フランス・パリで創業30年の熟成肉専門ビストロ『ル・セヴェロ』。パリの美食家たちをうならせる名店がこの4月、日本にやってきました。こちらのエグゼクティブ・シェフは柳瀬充さん。2006年にフランスへ渡り、柳瀬さんが最初に門を叩いたのは、パリの『ラ・メゾン・クルティーヌ』。そして、このお店のすぐ近くにあったのが『ル・セヴェロ』でした。

「パリに行ってから初めて行ったレストランがセヴェロでしたかね。一緒に働いていた人が紹介してくれました。その人もセヴェロで肉を学んでいて、『すごくいいところがある』というのを聞いて、食べに行って感動して。たまにレストランっぽいレストランも行くんですけど、お金を出して食べるならこういうほうがいいなと感じていました。豪快さと肉のうまみが、ほかの肉とはまったく概念が違うというか、感動があるおいしさというか、そういったものを食べたことがなかったので、そのシンプルさでそこまで感動が味わえるというのは自分にとって衝撃でした。」
柳瀬さんは、他のレストランで働きながらも、空いている時間を利用してセヴェロのオーナー、ウィリアム・ベルネさんから "肉"について学びます。
「パリで熟成肉というのはあんまりなくて、そういう言葉もほとんどないんです。でも、セヴェロではそういう単純なものを本気でやっているというか、そういうスタイルが好きでした。もともと、彼がジュラという田舎にある牛飼いの家で育ったので、牛のことをよく知っていて。そのあと肉屋になって、自分で店を始めて。」
パリの肉の達人から伝授された熟成の技。東京・西麻布で、もうひとりの達人・柳瀬シェフが日本の肉を熟成させます。

「熟成庫で湿度や温度を調整したり、風を当てながらいい環境で寝かせる。肉によって熟成のさせ方や風のあて方を変えたり、その期間も結構幅があるので、それを見極める目も重要です。そういうのは人の五感ではかるものなので、触ってみたり匂いをかいで、どこまで進んでいるのかを判断します。肉自体の菌を使って肉に菌を与えて、肉のなかでいい循環をさせるというか。熟成は肉のなかでおこなわれるので、環境はすごく大事です。(難しくても)簡単な仕事なら僕はやらないです。」
パリで腕を磨いたシェフが熟成させた肉。これをどんな風に提供されているのか?ランチタイムにうかがった取材スタッフがいただいたのは『ステーク アッシェ ~粗挽き熟成牛200gをレアに焼き上げた一皿~』。
「熟成したハラミとかランプ肉を粗挽きにして、塩こしょうだけで味付けて形どって焼いただけなんですけど、それだけでも熟成感というのは味わえると思います。塩こしょうだけというのも、本来の味がちゃんと分かるようにということなんです。分厚い肉なので火の通し方にも気をつかっていて、表面はかりかりに焼けていて中がレアであたたかい。基本的にフライパンが一番繊細な火入れができるので、うちはフライパンしか使いません。薄い鉄板だとちゃんとした火入れができないんです。どこかだけがこげてしまうことがないように、ちゃんと厚手の特殊なフライパンを使ってます。ソースはまったく使いません。熟成によって与えられた味というのが、ソースの代りというか複雑味を与えるので、ソースはいらないんです。」
味付けは、塩こしょうのみ。ソースはありません。でも、だからこそ、熟成肉の味を存分に楽しめるのです。ランチのメインプレートはパリ・スタイルで、こうした肉料理とポムフリット、つまりフライドポテトが付いてきます。このポテトも絶品です。

「北海道の友人が作っている、ホッカイコガネというジャガイモがありまして、採ったジャガイモを雪室という、湿度98%、気温1度の環境で2年間寝かせているんです。そこにジャガイモを置いておくことで、デンプンがちゃんと糖分に変わっていく。自分としてはフランスよりいいものだと思っています。2度揚げしていて、最初140度でゆっくり揚げて火を通してから、180度で揚げています。その油もサラダ油に牛脂をまぜて肉にあいやすいようにしていて、シンプルだからこそこだわっているんです。」
『ル・セヴェロ』のエグゼクティブシェフ、柳瀬充さん。最後にこんなことを語ってくれました。
「おいしい肉をめいっぱい食べたいときに来ていただきたいです。僕もフランスにいたとき、最初はほんとにお金がなかったんですけど、そのお肉を食べるために働きたい、というくらいの感動があったんです。そういう至福のときを感じていただきたいと思いますね。」
パリでの修業時代、日本の青年が『この肉をたべるために働きたい』と思った熟成肉。非常に難しい熟成の技術と、肉への完璧な火入れ。ソースなしでシンプルな見た目に反し、複雑で豊かな肉の味。その感動が、東京で味わえます。
達人の技術が光る!『ル・セヴェロ』の熟成肉、ぜひ堪能してください!

- 『ル・セヴェロ・ジャポン』
- 住所:東京都港区西麻布4-2-15 水野ビル1・2階
- アクセス:東京メトロ日比谷線 六本木駅・広尾駅から徒歩10分
- 電話番号:03-6427-1384
- 営業時間:月曜日~土曜日
- ランチ・・・12:00~15:00(L.O14:00)
- ディナー・・・18:00~23:30(L.O22:00)
- 日曜日・祝日は定休日
メインダイニングは2階ですが、エレベーターがありません。詳しくはお店にお問い合わせください。