「中途半端なラヴソングはいつでも歌える」。MONGOL800が平和を歌う理由。

MONGOL800の新曲「himeyuri ~ひめゆりの詩~(ピーポー ピーポー)」。今年6月23日、沖縄 慰霊の日、この曲が インターネットで公開されました。こちらは、アルバム『People People』の1曲目に収録されるナンバーです。 キヨサクさんはアルバムについて、こう語ります。

「himeyuriの以前に、アルバムのタイトル『People People』と書いてピーポー ピーポーと読んでもらおう、っていう、そしてアルバムのジャケットの白をバックに赤いサイレンが真ん中に配置されるっていうイメージが僕の中では先行してまして、現代社会というか、今の日本とか、沖縄を含む日本を取り巻くこの状況に対して、よく子どもがサイレンのことをピーポーピーポーというじゃないですか。沖縄に住む人間としてメッセージというか警鐘というか、そういう意味でサイレンをモチーフに持ってきたんですけど。
平和だったり戦争反対だったり、平和っていう言葉をもっと強く声高々に言わないといけない時代なのかなっていう、中途半端なラヴソングはいつでも歌えるや、じゃないですけど、そんな気分になったのはアルバム制作に入ってからですね」
キヨサクさん、実は、アルバム制作に入る前は、「もっとポップな、メッセージはあまり打ち出さない、言わば 気楽なアルバムにしよう」そんな考えを持っていました。しかし、、、、
「いざ作ろうとしたときに、歌いたいこととか、伝えたいこととか、歌詞におさめたいことっていうのが、全然とげとげしくて荒々しくてというか、ハッピーな感情というよりは怒りのほうが強いというか、ふたをあけたら、今歌えることを歌っとかないとという、義務感じゃないですけど、俺等みたいなインディバンドが声高々に歌いやすい状況だと思うので、自分たちだけでしかできないことをあらためて考えたかもしれないですね」
アルバム冒頭の「himeyuri ~ひめゆりの詩~」。
この「ひめゆりの詩」が意味するのは、どんなことなのでしょうか?
「ひめゆりって聞くと、ひめゆりの塔、ひめゆり学徒隊、沖縄戦、地上戦。いろいろなワードが広がっていくんですけど、70年前、たった70年前にこういうことが起きたっていうこと。そして、おおきなことは言えないですけど、いま音楽でせめて『ひめゆり』という言葉だけでも若い人たちに引っかかってもらいたいし、そこから掘り下げて、ああこういう事実があったんだって思ってほしい。で、戦後70年の慰霊の日、6月23日のタイミングで、それを、じゃあせっかくだから日本だけじゃなくて、Youtubeで動画をアップしたというのがあるんですけど。もしhimeyuriを題材に映像作品を作るとしたら、唯一の地上戦で、県民が何人死んで、アメリカ兵が何人死んだ、という事実を形にしよう。そうすることによって、風化させないようにというか、そういうきっかけにもなればいいなと思ったし」
印象的な歌詞「平和と呼ぶには遠く、歴史にするには早く」。キヨサクさんはこの歌詞について、こんなことを話してくれました。
「平和と呼ぶには遠く、歴史にするには早くっていう言葉が、自分の中でのキャッチコピーというか、平和のなかで暮らしてきて、人生の半分音楽で暮らしてきたようなもんですけど、平和だから歌えるってこともあるし」
ニューアルバム『People People(ピーポー ピーポー)』。最後の「to be continued」のあと、ボーナストラックが入っています。そこには、沖縄の音楽の先輩たちへの想いが込められています。
「沖縄の先輩方が歌ってきた平和のワードというか、そういうのも取り入れたいというか、ネーネーズの歌だったり、BEGINの歌だったり、ディアマンテスの歌だったり、みんな平和を発信してきた人たちへのリスペクトも込めて」
MONGOL800のキヨサクさんに、最後にこんな質問。戦争について、上の世代の方からお話を聞いた経験はありますか?
「おばあちゃんはまだ健在で、ようやく何年前かな、2~3年前だったと思うんですけど、唐突と話しだした時間があって。僕のおばあちゃんは記憶の片隅からひっぱりだして話してくれたと思うんですけど、今でいう、場所を的確に指示してくれるんで、ここからこの山をこえて、今はこの場所になっていて、っていう。僕らからは今はもう繁華街の場所で、とか。彼女なりに言えることを、急なタイミングでしたけど、言ってくれたんだなというのはすごく嬉しく思ったし。やっぱりあんまり経験者の方は多くを語りたがらないのは事実ですけどね。取材して語り部がしゃべってパッケージできてるものはほんの一部だと思うし」
沖縄から、音楽にのせて、平和への想いを。ロックのビートで、まっすぐに届ける。MONGOL800の活動は続きます。