今年1月に本格発売になった「粉しょうゆ」。 販売元は、京都にある老舗の料亭「下鴨茶寮」です。

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そもそものはじまりを、「下鴨茶寮」のご主人、放送作家の小山薫堂さんにうかがいました。

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最初のきっかけは「牛のからあげ」というのを料理長に作ってもらったんですよね。これは僕があるお店で食べた、、、普通、牛ってのはフライじゃないですか。あとはカツじゃないですか。それをからあげで食べてみたらすごく美味しかったんで、料理長に「牛のからあげを作ってくれ」と。で作ってもらったんです。これを食べるときに、塩だけだとちょっと物足りない。かといって、しょうゆをつけてしまうと表面の衣がせっかくサクサクなのに、じゅわっとなってしまうので、何かいい方法がないかなと思ったときに、そうだ、しょうゆがパウダーだったらサクサクしたままの食感で食べられるなと思って、それで「粉のしょうゆを作ってもらえないか」と言いました。

牛肉のからあげを食べるときに、そのサクサクした食感を失いたくない。でも、塩では物足りない。これが開発のきっかけでした。しかし、しょうゆを「粉」にするという発想は、どうやって生まれたのでしょうか?

塩がここ数年ブームじゃないですか、僕もよく塩を使うんですけど、でも塩だけではちょっと物足りないことがあって、でもしょうゆはべちょべちょするし、何かいい方法ないかなと思ったときに、これをドッキングさせて、そういえば、しょうゆって粉状のものがないなと思いまして、できないのかな?というふうにひらめいて、、、あとはもう現場でやってくださいと言って、難題をふっかけた、という感じですね。

「しょうゆを粉末にしてほしい」。そんな難題を受け止めることになったのは、京都の料亭、「下鴨茶寮」の料理長、明石尚宏さんです。明石料理長は、あるもののことを思い出しました。
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ソイソルトというのが、その時期には出回っていたんですけども、それをベースにしつつ、フリーズドライというか粉末にできるしょうゆを探すところから始まりました。

粉末にするのに適したしょうゆは、どこにあるのか?料理長の試行錯誤が始まりました。

僕がいろんなものを食べたなかでたどりついたのは、かめびし醤油というしょうゆのソイソルトを食べたときに、これが一番適しているなと思いまして。香川県にある かめびし屋のしょうゆを取り寄せ、フリーズドライに。濃厚なしょうゆを選んだおかげで、粉末にしても しょうゆの香りがしっかり残りました。そして、そこに、ゆず、一味唐辛子などを加え、「粉しょうゆ」が完成しました。

料理長は、「しょうゆを粉にしてくれ」という難題を出した小山薫堂さんに、粉しょうゆが完成したことを 報告しました。

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僕も忘れているころに「粉しょうゆ、こういうのでどうでしょう?」と持ってきたんですよね。で、最初に食べたのは、白いごはんにかけたんですよ。ふりかけのように。そしたらそれがびっくりするくらい美味しくて。これはいろんな使い方ができるかもしれない。揚げ物にかけるだけでなく、ふりかけの代りに、しょうゆふりかけのようにかけても美味しいなと思いました。先に、牛のからあげがなかったんでごはんで試しましたが、牛のからあげも試しましたし、今も料亭では牛のからあげには粉しょうゆをつけています。あと、お寿司にもあいますね。白身であるとか、いかとか、うににちょっとかけても美味しいですしね。粉しょうゆは量を調整しやすいんですよね。液体だとつい出しすぎるとかあるじゃないですか。粉しょうゆは塩のようにつまんで好きな量をかけられるのがいいですね。

この 粉しょうゆ。兵庫県にある「パティシエ・エス・コヤマ」の小山進さんの目にも とまり、チョコレートに使われました。そして、それが、パリで開催された 「サロン・デュ・ショコラ」で 高い評価を得たのです。  

小山進さんという日本を代表するパティシエの方がいらっしゃって、その小山さんにうちの料理を出したんですよ、下鴨茶寮にきたときに食べてもらったら、すごく美味しいと、なかでも粉しょうゆがすごいと言って、これもしかしたら使えるかもしれない、チョコレートに使ってもおもしろそうですとおっしゃって、それで本当に使ってそれが結構いい賞をとったんですよね。でも粉しょうゆはアイスクリームにかけると意外に美味しいんですよ。これは料理評論家の山本益博さんが発見したんですけど、益博に粉しょうゆをあげたらいろいろ試してくれてバニラアイスに粉しょうゆをかけたらすごく美味しいと言われて。

天ぷらなどの、さくさくした食感を損なわない「粉しょうゆ」。液体ではないので、持ち運びがしやすいことも ポイントです。小山薫堂さんは、いつも 小さな袋に入れて 粉しょうゆを持ち歩き、 こっそり 使っているそうです。