
今年で創業から151年目。光浦醸造は山口県で、味噌や醤油をまっすぐに作ってきました。そんな会社が手がける"レモンティー"。よく見かける"レモン風味の紅茶"ではありません。実際にレモンがついてくるのです。ティーバッグの包みを開けると紅茶とともに、乾燥したレモンの輪切りが入っています。どんなきっかけで、この商品が生まれたのか?光浦醸造の若き8代目、光浦健太郎さんにうかがいました。

「ずっと味噌と醤油を作ってきて、これはもう出来上がったものだなというのは感じていました。味噌や醤油で新しい商品を作っていくのはすごく無理があるというか、まったく新しい柱を立てたいなというのは昔からあったんです。それとは別に、乾燥機をつくっている会社の代表をしている友達がいまして、その友達と一緒に何か新しいものを作りたいね、という話になりました。そこでその乾燥機を使ってできるもの、というのでレモンティーを思いついて作ったんです。もともとタバコの葉っぱを乾燥させる機械をメインに作っている会社だったんですけど、食品のほうも力を入れていきたいというのは聞いていて、味噌とか醤油を乾燥させてもあまり面白みがないので、まったく離れたものをやってみようということになりまして。レモンを乾燥させて紅茶とセットにするフロートレモンティーという商品を作りました。」
タバコや椎茸を乾燥させる機械を作る友人と一緒に、その乾燥機を使った商品開発が始まりました。実は、レモンの前にいくつかの試行錯誤がありました。
「山口県の柑橘で『長門ゆずきち』という、すだちの仲間の柑橘がありまして、それを輪切りにして乾燥させて"乾燥ゆずきち"という名前で販売しました。でも、やはりただ輪切り乾燥の柑橘だけを販売しても『面白いね』と言われるだけで、まったく売れなかったかなと思います。」
柑橘類を乾燥させるだけでは、まったく売れない。そこで思いついたのが、レモンと紅茶をセットで販売する"レモンティー"だったのです。紅茶は、国産の茶葉を取り寄せて、乾燥レモンとあうものを厳選。レモンは、おとなり広島県のものを選びました。最大の難関は、レモンを乾燥させることでした。
「作る度に温度と湿度の調整です。段階をふんで、何時間をこの温度と湿度、何時間をこの温度と湿度、というふうにテストをしました。あと、普通に乾燥させると真っ黒になってしまったり、あれだけ薄い柑橘だと反ってしまったりだとかいろいろ問題が起きますので、ひとつひとつ時間をかけて解消していったというところです。
一応2~3ミリくらいで切ったものを乾燥させるんですけど、もちろん最初のころは一枚ずつ包丁で切っていました。ほんとに徹夜で切っていたというか、スライサーを買うお金もないので、基本的に僕がやってました。おかげで包丁を使うのがすごく上手になりました。」
この"フロートレモンティー"。実は、レモンがハートの形をしたものがあって、これが大人気となっています。商品名は、『レモンハート』。ハートの形の乾燥レモンが紅茶についてくるこの『レモンハート』はティーカップにハートの形のレモンが浮かびます。大人気となっているこの商品は、ある偶然から生まれました。
「以前、地方の新聞で"ハートの形のレモンがある"というのを見たことがありまして、これを見た時に『これはうちのための商品だな』と思ったくらい、ぜひ商品化したいと思って、ほんとにその場でJAに電話をして『ぜひ使いたい』ということでお願いをしました。もともとハートの筒に入れてレモンを育てているので、レモン自体が最初からハートの形をしているレモンになります。広島の瀬戸田という地域のレモンで、もともと作られていたようです。ハート形のレモンというのは輪切りにするとすごく見栄えがいいんですけど、レモンの形だけだとなかなか売りにくかったところがあったらしくて。でも、うちのように輪切りにして商品化することによってハート型のレモン自体も需要が伸びているようです。ほんとに切らないと変な形のレモンだなとしか思えないので。」
『レモンハート』は、3種類の紅茶を使っていて奈良県の月ヶ瀬の紅茶を使ったものは、白いパッケージ。島根県の出雲の紅茶は、赤いパッケージ。紅白のセットにすると、結婚式にぴったりです。さらに、宮崎県の五ヶ瀬の紅茶は緑のパッケージで赤い箱と組み合わせると、クリスマス・カラーになります。『レモンハート』は、販売するたびに即完売するヒット商品となりました。味噌、醤油を製造・販売してきた光浦醸造の若き8代目、光浦健太郎さんは、いま、どんなことを考えてらっしゃるのでしょうか?
「味噌と醤油は出来上がったもの、というのが僕のなかにありまして、美味しいお味噌やお醤油を作り続けていくということを大前提にしています。なので、その味噌を使ったヒット商品を考えて"何とか用の味噌"とか"何とかにつける醤油"ということで開発をするんじゃなくて、ただ、味噌汁にして美味しいお味噌、かけ醤油として美味しい醤油を突き詰めて作っていくことが大事かなと思っています。ただ、需要はどんどん落ちていきますので、その部分を伸ばして会社を成長させるのではなく、そこは文化を守る部分として残していきつつ、レモンティーのような新しい事業でしっかり規模を大きくして地元の雇用を生んでいきたいと思っています。」
健太郎さんが光浦醸造を引き継いだころは、会社で働く人は6人。いまは、30人弱にまで規模が拡大しました。まっすぐに作る味噌・醤油と、アイディアをひねったレモンティー。創業から151年目の醸造所で、長い歴史と今の空気がとけあっています。
カップにハートのレモンが浮かぶレモンハート。大人気のため販売期間が限定されています。詳しくは光浦醸造のウェブサイトをご確認ください。
