世界に広がれ、暗闇のウェーヴ。100万人のキャンドルナイトに込めた想いとは?

「電気を消して、スローな夜を」そんなキャッチコピーのもと、毎年 夏至の日を中心にキャンドルナイトが呼びかけられています。呼びかけ人代表をつとめてきたのは、株式会社 大地を守る会代表取締役社長の藤田和芳さんです。そもそも、これを始めようと思ったきっかけは?藤田さんにお話をうかがいました。
「2002年にアメリカのNGOとか環境問題のグループが自主停電という電気を消すという運動をやっているのを知りました。なぜそういうことをしていたかというと、その少し前にブッシュ政権が初めて誕生しました。その前のクリントン政権は原発はやめる方向で進行していたものを、どんどん原発を作るという極端なエネルギー政策に転換をしたんですよね。アメリカの環境団体やNGOは、電気を消して抗議をするという活動をしていたんです。
それを聞いて、電気を消す、というのが非常に新鮮だと思ったんです。その運動に呼応するというよりは、電気を消すことで、今までとは違う新しい市民運動ができるのではないか?人々の心の中に入っていく運動が、電気を消すということで可能かもしれないと思いました。」
2002年の秋。まずは大地を守る会の会員に対して電気を消す運動が 呼びかけられました。すると、会員のみなさんからは「キャンドルの灯りで 子どもに絵本を読んであげました」、「暗いなか、ピアノを弾いてみたら まったく違う音色に聞こえました」といった声が 寄せられたのです。「これは人々の心に響くものだと思って、大地を守る会の会員だけでなく、いろんな団体の人たちとこの運動をやってみたいと思い、「呼びかけ人」を作って、2003年の夏至の日に、一年でいちばん日が長い日にやってみよう。
名前はキャンドルナイトにして、その前に、たくさんの人が集まれるように「100万人の」とつけて、初めて呼びかけたんです。この特徴は、当時イラク戦争が始まろうとしていたのでイラク戦争に反対するとか、いろんな意見がでましたが、主催者側から何のために電気を消すかを言うのをやめようと。集まってくる人が自分の意思で電気を消した時間に、自分の人生を考えるとか、恋人同士で未来を考えるとか、今の文明を考えるとか、いろんな考え方がありますけど、ただ黙って2時間電気を消そう、100万人のキャンドルナイトに参加しよう、という呼びかけにしました。」

2003年の夏至に予定された、第一回の「100万人のキャンドルナイト」。数々の著名人も呼びかけ人として名を連ねました。ミュージシャンの坂本龍一さん、大貫妙子さん、加藤登紀子さん、脚本家、作家の倉本聰さん、映画監督の龍村仁さん。そして、キャンドルナイト当日。増上寺のステージには、忌野清志郎さんが登場しました。
「最初の年は増上寺のステージに忌野清志郎さんが来てくれました。僕が個人的に清志郎さん知っておりましたし、大地を守る会の会員でもありましたので彼に呼びかけ人になってくれとお願いましたら、「やろうじゃないかBABY」とか言ってですね、歌ってくれました。清志郎さんにギャラをはらった記憶がないんですけど...とてもおもしろがって来てくれました。増上寺でわざわざ自分の意思でお坊さんの恰好をして小坊主の恰好をして歌ってくれましたからね。」
夏至の日の夜、2時間電気を消して、キャンドルの灯りで過ごしてみませんか?2003年にスタートしたこの呼びかけ。環境省の地球温暖化防止キャンペーンとも連携し、大きく広がりました。推計で最大1000万人もの人が参加したと言われる このイベント。2011年は、いつもとは 少し違う意味を持つ夜となりました。
「その年は、作家の倉本聰さんがすごく心を痛めていて、福島の被災した場所でキャンドルナイトをやりたいとおっしゃって。キャンドルナイトそのものが亡くなったたくさんの方への鎮魂という形で進みました。倉本聰さんは、津波で流されたたくさん方の命が沖の方で漂っていると。
昔から海で遭難した人の家族は、浜で火を燃やして「いつでもここに帰ってきなさい。」ということをやっていたそうです。だから、こういう年にこそ、浜でキャンドルナイトをして「いつでも帰っておいで」というようなキャンドルナイトにしたいとのことでした。ですからこの年、日本中で行われたキャンドルナイトは、亡くなった方への鎮魂と、もうひとつは私たちがたどりついた文明がどういう意味があったのかということを、もう一度キャンドルナイトで考えてみよう。そんな意味のものになりました。電気を必要とした生活が実はこういうことを生み出したのだという。」
最初に「100万人のキャンドルナイト」を呼びかけた大地を守る会の藤田 和芳さん。藤田さんが イメージするのは、「暗闇のウェーヴ」です。
「自分たちの存在を宇宙からながめてみるような、そういうきっかけにしてみようではないか。サッカーの観客たちのウェーヴのような、地球上で暗闇のウェーヴがぐーっと出ていく、地球の自転に応じて。例えば、東京がキャンドルナイトをやったとすると、次はソウルが起こって北京が起こって、ウランバートルはそんなに明るくないですけど、ウランバートルからずっと中東を通ってフランス、イギリスの方までいくという暗闇のウェーヴが世界に広がっていって...平和や文明等、さまざまなことを考えるきっかけになったらいいな。私たちは、持続可能な社会というか、効率や生産性だけでなくて、命を大事にするような社会をつくりたいと思っていましたので、そういうふくよかな社会というか、あたたかみのあるようなそういうものがみんなで考えられるような、短い時間ですけどそういう空間になっていると思います。」

キャンドルのあかりのなかで考える、ふくよかな社会。それは、効率や生産性ではなく、命を大切にする社会。平和な世界。「電気を消して、スローな夜を」今年も、「100万人のキャンドルナイト」が呼びかけられています。
●6月21日・日曜日、港区の増上寺では、「100万人のキャンドルナイト@増上寺2015」が開催されます。J-WAVEは、この日のステージをプロデュースしていて、オリジナル・ラヴ田島貴男さん、moumoon、藤巻亮太さん、さらに、GAKU-MCさんも登場!ライヴはフリーです!増上寺でお楽しみください。