20150605hidden01.jpg今週は、太陽の熱だけで調理ができる!「ソーラークッカー」のHidden Story。

今回、取材にお答えいただいたのは、栃木県にある足利工業大学 自然エネルギー・環境学系 教授の中條祐一さんです。まずは、「ソーラークッカー」とはどんなものなのか、教えていただきました。

「日本語では太陽熱調理器と言います。ごはんを炊いたり、おかずを作ったり、そういう調理に使う道具です。太陽の光というか、太陽熱だけでその調理をおこなうのがソーラークッカーということになります。見た目は、3種類くらいに分ける方が世界的にも多いのですが、いかにも光を集まる形のパラボラ型のものや、箱の中の全体の温度をあげていく箱形、あとは作るのを簡単にしようということで平面とか平板の集合体で作ってあるパネル型など、見た目の差があります。」

例えば、パラボラ型は、銀色のアルミホイルがパラボラアンテナのような形に張り巡らされ、その中心に鍋などを置き、太陽の熱を集めて調理するというもの。他に、箱のような形のもの、いくつかのパネルを組み合わせたものがあります。このソーラークッカーで、どんな料理ができるのかというと...     

「テールシチュー風に牛すじを買ってきまして、それを野菜と一緒にパネル型にセットして、朝から晩まで8時くらいから16時くらいまで、日が出ているあいだずっと火を通しました。そしたらものすごく美味しいものができました。それはハヤシライスのようなものなのですが、ものすごく美味しいものができたんです。味が違うことを、ここで説明できないのですが、気のせいじゃないと思います。味が違います!

よくケーキを作りますが、ケーキをパネル型で作ると、日が出てさえいれば失敗することはまずありません。普通ケーキですと、分量や時間、温度管理などが難しいと思うのですが、置いておくだけで勝手にふくらんで勝手にケーキになります。時間を多少間違えても、「ちょっときつね色になっちゃったかな?」くらいで、こげたり、バサバサになったりとかは全くありません。

世界では200年以上前、日本でも60年ほど前から存在するソーラークッカー。中條教授が注目し始めたのは、20数年前。ソーラークッカーのコンテストに学生とともに参加したのがきかっけでした。そして この技術、、、薪を燃料に使っている途上国で潜在的な需要があると考えられています。

途上国に出かけるようになったのは、ここ12~3年くらいなのですが、海外に研究成果を持って行って発表すると、「日本国内の教材としてしか使っていないのか?」と、言われるんですよね。「本当に困っている人を救うようなものでなければソーラークッカーじゃない」というご指摘を受けまして、実際に薪に困っている方が実用品として使ってもらうものを目指して商品開発を進めているところです。

20150605hidden03.jpg薪を燃料として使っている国へ ソーラークッカーを伝えたい。足利工業大学の中條祐一教授は世界の国々へ足を運んでいます。

ケニアの植林をしているNPOは、木を植えても植えても、大きくなる前に伐採されて、薪として持っていかれるということで、薪の代わりに提案できるものとしてソーラークッカーを提案しに行きました。

またエチオピアでは、難民キャンプで使ってもらおうということで持って行きました。その時、難民キャンプに出かける前に首都で、中流家庭の方に料理の仕方を教えて頂いたのですが、そこでは、電気コンロだけじゃ足りなくて、炭と電気の併用になっていました。その燃料代がばかにならないということで、ソーラークッカーを見せたら、非常に興味を持たれて、欲しい欲しいと言われたのでそこに1台置いてきました。

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中條教授は、途上国での利用だけではなく、こんな可能性も指摘します。

例えば、震災のときに使うという手もあると思います。災害時に備えておいて、いざ困った時にそれを引っ張り出してきて使う・・・ということが考えられるのですが、いきなり困っているからと送ったとしても使い切れていないと思います。実際、震災の時に大学からかなり送ったのですが、やはり使い切れてない。ですから、ものを配るだけでなく、きちんと使える人間が行って、使い方を見せなければいけないと思っています。もちろん、途上国へも紹介するだけでなく、普及させることを研究している人間が深く関係していかないとなかなか使ってもらえない。ソーラークッカーは、ものすごく潜在能力があるものですが、もっと深く関わらないといけないと思っています。

いま、中条教授が必要だと感じているのは、ソーラークッカーを使う仲間を増やすこと。そんな仲間が、ソーラークッカーの使い方を広めていく。

その先には、多くの人々が待っています。

薪も一緒に使わないとごはんを作れない人は、世界の人々の二人に一人はいるとされています。その方々も充分な薪があるかというと...単純に考えても20億人くらいが慢性的な燃料不足に悩んでいるとされています。まだまだソーラークッカーの果たさなきゃいけない使命がたくさんあると思っています。

太陽の力を生活にいかす道具=ソーラークッカーの輪を広げる活動が続けます。