東京メトロ銀座線の浅草駅からすぐ。大きな通り沿いに歩いていくと、こんな看板が見えてきます。

『Nippon まるかじり Japonica Lodge』お店をのぞくと、右側には登山・アウトドア用品。左側には日本茶の茶器が並んでいます。そして、奥の方には日本茶を楽しめるカフェが見えています。ここはいったいどんな場所なのか? 『Japonica Lodge』を運営する、合同会社 観光創造ラボの赤穂雄磨さんにお話をうかがいました。
「ここは、日本のアンテナショップとうたわせていただいておりまして、一言で言うと、日本のさまざまな商品を販売している場所ですね。いろいろなものを販売してサービスを提供しているんですけど、そのひとつとして、日本のブランド専門の登山用品店と日本茶のカフェがあります。このふたつは昨年の5月にオープンしています。その日本茶カフェとあわせまして、主に茶器を中心に日本の伝統工芸品も販売しております。それも含めて5月からオープンしていましたが、昨年の11月から日本ブランド専門の登山用品を使った宿泊サービスも始めております。」
日本のブランドがつくるテントや寝袋を使って宿泊ができる。さらに、そうしたブランドの登山用品のほか、日本の伝統工芸品も販売しているのが『Japonica Lodge』です。代表の赤穂さん、なぜ『Japonica Lodge』をオープンすることになったのでしょうか?
「もともと僕は金融の会社で働いていて、特に東南アジア地域で仕事をしていたんですが、実際に仕事をしながら東南アジア地域でおこなわれている観光を見てみますと、日本の観光のほうがもっとできるんじゃないか、という想いが非常に強くなってきまして。特にインバウンド観光の分野ですね。今でこそ日本のインバウンド観光はすごいことになっていますけど、つい2~3年前まではまだまだアウトバウンド観光と言いまして、日本から海外に出ていく人のほうが多い状況でした。それを見て、なんて日本はもったいないことをしているんだろう?と思って、やっぱり僕は観光でめしを食っていきたいという想いが強くなって、それで会社をやめて大学院に入り直して...
国立の大学院で かつ観光が勉強できるところというと当時は限られていまして、北海道大学と琉球大学、北と南のどちらかという選択肢でした。それで山が好きだったものですから山がある北海道大学に行こうかということで、北海道大学院に進みました。国立の大学院としては観光学の歴史が一番古いですが、それでも2003年からですから、いかに日本の観光学の歴史が新しいかというのがよくわかるストーリーだと思います。」
赤穂さんは、大学院で『インバウンド観光と日本の自然をどう結びつけるか』、こんなテーマで研究をおこないました。そして、いよいよ起業に向けて動き出します。
「可能な限り東京を起点として自然地域にお客さまを送客できないか、というビジネスモデルを考えるようになりました。電気釜でも洗濯機でも何でもそうですけど、"爆買い"なんてキーワードで、中国・アジアのお客さまが来て買っていますけど、やっぱり"日本ブランド"というのが背景にあるから買ってらっしゃると思うんです。その日本ブランドというのが、なぜ優れた登山用品に反映されていないのか?というのが疑問としてあったので、そうだ、登山用品をインターフェイスに日本の自然を案内してみよう。そういうアイディアが思い浮かびました。
日本のメーカーさん、中小メーカーさんが多いですけど、登山用品をたくさん作っていますし、非常にいいものを作っているんですね。その品物を購入いただくお客さまはアウトドアに興味があるお客さまだと推測できます。それならそのまま、日本だったらこういう自然エリアがあるよとご案内できて、日本の自然地域に足を運んでもらう。そういう流れが作れないかなと。」
『Japonica Lodge』の店内にはテントが張ってあり、そこで宿泊ができるようになっています。
「日本ブランド専門の登山用品店をやっているというお話をしましたが、キャンプ用品、特に寝袋やテントなどは、たたんだ状態のままだと分からないですよね。実際に広げて、テントだったら張ってみて、それで中で使ってもらってはじめてその良さが分かると思うんです。それなら単純に張るだけじゃなくて、その中でお客さんに泊まってもらおうと。それでもし使っていただいたテントや寝袋がお気に召したら、宿泊料を差し引いてお買い上げいただく。なかなかそういうサービスをやっているところはないですから。」
店内も案内していただきました。カフェスペースの横には、テントがたくさん。
「ここが宿泊場所 兼 日中はショールームになっています。テントをディスプレイして、そのなかに寝袋とマットが置いてある、という場所ですね。テントにもいろいろ種類がありまして、例えばアライテントさんの"ドマドーム"ですが、普通はテントの前の前室というのは自分でペグをカコンカコンと打って作らないといけないんですけど、これはフレームが前のほうに張り出す形になっていますので、組み立てるだけで前室が立ち上がる、というこれまた面白いテントです。
ご購入いただいたお客さまのなかには登山ではなくてフェスで使うというお客さまも結構いらっしゃいました。登山用のテントですとちょっと小さくなってしまうので居住性そのものは劣りますが、軽いので、持ち運びという面では秀でてますね。」
『Japonica Lodge』を運営する、合同会社 観光創造ラボの 赤穂雄磨さん。山が好きだという赤穂さんは『Japonica Lodge』について、こんなことを話してくれました。
「登山人口、キャンプ人口の増加には寄与できているのかなと思っています。これをやらないと日本の人口自体減っていってますから、登山人口も減っていくんですね。山ガールブームがあって安心してますけど、どうやっても減っていきますので。登山をする人がいなくなると山道も完全にすたれていきますから、ほんとに日本の登山文化そのものがなくなってしまいます。
日本のいま売り出しているコンテンツがサブカルチャー系と言いますか、アニメとか家電とかそういうイメージが強くなっていますが、元来は自然大国ですよと。僕はそれを強くアピールしていきたいですね。店の名前は『Japonica Lodge』と言いまして、日本のアンテナショップというのが分かりやすい名前にしていますけど、会社名は『観光創造ラボ』といいまして、東京を起点に地方にどうやって観光しもらうかという道筋を作る会社ですので。」
日本の素晴らしい自然のなかを旅してほしい。美しい山を歩いてほしい。それは、日本の登山文化を守ることにもつながります。浅草でキャンプができるお店には、そんな想いが込められていました。