今回ご紹介するのは、海をきれいにする地域通貨、ビーチマネー。教えてくれたのは、ビーチマネー事務局の代表、堀直也さんです。まずは、ビーチマネーとはどんなものなのか、教えていただきました。

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「ビーチマネーというのは、そもそも『海をきれいにしよう』という活動なんです。普通はビーチクリーンといって、海でゴミ拾いをして終わり。でも、それではちょっと継続性というか、面白みがないということで、海に落ちているゴミのなかにガラスのかけらのビーチグラス、シーグラスというものがあるんですが、それをみなさんでおもしろ楽しく拾ってもらう。その時に一緒に普通のゴミも拾ってもらって、いま、加盟店が全国に150ほどあるんですが、ビーチグラスをそこに持っていくと、いろいろなサービスが受けられる、というユニークな活動です。」

堀さんがこの活動を始めたのは、2006年のこと。そのきっかけは・・・ 

「そのころ僕が会社員として勤めていた会社が、茅ヶ崎市にある洗剤メーカーのがんこ本舗という、ちょっと名前の変わった洗剤屋で、その会社が海から程近いところにあったんです。でも、僕を含めて会社のメンバーみんな、ものすごく仕事が忙しくて、海が近いのにもかかわらず、海に遊びに行けなくなってしまった。そのときに、うちの会社にたずねてくる取材の方とか、いろんな会社の知り合いに、『じゃあ、ついでだから、うちに来る前に海に行ってきて、と。そのときにゴミを拾って、ついでに僕らが集めているビーチグラスを持ってきたら、うちの商品を1割ディスカウントするよ』ってことで始めたのが最初なんです。」

当時、堀さんは会社勤めのかたわら、『エコサーファー・フリーマガジン』という海の環境やサーフィンにまつわるフリーマガジンを発行されていました。2007年、そのネットワークを使って、湘南地域の42店舗でビーチマネーの試みをスタートしたのです。

「実は当時は全部、30円・50円・200円、この3つのうちのどれかの割引で、このビーチグラスだったらこのくらいのおまけをしてください、と事務局のほうで決めていたんです。例えば、茶色と白はよく落ちているので、一辺の長さが3センチ以上の場合は、30円引き。青とか水色、緑、このあたりはちょっとレアなので50円引き。それ以外のオレンジとかピンク、紫、赤。このあたりはもうほとんど落ちてないのでかなりレア、ということで、200円引き。普通、地域通貨っていうと新たにカードを発行して、それを運用するという形をとりますけど、ゴミがそのまま通貨になるっていうのは、地域通貨を研究している大学の先生からみても、世界でも非常に珍しいパターンのようです。」

およそ10年前にビーチマネーを始めた堀直也さん。今は、伊豆の弓ケ浜で、『エコサーファー』という団体名のもと、ネイチャー・ガイドとして活動されています。

うちの体験のなかでとにかく人気なのは、『礒観察&シュノーケリング体験』という体験です。僕はとにかく大人も子どもも海を好きになって帰ってもらいたいんですね。海が好きになれば、海を泣かすようなこと、ゴミを捨てるようなことがなくなるんじゃないかなと思って、一生かけてこの仕事をやっていこうと思っているんです。礒観察で海の生き物に関心を持ってもらって、少しずつ深いところに入っていって、今度は魚をぷかぷか浮かびながらのぞく。もうありとあらゆる熱帯魚がいます。あと、みなさん喜ぶのは、僕はタコが隠れている穴をいっぱい知っているので、そこでタコをつかまえてみんなにペタペタくっつけると楽しいかなと。秋にはイワシの大群が湾に入ってくるので、体中をイワシの大群につつまれるとか、ラッキーだとそういう体験もできます。シュノーケルでもここまですごいのか!という世界が、この伊豆の南まで来れば結構あるんです。」

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海の素晴らしさを知れば、海をよごすようなことはしなくなる。堀さんは、ネイチャー・ガイドの仕事をしながら、ビーチマネーへの参加を呼びかけています。

「ごみのことに関して言えば、最近、ごみ拾いという活動が『ビーチクリーン』という名前で広がっています。ごみ拾いに参加しようという家族とかお子さん、教育の分野でも小学校でそういうことをやろうと非常に盛んになっているのでå、実際、どのくらい海がきれいになったかというと、そんなに変わりはないのかなと。つまり、やる人も増えているけど、ごみも増えているのかなという気がします。まだまだいろんなことをやっていかないと、『はいキレイになりました。はい解決しました。終わりです。』とはならないですね。」

ビーチマネー事務局の代表、堀直也さんに、最後にうかがいました。活動を通して伝えたいのは、どんなことですか?

「とにかく、海・川・山のなかで遊んで、『ウワー楽しいな!』と思っていただくことが、自然保護につながる一番インパクトのあるアクションだと僕は思っているので、みんなそういう風になっていってくれたらなと思っています。」

遊びの要素を取り入れて 海をきれいにするビーチマネーも、海の素晴らしさを伝えるネイチャー・ガイドも、その中心にあるのは、こんなメッセージです。

『楽しむことで、自然への想いを深めてほしい』

堀直也さんの挑戦は続きます。地域通貨ビーチマネー、堀さんがネイチャーガイドとして活動している団体エコサーファーについては公式ウェブサイトをご確認ください。

ビーチマネー

エコサーファー