がより豊かになっていく。ジャズ羊羹のなかには、日々を楽しくするヒントが詰まっていました。

ジャズと羊羹 http://www.jazz-youkan.com