『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』

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ap bank fes の前にあるReborn-Art Festivalとは、2017年に宮城県の石巻・牡鹿半島で、およそ50日間に渡って計画されている音楽・食・アートの総合的なフェスティバルです。まずは、このフェスのお話から中心になってプロジェクトを進める小林武史さんにうかがいました。

「ap bank fesは2012年の開催が最後になっているんですが、Bank Bandやap bank fesで得たお金を僕らとしてどう使っていくのか、ということにもっとエネルギーを使いたいと思っていました。僕としてはそれとちょうどクロスするような形で、総合祭的なReborn-Art Festivalにバトンが渡っていった形なんです。音楽祭って、ap bank fesも3日間じゃないですか。僕らの場合は静岡県の掛川市がメインでしたが、今までやってきたのは、ちょっと地域にお邪魔する。それに比べてアートを中心にしたものになると長期間に渡るものになるし、もしかしたら常設展とか常設のカフェやレストランもアートと連動して作ることができるかもしれない。そうすると期間外でもそこに人が訪れて交流をはかることができるかもしれない、というのもありました。」

新しい形のフェスティバルを東北の被災地でひらこうと決めたのはこんな想いからでした。

「大きな力で企業が石巻に入って雇用が戻るとか増える。そういった経済の力も大切だと思っていましたが、何か石巻の中から、被災地の中から出てくる力が必要なんじゃないかなと思っていました。そのとき、新潟の大地の芸術祭に去年参加させてもらったんですけど、"過疎"がテーマになっていて。過疎のなかに取り残された集落、そのなかに美しさや人の命やつながりがある、というのを気づかせてくれるような。そこに世界のアーティストが関わっている。新潟の大地の芸術祭は、地元のおばあちゃんが作品を紹介してくれたりするんです。美術の専門家ではないんですが、自分たちの作品だと思って一生懸命説明する、そういう循環が伝わってくるんですよね。まずは地元の人がいる、ってところから始まるものでありたいな、あるべきだなと思うんです。」

石巻の人と一緒にアートを届けること。牡鹿半島の人と一緒に音楽を届けること。小林武史さんは、こう続けます。

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「現代アートは、グループで行ってもみんなでイエーって盛り上がるというよりは、自分と向き合ったり、自分の想いが全然違う世界のことに想いをはせてつながったり、それが重要だという気がするんです。福島の事故とかを含めた震災があって、未来をみんながそれぞれ自分の未来だと思って考えていく、とらえていくということが僕はすごく必要だと思っていて、そういう時間、空間、場所があったほうがいいような気がするんです。フェスをやるような大きさでない音楽もいろんなところにあったり、僕はマスの音楽を手がけてきたっていう自覚もあるんですが、音楽の持っている素晴らしさとか多様な部分っていうのは、そんな大きな集客じゃなくてもいろんな伝え方があるんじゃないかなと思って。ミュージシャンとしてもそういう場作りには興味があります。そういう音楽があってもいいんだよね、ほんとは。がっちりプロデュースされて、ドカーンみたなものだけじゃなくて。」

来年、50日規模で開催されるReborn-Art Festivalのプレイベントとしてap bank fesが帰ってきます。題して、『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』小林武史さん、櫻井和寿さんを中心にしたBank Bandのほか、ウカスカジー・Salyu・クリープハイプ・Cocco・スガシカオ・WANIM・赤い公園・ハナレグミ・Yen Town Bandなど、多彩な顔ぶれによるライヴ。 さらに、石巻・牡鹿半島の歴史や文化、豊かな自然を感じる体験型のツアー"Reborn-Art Tour"も予定されています。

「漁師体験とかちょっとした楽器を作ることとか、ワークショップっていう形でそういう人たちと触れ合っていただくこともしようと思っています。

牡鹿半島の浜の人たちは、主に漁業だけど自然と向き合って暮らしてきている人が多いので、すごく面白いです。もともとすごくクリエイティブ、天候の読み方、海と向き合っていることや"魚"というすごく多様な命と向き合っていたり、自然からすごく学んでいる人たち。大都市の人工的なものって、ピカピカしていて刺激はあるかもしれないけれど、そういうのにあんまり反応しなくなっている人も増えているかもしれないし、光が当たるところばかりじゃない、陰になりやすいようなところに物の量感っていうのはあるなって前々から思ってはいたので。

分かりやすい大きなものはついていきやすい、依存しやすいかもしれないけど、もっといろんな多様な命が反応したり呼応したりすることが強さにつながってくると思うんです。」

今年のフェスティバルは、7月29日の前夜祭に続いて7月30日と31日に予定されています。7月31日は、石巻の伝統的なお祭り、鎮魂の想いも込めておこなわれる『川開き祭り』の 前夜祭の日。

「最近思うのは、2011年の3月11日からいろいろ大変だったけど、そこからポジティブに向かうカーブをたどっている、ということではないんだなと。いろんな人や学校や地域や会社や暮らし方のなかで、どんな時間のなかにもそういう過去と未来をつなぐことを僕らはたどって生きていると思うんです。だけどこれは石巻エリアだけじゃないですが、僕はミュージシャンなので、ポーズボタンというか、無音に近いような、何かが途切れてしまうようなことがあのエリアでは起こったんだな、ということを感じるんです。ただ、それが悲しいことという風には僕はとらえたくないというか。

ああいう震災があったからこそ、生きるということのためにいろんな形で出会っていく。人が、想いが、文化が、いろんな形で出会っていくといいなと思っています。そうやって"生きる"ということをもう1回未来のために考え直したり、取り戻したり、そういう意味がReborn Artという言葉には含まれていると思うんです。"Reborn"自体は"何度も何度も生まれていく"っていう、それが生きるっていうことなんだろうと思うし。Artっていうのはもともとラテン語で術(わざ)っていう意味があるらしくて、生きる術とか、生きることですよね。それをみんなでまつって、感じていこうよっていう、そんな場になるといいなと思ってるんですよ。」

Artの語源は、ラテン語で『術(わざ)』。Reborn Art、それはすなわち、再生する術、何度も生まれる術、生きる術。傷ついた町で、傷ついた半島で、人が、想いが、文化が、いろんな形で出会っていく。もっとやわらかで、もっとしなやかで、もっと強くなるために。

Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016

2016年7月29日(金)前夜祭・30日(土)・31日(日)

宮城県 石巻港 雲雀野地区

出演アーティストやチケットの詳細、来年開催される『Reborn-Art Festival 2017』についての情報は公式ウェブサイトでご確認ください。

Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016

Reborn-Art Festival 2017