今年の夏、サッカーの総合情報サイト『サッカーキング』がこんな記事を配信しました。

[学生団体『WorldFut』は、過去7年間に渡りサポートを続けるカンボジアのスマオン村で子どもたちのために、ワールドカップ・アジア予選カンボジア代表と日本代表の試合のパブリックビューイングの開催を企画。クラウドファンディングによる実施を発表した]

「もともとの発端は、ソニーさんとJICAさんのプロジェクトで去年ワールドカップのときにコートジボワールでパブリックビューイングをやっていたんですね。それで僕と数人のメンバーがパブリックビューイングやりたいよねって思っていたんです。

で、3月か4月くらいですかね、カンボジアがワールドカップ1次予選を初めて突破しました、という話が出ていて、2次予選のグループではなんと日本と一緒だと。ということは日本とカンボジアの試合がある。これはもうやるしかないじゃないか、というのが4月とか5月ですね。子どもたちがサッカー選手になりたい夢を持っているというのは知っていて、それを応援したいなっていう、もともとそういう活動目標があるので、自分たちがパブリックビューイングやることで、子どもたちにとってサッカー選手という目標が少しでも近づいてもらえればいいなって。」

サッカーと国際協力。これをテーマに、2007年から活動している学生団体 WorldFut。現在 代表を務める朝倉悠さん、さらに副代表の岩瀬美南海さん、岡野航さん。大学3年生の3人にお話をうかがいました。

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WorldFutが支援してきたスマオン村。どんな村なのでしょうか?

「プノンペンから東、ベトナムのほうに車で2時間くらい、ベトナムの国境の近くです。カンボジアのプレイベン州にある村なんですけど、農村地域という感じで。私たちが行く時はホームステイをするんですけど首都とは全然暮らしぶりは違います。テレビがあるおうちもあるんですが、全部の家庭にはないというか、裕福な家庭にある、という感覚で、そもそも電化率もあんまり高くないので、テレビはやっていてもサッカーの試合はそんなにやっていない。あんまり見る機会はないかな、という印象でした。都市部に行けば見られるけれど、農村のほうだとなかなか。」

カンボジアのスマオン村でワールドカップ予選、カンボジアと日本の試合をパブリックビューイングしたい。課題は、資金集めでした。    

「機材を購入するという話だったので、試算で100万円以上はかかるよね、と。3ヶ月で100何万集めるとなったときに、今まではチャリティフットサル大会などで集めていたんですけど、なかなか厳しいということになりまして。じゃあクラウドファンディングやってみたらどう?という助言をいただいて。クラウドファンディングはやったことはないし、名前しか聞いたことない。でもチャレンジしました。結果は、110パーセント達成で133万円でした。」

9月3日。ワールドカップ アジア2次予選、日本代表 対 カンボジア代表。その日、スマオン村では、日本の学生たちが走り回っていました。

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「当日は1日、スマオンをサッカー祭りみたいな感じの雰囲気できたらいいね、という話で。パブリックビューイングに向けてお昼くらいからいろんな企画をして、最終的にパブリックビューイング、っていうみんなが記憶に残る一日にしたいね、と。サッカーボーリングとか、キックターゲットも準備したりして、最後にパブリックビューイングという形にしたり。あとは当日決まったんですけど、パブリックビューイングやります、ということを布に書いてそのバスを村で走らせて、ガンガン音楽かけて目立たせて、何とか人を呼ぼうと。急に思いついたので、その布、実はスクリーンの予備で持って行っていたシーツでした。」

会場は、WorldFutの支援で作られた学校。試合当日の夕方、人が集まり始めました。

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「最初は子どもが中心にたくさん集まっていたんですけど、暗くなるにつれて大人というかバイクに乗ってどこからともなく人がどんどんどんどん集まってきて。どこからともなく屋台も来て。大通り沿いに学校があるので、夜になって光がうつっている状況って初めてだと思うので何やっているんだろうという感じで来られたと思うんですけど、そういう形で700人くらいかな。キックオフと同時に歓声があがって。」

日本代表 対 カンボジア代表、結果は、3対0で日本の勝利。圧倒的に攻めた日本としては、もっとゴールがほしかった試合でした。しかし、この夜カンボジアでのパブリックビューイングのため現地を訪れていた学生団体WorldFutメンバーはいつもとは少し違う気持ちで、試合を見つめていました。

僕たちはもうカンボジア人ですね、当日は。やっぱり僕たちとしても夢を届けたいという想いがあったので100とかになってしまうと元も子もないというか。何とか30くらいで前半は10でお願いみたいな。試合中もセーブする回数もふえて、そのたびに歓声があがるのが印象的で。守りきったりとかキーパーがとめるたびにワーっていう歓声で。キーパーになりたい子が増えるんじゃないか、くらいキーパーで盛り上がりました。カンボジアコールもみんなでやりましたね。途中でカンボジアの応援を日本人のメンバーでやっていたらカンボジアの人ものってくれて。すごく嬉しかったです。」

カンボジアの子どもたちが キラキラした瞳で見つめたのは、サッカーの試合と、その向こうにある もっと大きな夢。きっと今ごろ、村の子どもたちは、ワクワクした想いを胸にサッカーボールを追いかけているはずです。