今週は、ファッションブランド【LEBECCA boutique】のディレクター赤澤えるさんのHidden Storyです。

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そのブランドの洋服には、すべて名前がついています。例えば、『仕事にも精が出るワンピース』、『愛が漂うレースワンピース』、『すまし顔で聴くレースブラウス』。しかも、一着一着に、ストーリーがあるのです。その物語をつむぐのが、【LEBECCA boutique】のディレクター、赤澤えるさんです。

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「普通はだいたい、レースのワンピースだったら『レースワンピース』って名前がついておわりだと思うんですが、私たちの服の作り方は、その服を着ていきたい場所とか、これがあのときあったらよかったのに、という背景となる物語がノンフィクションであるんです。その物語を私が書いているんですが、その物語に沿った名前をつけるということに挑戦しています。やっぱり、言葉はわるいですが、意味のない洋服があふれているなかで、どうやったら大事にできるかな?とか、どういう服ならクローゼットに迎えるのに納得がいくのかな?と考えたんです。私はお洋服の勉強はしたことがないので、どういう服を自分が大事にしているかなと思ったときに、思い出のある服、物語のある服っていうのが最終的に残っていくなと。それなら私もそういうものをのせたお洋服が作りたいと思いました。」

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【愛が漂うレースワンピース】

物語のある服を作りたい。その想いを、もう少し深くお話いただきました。

「ファストファッションという言葉があります。ファストファッションを全部否定するということはないんですが、私がお店を立ち上げるときは、捨ててもいい服が買われている、という風にしか見えなかったんですね。みんな同じような服を着ていて、みんなたくさん洋服を買うんだけど、いらなくなったら、どこかに売りに行く。でも、同じような服ばかりで売れないので、それをゴミ箱に捨てるという流れを見たりだとか、あとは、みんな大量に安い洋服を買うのに満足できてないというのを近くで見ていたので、それは意味のない服だなと思っていました。友人が引っ越しのタイミングとかで一気にゴミ袋に入れているのを見て、「お金をかけて買ったのに」「デートのときに着てたのに」とか、そういう想いがあったので、『こんな簡単に捨てちゃうんだ』と言ったら、『みんなそうだよ』ってなって。その子のことをどうこうというのはないんですが、これがいまの現状なんだなと痛感する出来事でした。」

20180928hidden04.jpg【すまし顔で聴くレースブラウス】

そして、【LEBECCA boutique】を立ち上げようと準備しているなか、ひとつの出会いがあり、その出会いをきっかけに【LEBECCA boutique】最初のアイテムが生まれました。

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 【私たちのワンピース】

『私たちのワンピース』という洋服を作りまして、これは私がイタリアに行ったときにたまたま仲良くなったブティックのおばあさんがいたんですが、最後、日本に帰るという挨拶に行ったんです。そのときに、『これ、持って帰っていいよ』って渡してもらった白い襟の青いヴィンテージのワンピースで、それをかたどって作りました。私は赤が好きで、ブランドのメインカラーも赤にするという構想もあったので、そのワンピースと色違いで赤を作りました。『私たちのワンピース』という名前にしたのは、私がブランドをつくるっていうお話をもらって決断してっていう出来事のそばにずっとそのワンピースがあったんです。だから、『そのワンピースをかたどっていいでか?』っておばあさんに連絡したら『私たちのワンピースだからもちろんいいよ』って返事をもらって、それで『私たちのワンピース』という名前をつけました。」

物語のある服を届けるブランド、【LEBECCA boutique】。洋服にそえられたストーリーは、事実をベースにしています。

「私、その場でストーリーを考えているわけじゃなくて、ネタ帳というか、日々あったこととかを書いているノートがあって、そこに物語の種になる部分があるんです。もう小さい頃からずっとためている紙のノートで、誰にも見せたことはありません。なぐり書きのようなものなので、今後も見せるつもりはないんです。そこには例えば、彼氏にふられたときのこととか、ルームシェアをはじめたときのこと、旅行に行った時のことなどが、単に「どこどこへ行きました」ということではなくて、「どういう景色のなかでどう感じました」とか、「どういう風に傷つきました」とか、そのときの心でしか書けないこと、想像では至れないところを細かく書くようにしていて。それを参考に物語を書いています。」

ちなみに、いま赤澤さんは全国をキャンピングカーでめぐり服を移動販売する、というプロジェクトも展開しています。  

「1ヶ月に1回、1週間くらい期間をとって3県くらいずつ回っているんですけど、これは私ひとりのプロジェクトではありません。【EVERY DENIM】という兄弟でやっているデニムのブランドがありまして、その兄弟の運転する車のうしろに私が乗り込んで、という形で全国を回ってます。衣食住のすべてにかかわる生産者の方に会う旅でもあるので、販売会の時間以外は、生産者さんに会っているんです。農家さんだったり、漁業関係の方だったり、住環境だと家具を作っていたりとか、みんな自分の仕事にプライドがあって愛情がある。そういう熱量を持って帰れるのはとても気持ちがいいです。私はものづくりの背景にすごく興味があるので、今後全国を回らせていただくなかで、価値観があっていたり、見ている未来が一緒だったりという方と組んでものづくりができたらいいなと思っています。なので、私は今後もうひとつ、ブランドなのかレーベルなのか、自分でものづくりの環境を整えるつもりでいます。」

最後にうかがいました。赤澤えるさんがものづくりを通して発信したいのはどんなことでしょうか?20180928hidden06.jpg

「一点一点、ものには愛とか、熱量とかがこもっているものばかりだと思うんです。それは衣食住のいろんなところにあると思っていて、私はそういうものに気づける人でいたいと思っています。私は気づいて、そこから愛情を受け取って、という形で生活しているので、その愛情を服に還元できたらいいなと考えているんです。私の服を着てくれている人は、ものを大切にできる人だったり、これからものを大切にしていきたいと思っている人が大半を占めていると思うので、その大半が全部になるといいですし、増やしていきたいなと思います。私は『ファッションは内面の一番外側』という言葉を大事にして仕事をしています。なので、私たちが内面からものを出さないと外側は作れないですし、内面に愛情をそそいで磨いて重ねてっていうことを続けていくべきだなと、毎日思っています。」

LEBECCA boutique

https://lebecca-boutique.com