昨年12月にリリースしたベストアルバム『アンコール』はセールスが70万枚を越える大ヒット。今年2月からおこなったアリーナツアーは、30万人を動員しました。いま大人気となっているback number。これまでは、ちょっとうまくいかない恋、気が弱い男、もどかしさ、切なさ。そんなテーマの曲が多い印象でしたが、今回の新曲『瞬き』は、少し違います。

今週は、そのニューシングル『瞬き』のリリースを前に、ヴォーカル・ギター、そしてソングライティングを手がける清水依与吏さんにお話をうかがいました。

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映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の主題歌でもある『瞬き』。

この曲は歌い出しがいきなり【幸せとは】。

「これは、完全にメロディに呼ばれたものだと思います。メロディの運びとして次にくるサビへの導入なので、あまり意識せずに歌詞をつけていこうとしたんですけど、映画のこともありますし、よりパワフルなものにしようというのはテーマにあったので、【幸せとは】って出てきてしまって。最初、いやいやいや、と思ったんですけど(笑)何を言ってんだよみたいな。でも、実話を元にした映画ですし、恋愛の話でもあるし、ある意味、闘病の話でもあるし、なんか生き様を見せつけられたような気がするんですよね、この話から。だから、純粋にback numberとしての生き様を歌おうと。これまでは、好きだとかそういうことを言う時に、『~かもしれない』とか、『~だと思う』とか使ってきたんですけど、生き様を語る上で、表現を濁しちゃいけないと思って、なるべくそういう言葉は使わないというのは意識したと思います。」

清水依与吏さんは、映画の台本を読んだときこう思いました。 

「これは、back numberとしても清水依与吏としても、今まで得意ではないのは分かっているからこそ、絶対やらなきゃいけないし、やりたいし、だけどうまくできるかなということで、避けてきた、逃げてきたテーマが今まさに目の前に求められているって思いました。恋愛の曲って数こなしてきたので、何となくこういうものがグッとくる、自分としてもそういうポイントが分かっているというか、作りやすいんです。だけど、何曲かしかない恋愛以外の曲というか、そこでしっかり自分たちとして、これはいい作品だなと持って行ける自信が、これまでは正直なかったんだと思いますね。ちょっと、どうかなって思ったんですけど、今ならできると信じてお受けしました。」

シングル『瞬き』の2曲目に収録されているのは『ゆめなのであれば』。

主人公は、夢のなかで、恋をします。

「楽しい言葉が散りばめられてる、きれいな景色とか、そういうのがいいな。でも、たださわやかな曲にはしたくないなっていうのが漠然とあって、言葉をノートにワーって書いていって、パソコンでも書いて、ん~なんだろうな、と。そしたらキーワードが出てきて、あ、夢のなかで夢って気づいた人の歌ってあんまりないなと思ったんです。僕も『あ、これ夢だ。てことは今何もしてもいいんだ。』とか、だけどそのときに不安というか、『夢じゃなかったらどうしよう』と葛藤するときがあったので、それをそのまま歌えばいいやと。そこまで決まれば早いので、ワーっと書いていきました。」

清水依与吏さんの<作詞>にまつわるHidden Story。

使っているのは、ノート?

「ノートのときもあります。1曲の中でも、ノートで行き詰まったらパソコンで書いて、パソコンで行き詰まったら携帯で書いてというように、いろいろやりますね。飽きないようにやるというか。最後にまとめるのはパソコンが一番分かりやすいです。文書が打てるやつを9画面くらい開いて、箇条書き部門と、資料部門と、1、2、3って進化してきたのがあるので、それを比べながら書いて、『これ今、9まで来ているけど、5くらいのほうがちょうどよかったな。』とか、そういうのをやってバランスをとっていくというか。一回で書ききれる曲もあるんですけど、そうならない場合は平均で5~10回は書きますね。かっこ仮1とか、かっこ仮4とか、そういうのがいっぱいあるんです。」

清水さんにはひとつ、うかがいたいことがありました。以前、雑誌のインタビューで「恋をしているときは、曲をつくらない。恋が終わるころに曲ができる」というような発言をされていましたが、これは、本当なのでしょうか? 

「人生に夢中になっているときは、何も作らなくても別に生きていけると思うんですよね。でも、何か足りなかったり、このままじゃおさまりつかないよ、というときにたぶん歌わなきゃやってられなくなると思うんです。やっぱり、僕は特にそうなんですけど、必要なことしかできないと思っていて、歌う必要がなければ歌なんか別になくてもいいかなと思って。でも、自分にとっても、他のメンバーにとっても、バンドやらなきゃ生きていけないと思うんですよね。それを思い知るのが、やっぱり恋の終わりだったり、何か足りたいと明確に思うときに、歌をつくることでそれを埋めるというか。」