ご紹介したのは、ポルトガルのポルト大学・スポーツ学部の大学院で学ぶ学生で、サッカー ポルトガル1部のクラブ、ボアビスタの22歳以下のチームでアシスタントコーチを務める林舞輝さん。
イングランドの名門、マンチェスター・ユナイテッドを率いるジョゼ・モウリーニョ監督からも指導を受ける林舞輝さんにお話をうかがいました。
まずは、現在、林さんが通うポルトガルのポルト大学・スポーツ学部の大学院について教えていただきました。
「ポルトガルはすごく監督が有名な国なんですけど、ポルト大学の大学院は指導者養成学校みたいなところで、そこでスポーツコーチングとスポーツ科学を死ぬほど勉強させられています。それだけ名門って言われてるのはなんでだろうと思っていたんですけど、実際に入ってみて、これだけ勉強させられたらそれはすごい人が出てくるなと思いました。」
ポルトガルは、モウリーニョ監督をはじめ以前、ポルトでヨーロッパリーグを制したビラス・ボアスさんなど素晴らしい監督をたくさん出している国です。そして、林さんの通う大学院の卒業生には、モウリーニョ監督の右腕的な存在だったルイ・ファリアさんもいるそうです。そんなポルト大学で学ぶ林舞輝さん、ポルトガルの前は、イギリスにいらっしゃったそうです。
「その前はイギリスの大学にいたんです。こっちは大学の学部で、スポーツ科学をやってました。その大学の在学中にチャールトンFCっていうアカデミーでコーチをやり始めたんです。アンダー10とか子どもですが、将来のプレミアリーガーになるような子たちなのですごかったです。ほとんどイングランドのクラブチームは大学と提携していて、チャールトンFCもうちの大学と提携があったので、最初インターンみたいな感じで入って、そこからそのまま。」
林さんは、チャールトンで子ども達にコーチをして、そのあと今度は、ポルトガルに行くことを決意されました。ポルト大学で学び始めて1年ということですが、今はどんなことを感じているのか、聞いてみました。
「いかにすべてにおいて自分が知らないかということを思い知らされた1年でした。でも、それを全部やっておくと自分が知らないことが分かるので、監督になったときそこに専門家をおくようになるんです。モウリーニョはリスボン大学のスポーツ科学を出ているんですが、そうすると自分はスポーツ心理学について知らないから、チームにはカウンセラーや心理学者をおくべきだということや、栄養学が分からないなら、そこに栄養学のスペシャリストをおくべきだというのが分かるんです。だから強くなるのかなと。必要なところにちゃんと専門家をおくっていう、ドイツサッカー協会もそれをやっただけなんですよね。」
もうひとつ、聞いてみたかったのが、ジョゼ・モウリーニョ監督から指導を受けている、ということ。これは、どういうことなのでしょうか?
「リスボン大とポルトガルサッカー協会がやっている、毎年20人限定の監督養成講座みたいなのがあって、それに申し込んだら来ていいよって。その責任者と講師にモウリーニョがいて、他にもすごいんです。マンチェスターシティの分析チームのトップの人とか、ポルトガルで5位になったリオアベっていうチームの監督とか、そうそうたる人が講師で来てくれるんです。モウリーニョ自身が目の前で授業してくれるのは10月なんですけど、オンラインで講義をしたのがあるのでそれを見ています。モウリーニョは自分の試合の分析と質疑応答みたいな形で2つに分けてて、去年のはヨーロッパリーグ決勝のマンチェスター・ユナイテッドとアヤックスの授業でした。アヤックスをどう分析して、どんな動画を作って、どんなミーティングをして、とか。選手に見せた動画とかミーティングをまったく同じようにやってくれて、トレーニングは、この場面のこのためにこう練習して、試合中何を考えてて、結果どうだったか?はい、優勝、俺すごい!みたいな授業でしたけど。(笑)」
そんな林舞輝さんに、イングランド プレミアリーグのクラブ、アーセナルについてもコメントをいただきました。
「アーセナル、僕は好きですよ。好きっていうか、いさぎよいっていうか。分かりやすく言うと、モウリーニョとは逆ですよね。モウリーニョはスター・ウォーズでいうところの暗黒面、ダークサイドですよ。その点、ベンゲルは一度も落ちなかったです。普通あれだけ負けてたら落ちるんです。要は、魅力的なサッカーを捨てて勝負に徹するみたいな。だから、モウリーニョはサッカー界の暗黒面だと思っていて、逆にベンゲルはジェダイの鏡だと。」
最後に、2018 FIFAワールドカップ ロシア開催中、ということで、こんな質問をさせていただきました。サッカー、フットボールの魅力、どこにあると思いますか?
「草サッカーもワールドカップもチャンピオンズリーグも、ボールがひとつでゴールがふたつ、選手が11人で、その中で何をしてもいいというのは変わらなくて、そこが面白いところなんでしょうか。草サッカーで起きるようなことがチャンピオンズリーグの決勝で起きたりするじゃないですか。多分、一番人間味のあるスポーツなんじゃないかなと。誰もがミスをして、誰もが負ける。一生負けないチームがなくて、いいときがあって、悪いときがある。乗り越えられるときもあれば乗り越えられないこともあって、そんな感じですかね。」
サッカーに魅せられ、『指導者』というポジションで次の世代のサッカー界を担う存在である林舞輝さん。ポルトガルの地で、林さんの挑戦は続きます。