
日本のさまざまな『島』の料理が楽しめるお店、東京・神楽坂にある"離島キッチン"。メニューには、美味しそうな料理がずらり。【隠岐の島のアジフライ】【五島列島の鯛茶漬け】【島から直送のお刺身盛り合わせ】【屋久島の ジンジャーミルクジェラート】
そして・・・
「例えば、屋久島は鯖が有名なんです。『首おれ鯖』と言って、釣ったあとすぐに首を折って鮮度を保つ。その鯖を使った【鯖スモーク】という燻製に、隠岐の島とか佐渡島、礼文などの別の島のお塩をつけてお召し上がりいただく。ひとくちに塩と言っても、粒の大きさやとれる場所で味が全然違うので、塩の違いを楽しんでいただくにも非常にいい商品ですね。あと、ぜひ食べていただきたいのが【いかのこ】というもので、いかの卵巣って漁師町とかそういうところに行かないと食べられないんですが、このいかの卵巣を酢みそであえたおつまみ。これも日本酒に最高です。」
お話を伺ったのは"離島キッチン"の代表・佐藤喬さん。新鮮な食材を島から東京へ・・・どうやって鮮度を保っているのでしょうか?

「どうやって海士町、隠岐の島から東京まで鮮度を保ちながら持ってきてるんだろうというのが当然の疑問だと思います。海士町は、細胞膜を壊さずに冷凍する『CAS冷凍』という技術を、自治体で初めて取り入れたところなんです。その技術を使うと、隠岐の島でとれたものが東京であれ、ニューヨークであれ、どこでも鮮度を落とさず食べられる。冷凍というと、え?と思われるかもしれませんが、これを使うと島で食べるのと同じ鮮度なので驚かれる方が多いです。」
この"離島キッチン"。そもそもは島根県、島根半島の沖合およそ50キロに位置する隠岐諸島、そこにある海士町観光協会が立ち上げたものです。しかし実は、代表の佐藤さんはこの島のご出身ではありません。地元は秋田。その後、広告のお仕事をされていた佐藤さん。『東京と地方を結ぶようなことをしたい』と考えていました。そんなとき、ある求人広告を目にします。
「行商人、というのを海士町観光協会が募集していまして、それを見たのがきっかけだったんです。それに応募をして、『二次面接が島であるので2泊3日で来てください。』ということで島にお邪魔させていただいて。初日宴会、2日目宴会。面接はいつやるんだろうと思っていたら最終日、船にのる直前に面接らしきものがありまして。
実際に海士町観光協会に入ったのが2009年の4月なんですが、最初の1ヶ月は岩牡蠣の生産現場で働かせていただいて。岩牡蠣って海のなかに3年くらいずっといるものですから、フジツボとか他の貝がたくさんついちゃうんです。それを出荷するために延々磨き続けていました。」
海士町観光協会が『行商人』を募集していたのには、こんな理由がありました。
「実際、観光協会なので『お客さんに島に来てほしい』というのが大前提としてあるんです。でも、島にいながらお客さまにPRしたり、来てくださいというのは難しいと。それならこちらから外に仕掛けていこう、というのがそもそもの始まりです。
最初は何をどこで売るか、まったく決まってなかったんです。それで最初、"キッチンカー"というのが一個の要素で、"島"というのが二つ目の要素。でも、これだけだと何かたりないなと思って。山手線をぐるぐる乗って、1駅ずつおりて何かいいアイディアはないかと探していって、上野駅でおりた時に西郷隆盛さんの銅像を見て思いついたんです。列藩同盟みたいな形で、島同士が手をとりあいながら販売をしていくと面白いんじゃないかなと。その3つの要素が決まったときに、自然に"離島キッチン"という屋号も思い浮かびまして。」
"離島キッチン"と名付けたキッチンカーで全国をめぐること、およそ1年。その後、デパートのイベントなどで島の恵みを販売。さらに、実際の店舗も茨城県の水戸駅などで運営しました。そしていよいよ2015年9月、東京・神楽坂にお店をひらいたのです。
「島には行きたいけれど、東京からどうやって島に行ったらいいか分からないという方が、お話うかがうと結構いらっしゃるんです。そういう方々にとって離島キッチンが窓口になれたらと思っていて。例えば、礼文島とか奄美大島に行きたいというときに、すでに知り合いがいるので、そういう方とおつなぎしたり。そういうほうが旅する方も楽しみが増えるかなって。島に行く人の最初の入り口になりたい、という気持ちでやってますね。」
ちなみに、離島キッチンにうかがうと、最初に香り高いお茶を出していただけます。
「隠岐の島の海士町で福来茶というお茶があるんですけど、和菓子の高級楊子に使われるクロモジという植物の枝を煮出してつくるお茶なんです。きれいなピンク色になりまして、隠岐の島海士町では、福が来ると書いて福来と呼んでいまして、お祝いなどにもぴったりなお茶です。
これ、海士町でも飲まれているんですが、もともと東北の熊を撃つまたぎの人たちもクロモジの枝を常備していて。傷の養生とかにも効くんです。お風呂に入れて傷をいやしたり、傷をおったときに塗り薬として使ったり。あとお茶としても飲んでいたそうです。こうやって飲んでるのは、僕が知る限りでは東北と海士町だけです。」

代表の佐藤喬さんは、東北のご出身。隠岐の島の海士町と東北で飲まれるお茶"福来茶"は、佐藤さんと島をつないだ、あたたかいご縁を象徴しているかのようでした。おとずれる人にもきっと福が来る。あなたも神楽坂の路地裏で、離島をめぐってみませんか?
離島キッチン
時間:火~日・祝
11:30~14:00
18:00~22:00
住所:東京都新宿区神楽坂6-23
アクセス:東京メトロ 東西線 神楽坂駅 出口1から徒歩2分
都営大江戸線 牛込神楽坂駅 A3出口から徒歩5分
ウェブサイト:http://ritokitchen.com