見た目は、小さなマッチ箱。中から1本取り出して、マッチをするように火をつけます。マッチの棒の部分がお香になっていて、そこに火がうつりやわらかな香りが10分間ただよいます。これは兵庫県揖保郡にある、神戸マッチ株式会社と同じく兵庫県の淡路島にあるお香の会社、大発が共同で開発した新しい形のお香、"hibi"です。神戸マッチの代表取締役、嵯峨山真史さんにそもそものきっかけを教えていただきました。

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「昔は全国にマッチ会社がたくさんありましたが、近代化が進んでいくと、次第にその数が減っていきました。でも、兵庫県は神戸港があった関係で、その周辺にマッチの会社が残っていったようです。いま、全国に5社あるマッチ会社のうち、4社は兵庫県にあります。時代の流れとともにマッチが減っていくなかで、各社いろんな方面に進出していきましたが、マッチというもののルーツを残して将来につないでいきたいという想いから、何か新しいものを作ろう!ということで、この"hibi"という商品ができました。昔は家庭には必ずマッチがあった時代もありましたが、いまはマッチをすったことのない子どもたちがいる。それが現実だと思います。」

時代の移り変わりとともにマッチの存在感が薄れるなか、ライフスタイルに溶け込む新しい商品を作りたい。神戸マッチの嵯峨山さんが思いついたのは、兵庫県のもうひとつの地場産業とのコラボレーションでした。

「実は兵庫県の地場産業のなかで、"マッチ"は7割以上、8割近く兵庫県で製造されているんです。そして"お香"も7割くらいが淡路島で生産されているんですね。そういう背景があって、兵庫県の地場産業同士で何か作ろう、ということで意気投合して開発が進んでいきました。

もともと、私はマッチ自体の市場をなんとか活性化させようとして、昔のデザインをモチーフにしたレトロ調の雑貨的なマッチを作ったり、エコプロダクトを作ったりいろいろと試みてきました。でも、日常にマッチを使うシーンがないところにいくら仕掛けても、メーカーとして市場を維持していくのが難しい。そこでマッチの技術を使って何か新しい商品を作ろうという風に視点を変えました。マッチの機能は火をつけることなので、火をつけて使うものは何かないかということで、お香にたどりついたんです。」

2011年の夏、マッチとお香のプロフェッショナルが手を組みました。難しかったのは、マッチをするときにお香のスティックが折れてしまわないようにすること。

「マッチをするには、ある程度強度がないと折れてしまう。かたくすれば強度は出せますが、かたくしてしまうと今度は火が燃え移っていかないんです。なので、マッチのようにすっておこった火がお香に燃え移って、そのままずっとお香として燃えていく。それを作るために、強度を持たせながら燃焼性を維持するというところが一番苦労した部分でした。かたさと火の強さとか、もともとマッチで持っている調合のノウハウを使って、一番適正なポイントはどこかというものを見つけるのに結構時間がかかりました。約3年強です。」

この商品を作ったのは、兵庫県にある2つの会社、マッチの神戸マッチ、お香の大発。さらに、この"hibi"のデザインを担当したのも、兵庫県のデザイン事務所でした。

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「メイドイン兵庫というのが大きな特徴で、神戸のトランクデザイン代表の堀内さんという方といっしょにやっています。どうしてもマッチというと"レトロ"というイメージが最初にきますが、レトロというのはあまり前面に出したくなかったんです。スタイル・デザイン、そして世界観はあくまで、今の生活の中に普通にあるようなもので、でもルーツは兵庫県の伝統産業の技術がいかされている、というストーリーを作りたかったんです。この"hibi"というのは日常のなかで使われる商品であってほしい、ということで"hibi" という名前になりました。」

"hibi"の特徴は、マッチをするようにお香スティックに火をつけたあと、専用のマットにそれを寝かせて使うことです。スティックが燃え尽きるまでの10分間、ときにはティー・トゥリーの香り、ときにはイランイランの香りでリラックスした時間を楽しむことができます。

「マットの上に寝かせて使う、というスタイルは『新しいよね、手軽だよね』ということで考えました。オールインワンで、これさえ買っていただければ家にお香の環境がなくても楽しんでいいただける。そういうものにしていこう、ということでマットをつけました。」

神戸マッチの嵯峨山真史さんは、最後にこんな話をしてくれました。

「"hibi"はマッチのルーツを残したライフスタイル商品で、それが世の中の人々に豊かさを与えられる。そして、関わる業界の職人のみなさんは、昔の全盛期の時代のように、自分たちの作っている商品がこれだけ人々に喜んでもらえているんだ、という実感と誇りを持って、将来はこれでみんなに豊かさを与えていこう、と夢をもってできる、そんな商品に仕上がりつつあると思います。自分たちの商品がお客さんの話題になって喜んでもらえている。今だとそういう情報はインスタグラムやtwitterとかで知ることができますので、そういうのを社内で情報共有すると、ものを作っている現場の人間のモチベーションもあがりますよね。」

地域の産業をつないでできた商品"hibi"。小さなマッチ箱に詰め込まれたのは、ものづくりにかける熱い想いでした。

  • "hibi" はオンラインでも購入することができます!詳しくはhibiのウェブサイトをご確認ください。