今回はスペイン代表のアンドレス・イニエスタも加入したJリーグ J1 ヴィッセル神戸。その寮母を務める 村野明子さんに注目。実は、村野さんはメジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手にも食のアドバイスをされました。そのHidden Story、教えていただきます!

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現在は、ヴィッセル神戸 育成センター『三木谷ハウス』の寮母として選手の健康を全面的にサポートする村野明子さんですが以前は、まったく違う仕事をされていました。

私はもともと食事をつくるという仕事は一度もしたことがなく、化粧品会社で化粧品を販売している美容部員だったんです。そのときに夫がコンサドーレ札幌でフロントの仕事をすることになり、選手たちがコンビニのお弁当ばかり食べていて、なかなか栄養バランスがとれていないことがわかったんです。これでは強くなれない、ということで、選手たちのために栄養バランスのとれたごはんを作ってほしい、と頼まれたのが、そもそものきっかけです。」

2003年から6シーズンにわたり、村野さんはコンサドーレの選手たちを食の面から支えました。 そして、2009年にはヴィッセル神戸 育成センターに、その立ち上げから参加。ユース世代の選手たちとの日々が始まりました。

「中学を卒業したばかりの15歳の男の子からトップチームのA契約になるまでの24歳くらいまでの選手たちが住む寮で、いまは43人くらい住んでいると思います。『きょうのごはん何かな』と選手たちに食事を楽しみにしてもらいたいのは第一なんですが、カラフルなごはんを食べることで食事のバランスはかなり整うので、目で見ても美味しそうだなというご飯をつくるようにしています。」

そんな仕事のなか、メジャーリーグ ロサンゼルス・エンゼルスに移籍した大谷翔平選手に関わる仕事が舞い込みました。村野さんはエンゼルスのキャンプ地、アメリカのアリゾナ州へ。

私がやらなければならないことは、20日間ほどある滞在期間の夕食の作り置きを作る、というのがメインの仕事だったので、スーパーに行ってお肉やお魚、冷凍できる野菜などを買って、コンドミニアムで冷凍できるように準備しておきました。肉はスペアリブを甘辛く炊いたものだったり、ポトフやカレー、酢豚とか、お魚は鮭やたらを白だしで炊いたり、そのときの野菜とあわせて作っておきました。私自身の滞在は3泊4日くらいの短い期間で、大谷選手がいるときは一緒に食事を作ったりしましたが、大谷選手がトレーニングしている間は買い物に行ったり料理をつくったりして、それをストックしたりその食べ方や調味料を書いて貼っておきました。たしか90~100食分くらい作ったと思うんですけど、作っているのは私ひとりです。」

90~100食も作り置き。すごい品数だと思いますが、大谷翔平選手から村野さんへ、何かリクエストはあったのでしょうか?

「あったといえば【オムライス】があったくらいで、『オムライスの作り方って簡単ですか?』っていうのを東京でお会いしたときに聞かれたので、『簡単ですよ。料理なんて、簡単に作ればいいですよ。』という感じで、オムライスは最後の日に一緒に作りました。簡単にできるということを大事にしたかったので、まずはケチャップと鶏ガラだしでチキンライスを作って、玉子は『オムレツみたいなやつをナイフで切って、ペロンとめくれるやつがいい』ということでしたので、私がいつもつくるやり方ではなかったので緊張しましたが、私が1つ作って、2つ大谷選手が作られました。包丁も、たまねぎのみじん切りとか鶏の胸肉を小さく切ったりというのがあって、本当はピッチャーの方は手をすごく大事にするのであれなんですけど、とても繊細な手つきで、器用な方なんだなという印象を受けました。ごはんは玄米ごはんでつくったので、基本9割が玄米、1割が白米というバランスで、厚手のお鍋で炊いていました。お鍋でごはんを炊ければどこでも炊けるので、お鍋でごはんを炊く練習をして、玄米のほうが食物繊維も多かったり疲労回復の効果が多いので、9対1の感じで作りました。」

大谷選手と一緒にオムライスを作った村野さん。さらに、大谷選手にこんなアドバイスも。

豚肉とたまねぎを一緒に食べるといいよとか、どこまで覚えているかは分かりませんが、どの部位を食べるといいとか話しながら作りました。豚ばらとか脂身が多いところよりも、お肉だったらタンパク質が多い、鶏の胸肉だったり豚ロースの脂身のないところがいいよ、ということを話しました。」

村野明子さんのメインのお仕事は、ヴィッセル神戸育成センター『三木谷ハウス』の寮母さん。ヴィッセルといえば、スペイン代表 アンドレス・イニエスタ選手が加入しました。村野さんがイニエスタ選手と接する機会はあるのでしょうか?

「選手たちが遠征の前に三木谷ハウスで食事をする、というシチュエーションがあるんですけど、みなさんバスで遠征先や空港に行くので、その前にきっと来る機会はあると思います。このあいだも日本にいらした次の日に来てくださって、ユースの選手たちと対面したんですが、とてもにこやかで気取る感じもなく、ユースたちは大喜びでした。寮の壁にサインも書いてくださって、とてもいい記念ですし、笑顔の素敵な方でした。」

ユースと交流したり、寮の壁に快くサインしたり。イニエスタ選手、素敵です。村野さん、イニエスタ選手に出そうと思っている料理はあるのでしょうか??

「最近、美味しいサバ缶を見つけたんですけど、そのサバ缶でパスタを作りたいです。スペインの方なので、きっと魚介もお好きだと思いますし、そのサバ缶、本当に美味しいので食べてくれるんじゃないかなと。それにサバ缶って脂質も低くてアスリートにもいいんです。『Ca Va?』という岩手のサバ缶なんですけど、あれにパスタをまぜて塩だけでも十分美味しいので。料理はそういう風に簡単にできると一番いいなと思います。」

料理をもっと簡単に、身近に。そして、カラフルなごはんで選手を元気で健康に。村野さんの想いは料理を通して、選手たちに届きます。