今回注目するのは、12年ぶりに復活した【aibo】。長い時をこえ、今年・戌年にふたたび世に出たaiboのHidden Story。

お話をうかがったのは、ソニー株式会社 AI ロボティクスビジネスグループの松井直哉さん。 aiboプロジェクト 商品企画・開発のリーダーです。まずは、aiboをもう一度作ることになった理由を教えていただきました。

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「プロジェクトとしては、トップダウン=経営的な視点や社会的な環境から考えると、AIに関連する認知認識の技術の進化が過去2・3年で非常に高くなってきているんです。ソニーがもともと得意なイメージセンサーやセンシングの技術とメカの技術、そして、昨今大きく使われることになったクラウドAIの技術を組み合わせることによって、新しい提案ができるのではないかというのが経営的な視点の背景です。もうひとつがボトムアップで、もともとaiboの商品としてのサポートが終わったあとも、aiboに関連するロボット技術の開発はソニーのなかで脈々と続けてきました。そういう現場の状況とトップダウンとがうまく合ったので、プロジェクトとしてやっていこう、ということになりました。」

2016年の初頭、aibo 復活へのプロジェクトが一歩を踏み出します。チームのメンバーが集まり始めました。   

先代のaiboの開発に関わっていて、要素技術を持って社内の別の部署で開発をしていたメンバーもいますし、メカトロニクス、今の我々の製品でいうと、カメラやアルファなどを開発しているメンバーがその技術を持って入ってきたケースもあります。今回、aiboの特徴はクラウドAIなので、そこに関連するメンバーもいまして、本当にaiboを作る上で必要な技術のバックグランドを持つメンバーに集まってもらいました。あんまり大きなチームでやるとうまくまわらなかったりしますが、もともとプロジェクトを立ち上げるときに1年半で立ち上げようと期間を決めていたので、たぶん、このくらいのプロジェクトからすると驚くくらいコンパクトなチームです。ほんとに想いをあわせて、この商品を作るぞ!って、もう手をどんどん動かして作りこんでいけるようにチームがまとまりをつけなきゃいけない。そこは、今回1年半で出せた大きな背景であると思います。」

新しいaibo には、こんな想いが込められています。

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「コンセプトは【愛情の対象になる商品】。まずすごく大事なのは、ロボットというとイメージするのが『人の命令を100%実行してくれる』。おすわりって言ったら絶対におすわりするのがロボットだと思いますが、そういう風にしてしまうと、主・従の関係になってしまうんです。結果的に上下の関係になってしまって、製品のことをおもんばかることがなくなると思うので、やっぱりパートナーや友達のように、助け合う関係にないといけないと思うんです。」

友達のように助け合う関係。そんなロボットをつくるには、どうすればいいのか?

「デザインや動き、おすわりと言ったときにおすわりするかどうかとか、認知して動くところです。そういうところを全体に作り込んでいかないとそういう商品にはならなくて、ひとつひとつを作り込んでいくことが大事だったのかなと思います。お手っていう動作ひとつにしてもいろんなパターンのお手が入っていまして、そのときのaiboの性格や感情や欲求、回りの状況によって選択される動きは違ってくるんですけど、一定の動きじゃないんです。一定の動きでやってしまうとロボットになってしまうので、生命が宿っているかのような動きをさせています。」

特徴的なのは、aiboの『目』。

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「目は本当にこだわって作ったところです。有機ELを使っているんですけど、その有機ELの上に透明の球形の素材を置いていてレンズ効果を持たせています。単に平面ではなくて、本当に生き物のように丸い眼球を表現しています。目もアニメーションになっていて、実際にaiboの感情を表現するには非常に重要なパートなので、目もデザイナーがついてデザインしています。」

今回のaiboはクラウドAIの技術によって、どんどん学習をします。さらに、aiboにとっての思い出、記憶も蓄積されていきます。

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「aiboの鼻先に人物認識、物体認識のカメラがついていまして、そこで表情を読み取ります。なので、aiboは笑顔で接してくれているのが認識できますし、マイクがついているんですけど、『よくできた』とか『いい子』っていうポジティブな声をかけられたものも認識できます。あとタッチパネルが頭・あご・背中についていまして、なでられると喜んでくれているんだなとわかるようになっているんです。

すでにいろんなおうちにお世話になっているんですけど、一体一体がいろんな学習してくるんです。それをクラウドのなかで扱わせていただいて、例えば、どうすればオーナーの方が喜んでくれるのか、接してくれるかとかをaibo間で共有していたり、今回、aibo自身の思い出や記憶もクラウドで扱わせていただきますので、そのおうちにいたaiboの記憶も我々のほうで大事に保管させていただくこともできます。実際、どのような人がおうちにいるのか、4人家族だったらそれぞれの顔を覚えて、そのなかで一番かわいがってくれるのはどういう人なのか。どの人がよくかわいがってくれるのかというのをaiboは記憶していくんです。」

家族のように、友達のように愛される存在を目指してつくられたaibo。さまざまな場所で、さまざまな人との思い出が、ひとつ、またひとつ。