Mr.Childrenのアルバム『REFLECTION』秘話

エンジニアの今井邦彦さんに、ケン・マスイがインタビュー。その模様をご紹介します。今井さん、実は、Mr.Childrenとはデビュー前からの付き合いです。最初の出会いから20数年。今回は、メンバーによるセルフ・プロデュースにも挑戦した、いわば、ひとつのターニングポイントです。

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ケン・マスイ(以下ケン)「メンバーがセルフ・プロデュースという形になっていくわけですよね、作っているなかで。どういったレコーディングにしたいと今井さんは思ってましたか?」

今井邦彦さん(以下、今井さん)「これまでは小林さんというプロデューサーがいて舵取りをやってくれてたわけです。で、今度、メンバーでやりたいとなって4人だけで始まると、いい意味で僕はメンバーのやっている姿が音に出るように、というのが自分の中での目標でしたね。はっきりとした4人の姿が音であらわせる。これを一番自分としてはやりたいなと思って始めてましたね。みんなの発言が増えましたよ。メンバーだけでやるとなると、みんな無口だと思っている田原君もきちっとしゃべるし、ああしようこうしようというのがはっきり出ましたね」

ケン「一番みんなが意見を出しあって、曲が生き物のように変化していった曲っていうと何ですか?」

今井さん「街の風景。桜井君がその曲を出してきて、みんな好き勝手にやっちゃってください、みたいな感じの話もしてたから、みんなアイディアを持ち寄ってああでもないこうでもないと固まった感じですね。面白かったですよ」

ケン「レコーディングの風景は、会社員っていうとあれですけど朝来て夜まで残業するみたいなスタイルじゃないですか」

今井さん「桜井君、好きだもんね。朝早く来て最後までいる、っていう、毎日、だいたい2時スタートなんです、基本は、ミスチルやってるとき。で、僕が2時少し前にいくと、スタジオいくと、音が流れてるし、ドア開けるともう歌ってるし、もう歌ってるよって。それが毎日ですよ(笑)」

ケン「Starting Overも、何度も歌入れして、何度もやりなおした曲ですよね?」

今井さん「それがもう毎日毎日歌ってるから、いつまでやってるんだろうなっていうくらい歌ってました。年末かな、それやってたの。とにかく歌ってましたね~。でも、最後は、元に戻ってた(笑)全部が全部じゃないんですけど、結構元を使ってましたね」

ケン「ファーストアイディアが残ることもあるということ?」

今井さん「桜井君ってそういうところすごいんです。まずデモテープ作ってて、みんなで、せーのでやるじゃないですか、そこで仮歌を入れるんです。それが彼にとってすごく大事なものというか、きちっと歌うんです、集中して。だからいつもすごくいい仮歌ができるんです。仮歌みたいなのが世に出てるものが結構ありますよね。かっこいいんですよね。やるな~と思っちゃう。伝わるんですよ、僕らにも、おお~きたねこれ、みたいな」

ケン「それ、録る側としても、、」

今井さん「わくわくしますよ」

Mr.Childrenのニューアルバム『REFLECTION』。エンジニアの今井邦彦さんにうかがったHidden Story。桜井和寿さんの ヴォーカルのレコーディングについてさらにうかがいました。

今井さん「歌は桜井君が主導でやってるから、自分が立ち会ってないことも結構多いんですよ。最終的なのは立ち会ってなかったりするから、そこからリクエストがあったりとか、それでその歌にどういう化粧をしていくかというのはディスカッションしながらやりますけどね」

ケン「今回はどんなリクエストがありましたか?」

今井さん「モテるように、とか(笑) これほんとですよ。未完という曲があって、これはガンっていったほうがいいよね、どう?って聞いたら、<ガンッ!なんですけど、やっぱりちょっとモテるレベルでお願いします>と。あんまりハードなロッキンになっちゃうと女の子ひいちゃうじゃないですか、というようなニュアンスですかね」

ケン「これ、ほんとです」

今井さん「よく言いますね」

ケン「モテないよ、それじゃあ、みたいな(笑)」

今井さん「モテる感じでお願いします、ってね(笑)」

ケン「今井さんがレコーディング作業時間で、一番時間がかかるのはどんな時間ですか?」

今井さん「ミックスと最初にドラムを録る、というこのふたつのが大変かな~。ドラムって曲のイメージをつくる要素が大きいから、そこの音づくりはドラマーのJEN君とああだこうだいいながらやるんだけど、そこはなかなか思ったようにいかないから。あとミックスっていうのはひとりでやる作業だから基本は。面白いからいろいろ試せるし、これだね!って自分が納得したらみんなに聴かせる、という作業だから時間はかかりますね」

ケン「しかもハイレゾで聴けるっていう、今回は」

今井さん「僕らがいつもやっているレコーディングというのは、ハイスペック、ハイレゾのような状態で録音して日々作業してるんです。でもCDっていうのは音の枠があるのでデータを小さくして入れなければいけない、という作業があるんです。でも今回はCDはCDでそうなってるんですけど、そのハイレゾというのは僕らのスタジオで流れている音。それが聴けるということですね。それをやりたいというのは桜井君が言ってましたね」 

エンジニアの今井邦彦さんに最後にこんな質問。今井さんが、リスナーに届けたいのはどんなことですか?

今井さん「音楽を好きになってほしいですよね。音楽をみんなで一生懸命つくってるし、それをいろんな人に聴いてほしいな、というのはすごくあります。いま世の中こういう状況ですけど、CD買って聴いてくれると嬉しいです。少しでもいい音で聴けるように、自分は頑張っているつもりです」

みんなに 音楽を好きになってほしい。そんな想いを込めて、バンドとともに つくり上げた曲が実に23曲!アルバム『REFLECTION』につまっています。