今回、注目するのは【恋する豚研究所】。『恋する豚』というブランドで、精肉・ベーコン・ハムなどを製造、販売。さらに、千葉県香取市にある【恋する豚研究所】には食堂もあって大人気となっています。どんな想いを込めて誕生したのか?そして、恋する豚とは? お話をうかがったのは、株式会社【恋する豚研究所】代表の飯田大輔さん。まずは、気になる【恋する豚研究所】という名前について、教えていただきました。

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「世の中にあるブランド豚というのは、何かを食べさせて何とか豚、というのが多いです。ただ、それをやっても面白くないなと思って、豚も恋すればおいしくなるんじゃないかなと。それで何となくつけちゃったんです。豚も恋するように、そんな感じで育てる。『研究所』というのは、『恋する豚』だけだとあまりにもふわっとしすぎるので、『研究所』とつければまじめに聞こえるかと、、、近所の方からは『研究所の方』って呼ばれてます。」

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『豚も恋するような育て方』。具体的には、どんな育て方なのでしょうか?

「<えさから自分たちで作る>というのがこだわりで、えさの原料に麹菌や乳酸菌を加えて発酵させたものを豚さんに食べさせる、ということをしています。そうすると、病気になりにくい健康な豚が育つんです。例えば、豚のえさの原料。みなさんコンビニでサンドイッチを買うと思いますが、あのサンドイッチは耳がないんです。その耳がサンドイッチの工場から毎日大量に出ますので、それを譲っていただいて、乳酸菌や枯草菌を入れて、おいしい発酵飼料を作っているんです。ゴミにならず、それがまた豚肉になる、という食品リサイクルになっているんです。」

さらに、えさ以外にもこんな工夫がほどこされています。

「豚を育てる過程で、お母さん豚から子どもが生まれてきます。その子豚は普通、大きさ別にわけられてしまうんですが、うちの農場は兄弟を離さずにひとつの小屋で育てるというやり方をしています。途中でクラス替えがあるとストレスなので、クラス替えをせずに育てているんです。」

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2012年に設立された【恋する豚研究所】。実は、ある大切な想いを込めて誕生した会社です。パッケージにも書かれていない、その理由。設立にいたるきっかけは、どんなことだったのでしょうか?代表の飯田大輔さんにうかがいました。

「私はもともと社会福祉の仕事をしていましたので、障害のある方の働く場所に興味があったんです。今から15年ほど前に、障害のある人が1ヶ月働いてお給料が1万円くらいしかもらえない、という事実を知りまして、月給10万円を払えるような仕組みを自分たちの持っている仕事で作れないかなということで始めたんです。2003年くらいにクロネコヤマトの小倉昌男さんが『福祉を変える経営』という本を出されて、それを読んだのがきっかけ。その本を知ったのは、J-WAVEさんのJAM THE WORLDを聞いたからなんです。そこに小倉さんが出られていて、『障害者が月給1万円はおかしいだろう』とお話されているのを聞いて、初めて知りました。」

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飯田さんのおじさんがおこなっていた『養豚』の仕事のなかに、『障害のある方も参加してもらえる仕組み』をつくることはできないか?そんな想いから、【恋する豚研究所】のアイディアが生まれました。今は、30人ほど障害のある方が勤務。平均で月給8万円、目標だった10万円をこえる方も数名いらっしゃるそうです。そして、こんな素敵なつながりも生まれています。

「障害のある方って人間関係が非常に狭くて、ネットワークが限られているという現状があります。例えば、スマホに入っているLINEの友達も、特別支援学校の先生と親と兄弟と友達ふたりくらい。だから、そういう方が会社に来て、いわゆる健常者とのネットワークができるというか、心地よく働ける環境にはなっているかもしれません。そういう人間関係、社会に参加するための人間関係を作っていくのも職場の役割かなと思っています。もちろん人間関係なので、とても楽しいときも嫌なときもあると思うんですけど、恋も切ないときもあるし。(笑)そういう両側面はあるかなと思ってやっています。」

飯田大輔さんに、最後にうかがいました。【恋する豚研究所】が目指すのは、どんな未来でしょうか?

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「我々、入り口が社会福祉の事業から始まっていますので、自分の生活圏、半径5キロくらいのところしか見れませんが、その自分の生活圏で理不尽な理由でつらい想いをするというか、生活しづらさを感じることがないような地域社会をどうやったら作っていけるか。そういうことに挑戦したと思い、日々、実践しています。なかなか全部自分たちだけではできないので、いろんな人とネットワークを作りながら、そういう挑戦を続けていきたいなと思っています。」

自分の生活圏で、理不尽な理由によってつらい想いをする人、暮らしづらさを感じる人がいないような、そんな地域社会をつくりたい。千葉県香取市にある【恋する豚研究所】。ローカルヒーロー、飯田大輔さんの挑戦は続きます。

【恋する豚研究所】WEBサイト