さまざまな街に残る歴史的な建造物。主に戦前の建物をリノベーションしてレストランやホテルにし、地域の活性化につなげるプロジェクト"NIPPONIA"。今回は、この"NIPPONIA"を手がけるバリューマネジメント株式会社の チョウ・テヨンさんにお話をうかがいました。まずは、プロジェクトのきっかけについて教えていただきました。

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「地域創生、地域再生という形で取り組まれている企業さんがたくさんあるなかで、多くはイベント事業で集客をする、一発ドーンと花火をあげていくのも素敵なことです。しかし一方で私たちは、365日中長期的、長期的にそこに人が集う仕組み、仕掛けを作っていきたい、というのがそもそもの発想です。その中で、日本全国には、統計のとりかたによって変わるんですが、およそ30万カ所の古民家が残っているというデータがあります。それならその古民家、もしくは歴史的建造物をRe活用して観光地化することによって、集客をはかって地域創生につなげていけないか、というのが始まりです。」

2013年、"NIPPONIA"が最初に取り組んだのは、『天空の城』としても知られる『竹田城』がある町の建物でした。

「一番最初に私たちが手がけさせていただいたのが、兵庫県朝来市にあります、竹田城下町ホテルENという施設です。こちらは日本のマチュピチュ・天空の城と呼ばれている、雲海で有名な竹田城のふもとに、400年続く酒蔵・酒造所があります。それを朝来市がリノベーションすることによって、ここでオーベルジュ、いわゆる宿泊施設を含めた複合商業施設を運営したいということで、私どもにお話をいただきました。」

これに続いて、兵庫県豊岡市で銀行などとして使われていた建物を、オーベルジュにリノベーション。その後着手したのが、同じく兵庫県の篠山市。今度は、城下町全体をホテルに見立てよう、というプロジェクトでした。

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「スペインやポルトガルにはもともと歴史的建造物を使ったホテルや飲食施設を国営として運営している"ゴザーラ""パラドール"といった仕組みがあるんです。それを日本でもできないかなという発想がそもそもにあります。ただ、ヨーロッパですとかボルトガルの施設と日本の施設が大きく異なることは、日本の建造物はとても小さいことが多く、ひとつの施設で何か事業をやろうと思っても、なかなか事業採算性というところでは難しくなります。それなら、町全体をひとつのホテルとして見立てて、その町のなかに残っている古民家を、それぞれ宿泊施設や飲食店、物販にリノベーションすることによって、その町全体をホテルとして楽しんでいただこう。そして、ただ単に飲食や物販や宿泊を楽しむだけでなく、その町の方と触れ合い、コンタクトをとってもらうことで、一日だけその町の住人になってほしいな、ということで。」

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バリューマネジメント株式会社と、地域づくりの活動をする一般社団法人 ノオト。この両者によって、篠山城下町ホテルNIPPONIAが動き始めました。町に残るいくつかの古民家をリノベーションし、そこを宿泊棟として運営。例えば・・・

「代表的に『ONAE棟』というのがひとつあります。実は私どものNIPPONIAの棟名は、すべて菊の名前をつけさせていただいていて、ONAE棟はそのなかからおなえ菊の名前を使った棟名です。

お越しいただいてからの流れを申しますと、お客さまにはまず、ONAE棟に来ていただいてチェックインの手続きをしていただきます。その後、町を散策しながら宿泊棟に向かっていただく、もしくは私どものスタッフが送迎をさせていただいてお部屋にご案内。そして夕食時、朝食時にはスタッフが送迎車でお迎えにあがって、お食事のあとはまたお見送りさせていただきます。」

丹波篠山。実は、食材がとても豊富な地域です。

「例えば、篠山は冬場のイノシシが有名ですし、篠山だけでなく地元丹波の食材、黒豆だったり新鮮なお野菜。丹波篠山はとかく松茸が有名ですし、地元でとれるシメジなんかも大ぶりで甘みがあってコクもありますので、みなさんから人気もいただいています。そしてちょっと足をのばすと日本海の丹後エリアがありますので、そちらの新鮮な魚介類を仕入れさせていただいて。」

古民家を再生するよりも、新しい建物をつくるほうが、コスト的にも、工法的にも簡単でした。しかし、あえて古い建物を利用することにした、その理由とは?

「本音を言いますと、ゼロから建物をたてるよりも費用がかかっておりますし、もう今同じものを作れる職人さんがいないんです。とはいえ、私どものリノベーション・コンセプトは、『その建物が一番輝いていた時代に戻す』というものなので、ビカビカに現代風にアレンジするのではなくて、例えば扉のすきまはそのまま残しています。ちょっとしたすきま風も感じていただきたいですし、あえて防音をしていませんので、町で繰り広げられている会話が聞こえてきたり、雨音が聞こえてきたり、そういった町の自然の音も楽しんでいただきたいなぁと。みなさまに日本の古き良きを今一度、再認識・再確認いただきたいなと思いますし、何か今の現代の日本に失われかけたものを、我々のNIPPONIAの各地域で取り戻していただけたらなと思います。」

古き良き日本をもう一度、感じてほしい。そんな願いを込めた"篠山城下町ホテルNIPPONIA"。豊かな山と田園と城下町。丹波篠山は、まもなく実りの秋を迎えます。"NIPPONIA"は現在、兵庫県に5つのホテルがあります。日本の魅力たっぷりの古民家に美味しいお食事。私たちのルーツを感じに、ぜひ訪れてみてください!http://nipponiastay.jp