「ラクうまごはんのコツ」がグランプリ!料理レシピ本大賞とは?

先月、神楽坂の日本出版クラブ会舘で、ある賞が発表されました。それが今年で2回目の開催となる「料理レシピ本大賞」。

今回の実行委員長、株式会社ブックス タマの代表取締役社長加藤勤さんに、そもそもの始まりについて伺いました。

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「料理レシピ本大賞は去年始まりましたが、話が出たのは一昨年ですね。最初は書店とか出版社とか、出版業界の仲のいい人たちでお酒を飲みながら、こんなのがあったらいいなというところから始まって。出版業界って10数年くらい売り上げが減少していて、これからどうやって生き残りを図っていこうかとみんな悩んでいまして。本屋大賞は大きな賞になりましたけど、あれも10年前くらいに初めてできて今や芥川賞直木賞に匹敵するというか、本の売り上げとしては実際それ以上の効果をあげている賞なんです。そういうお客さんを呼ぶようなきっかけを作っていかないと本屋にお客さまを呼べないですし、本の売り上げも減る一方、という状況です。」

本屋さんに足を運んでもらうきっかけをもっと作りたい。そこで、こんなアイディアが出てきました。

「本屋大賞って対象になるのが小説で、もちろん芥川賞もそうですし、地域の、神奈川県の本の賞とかいろんな本の賞があるんですが、小説じゃない本=実用書の賞ってあるようでないんですね。出版社さんの中には小説をあんまり出してなくて、料理本とかスポーツの本とかインテリアとか、小説じゃない本を出している出版社さんも結構あって。本屋大賞は盛り上がっているけど、そういう出版社さんから見ると蚊帳の外。じゃあ、そういう実用書で賞があったらいいね、と。料理レシピ本という切り口だったらお客さんにも分かりやすくていいんじゃないか、ということで始めました。」

去年のはじめ、「料理レシピ本大賞」が動き始めました。まずは出版社からのエントリーによって、230の候補作が挙げられました。それらの本について一次審査を担当するのは、全国の書店員のみなさんです。

「実行委員とは別に選考委員を作っているんですよ。実は、私は選考にはいっさい関わっていないんですね。選考委員はホームページ上で、書店員だったら誰でも応募できる形にしているんですけど、特に売り場で料理レシピ本を担当している方に入ってもらいたい、ということで呼びかけているんです。私は社長という肩書きなんですけど、そうすると出版社の方と顔見知りになってお酒をごちそうになったりして、この出版社いつもお世話になっているなぁみたいな個人的な感情が強くなっちゃうので、私のような人間は選考に入らないで、実際売り場で普段販売仕入れをしている人が本を見て『これを売っていきたい』『これはレシピ本としてすごくいいんじゃないか』という本を選んでもらっています。」

昨年開催された、第一回の大賞受賞作 飛田和緒さんの『常備菜』という本は、10万部を突破。大きな反響を呼びました。そして、先月。第二回の受賞作品が発表されました。

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「今回の受賞作は『ラクうまごはんのコツ』という新星出版社さんから出ている本です。瀬尾幸子さんという方が書いてまして、簡単においしい料理をどうやって作るかを研究されている方です。『ラクうまごはんのコツ』も本当に簡単にできるレシピでしっかり美味しい、野菜やお肉もしっかりとれるレシピが集まっている本ですね。私も実際、グリーンアスパラの蒸し焼きっていう料理作ってみまして、ちょっとしたコツ、例えばグリーンアスパラって今までただ茹でてたんですけど、そのレシピは蒸し焼きなんですよ。最初にオリーブオイルでちょっと炒めて、水を入れて蒸し焼きにするんですが、瀬尾先生いわく、それが一番グリーンアスパラを美味しく食べる料理法だと。茹でるとうまみが出てしまったりゆで加減が難しいところが、蒸し焼きだとうまみがアスパラに閉じ込められて美味しくいただけると。」

「料理レシピ本大賞」の選考基準のひとつは、家庭で再現できるレシピであること。今年の料理部門の大賞は、

瀬尾幸子さんの『ラクうまごはんのコツ』。

お菓子部門は、『作りおきスイーツ』という本が受賞しました。

「賞を取ってからの問屋さんのほうで販売したデータが実行委員にあがってきているんですが、それだと大賞のものは、賞を取る前の6倍7倍で売れていますね。反響が大きくて実行委員もびっくりしています。」

本屋さんに足を運んでもらうきっかけづくりとして始めた「料理レシピ本大賞」。今年の実行委員長をつとめた 株式会社ブックス タマの加藤勤さんに最後にうかがいました。本屋さんの魅力、どんなところにあると感じていますか?

「本を選ぶ楽しみっていうのは、お店であてもなく探しながらふと全然思いもよらない本を面白いなって見つけるのが楽しみだと思います。今、ネット書店とか大きなターミナル駅の近くにある大規模書店とかショッピングモールのなかにある書店とか、そういうお店ばかりになってきていると思うんですけど、そうすると小さな子どもとかお年寄りが買いに行く時、本を買うために電車に乗ったりとか車を走らせないといけないというのは、あまり便利な世の中じゃないんじゃないかな、と。今なくなりつつありますが、街の本屋を目指してやっている書店を必要としている人はたくさんいるし、お小遣い持って少年ジャンプを買いにいくとか、そういう書店がいまどんどんなくなっていますが、続けられるように経営努力してやっていきたいと思っています。」

街の本屋さんが中心になって選ぶ「料理レシピ本大賞」。選考基準は、家庭で再現できる身近なレシピ。そんなお料理を集めた今年の受賞作は、あなたの家のすぐ近く、街の本屋さんに並んでいます。