フライドポテトの専門店『AND THE FRIET』。

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このお店を立ち上げたのは、それまで"食"の業界にいた人ではありませんでした。『AND THE FRIET』の代表、小野澤健次さんにお話をうかがいました。

「きっかけは、僕が前職で音楽のレーベルをやっていて、主に洋楽のダンスミュージックとかインディーズのエレクトロニクス系の音楽を扱っていたんですけど、その音楽の買い付けに よくヨーロッパ行ってたんです。特にアムステルダムには、そこで開催される"アムステルダム・ダンス・イベント"っていう、世界中のインディーズのダンスミュージックのレーベルやプロダクションの人が集まるコンベンションがあるんですけど、毎年参加していたのでよく行く機会がありました。アムステルダムの街中にはフリットコットと言われるような、フライドポテトの専門店がちょこちょこあったんです。そこで食べたポテトがおいしくて、それからずっと頭に残っていて。」

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KSRという音楽レーベルで代表を務めていた小野澤さん。ダンスミュージックを中心に、例えば、スティーヴ・アオキのファーストアルバムや、カスケード、ブラジルのガールズバンドCSSなどを日本のリスナーに届けてきました。『AND THE FRIET』のきっかけは、そんな音楽の買い付けで訪れたヨーロッパ。オランダ・アムステルダムの街で出会ったフライドポテトのお店でした。

「フリットコットやフリットスタンドと呼ばれるお店が、街角に点々とあるんですけど、ポテトと、あと10~15種類くらいあるソースの中から好きなものを選べるというスタイルで。お店ごとに自家製のマヨネーズをつくっていたりしてそれぞれ味が結構違って、『ポテトなのになんでこんなに味が違うんだろうな。』というのも興味があったんです。それで、日本に帰ってきてから『ポテトなのにどうやって味に変化をつけているんだろう?』とかそういうことを調べたりして。で、また翌年アムステルダムに行ったときに、帰りがけ、フライドポテトの発祥の地がベルギーで、ベルギーのブルージュというところにはフライドポテトの博物館があるということも知って。フリットミュージアムっていうんですけど、その博物館にも行ったりしました。」

ポテトに深くのめりこんでいった小野澤さん。一気にお店をつくる方向へ進んでいきます。メニューの検討が始まりました。最も重要だったのはやはり、じゃがいも。

「まず発祥の地であるベルギーの品種のポテトを出したいなと思って、そこの調査から始めたんですけど、ベルギーの生のじゃがいもは法律上輸入ができないんです。ビンチェ種っていうのがベルギーのフライドポテトでメインになっているもので、これを購入するのはどうしたらいいのかなと思って、食品EXPOみたいなところに行ってベルギーの業者さんと仲良くなって、そこからサンプルを取り寄せたり。あと、国内の農家さんにも知り合いがいなかったので、『danchu』という雑誌の編集をやっている方から紹介していただいて、フライドポテトの適正にあうじゃがいもを何種類か用意したりしました。国内のものだと僕らが加工して出すんですが、ただカットして揚げるだけだとフライドポテトの食感がでないんです。だから、一回低温の油で揚げて、一度それを冷凍して、また揚げる。そうするとまわりはカリッとして中はほくほくした食感にできるんですけど、その辺の研究して、それにあうようなカットができるカットマシンも刃型業者さんと一緒に開発したり。」

『AND THE FRIET』が広尾の商店街にオープンしたのは2013年の12月。

反応がすごくて、ここの商店街でいうと、3軒となりまではオープン前に行列ができて。僕らのこだわりは、絶対、揚げたてのおいもを食べていただく、ということです。揚げたてのポテトを食べられるお店というのはありそうであまりなくて、注文をいただいてから揚げて出すんですけど、そうすると相当待たせちゃうんですね。でも、たくさん揚げておいてそれを出せばいいのか、というとそれはこだわりと違う。あと、想定の10倍くらいのお客さんに来ていただいたので、ベルギーから入れてきたポテトが2週間でなくなっちゃったんです。それから、ディップソースもお店でつくって出していたんですけど、これも追いつかなくて。僕もディップ作りをしましたし、店終わって朝までディップつくってオープンして、また店終わって徹夜で、というような、しばらく眠れない日々が続きました。」

揚げたて、にこだわる『AND THE FRIET』。あなたが選んだポテトを、その場で揚げていただけます。

「いま提供しているのは、1種類のポテトが入っているフラワーっていう形と、2種類のポテトが入っているボックスという2つの形で、そのどちらかをまず選んでいただきます。それから、6種類のポテトがあるので、その中から、フラワーだったら1種類、ボックスだったら2種類のポテトを選んでいただく。そのあとでディップが10種類あるので一つ選んでいただきます。やっぱり、まずはベルギーのビンチェ種を食べていただきたいです。あと、季節ごとに国産のポテトは旬のものを提供していますので、できれば食べ比べて、味の違いも感じていただけたらと思います。」

オープン直後のお店に、早速、お客さん。朝のひんやりした空気のなか、あつあつのポテトから湯気があがります。代表の小野澤健次さんは、最後にこんなことを話してくれました。

「もともとインディーズレーベルの人間なので、やはりこだわって好きなものを好きな人たちに、という、そういう血が流れ続けているところがあるんです。自分も専門店が好きで、アナログのレコードを買っているときも、レコード屋さんは、ハウス店とかテクノ店、ヒップホップ店やドラムンベース店とかすごく細分化されて、その品揃えが深くて面白い。だからそのお店に毎回行っちゃうってところがありました。なので、ポテトのお店としていろんなポテトが食べられて、ポテトを深くほってるお店をやりたいというのは、音楽からの延長でもあるのかなと思います。」

音楽レーベルを運営されていたときも、フライドポテトにたずさわるようになってからも、小野澤さんの胸には、同じ想いがあります。『本当にそれが好きな人に、にやっとしてもらえるようなものを届けたい。』『AND THE FRIET』はきょうも自慢のおいもと一緒に、あなたを待っています。

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  • AND THE FRIET 広尾店

住所:東京都渋谷区広尾5-16-1 北村60館1F

電話番号:03-6409-6916

営業時間:午前11時~午後9時(土日祝は午前10時~午後9時)

定休日:不定休