今朝登場するのは、陸上 男子400mの日本記録保持者で、東海大学教授、陸上部監督をされています、高野進さんです。

高野さんと言えば、アジア大会では4つの金メダルを獲得。そして1991年の世界選手権、1992年のバルセロナオリンピックでは 400mで決勝に進出し、日本人選手として60年振りのファイナリストになりました。そして、北京とロンドンのオリンピックでは陸上の日本選手団の監督も務めていらっしゃいます。そして、明日からは北京で世界陸上が開幕します。現在も 400mの日本記録を持つ高野さん。(1991年に出した44秒78が現在も破られていません)改めて400mという種目について教えていただきました。
「400mというのは短距離の部類に入るんですけれども、いわゆる一気に走り切ることができる限界値(の距離)でもあります。やはり自分の能力を一番発揮できる距離ということで、地味な種目ではありましたが、400mで世界を目指そうと学生時代は思っていました。」
400mは短距離の部類に入るということで、高野さんがこんな数字を教えてくれました。100mの世界記録をもつボルト選手は、1秒間に進む距離は 12m強 だそうです・・・そして、現役引退後、指導者になられた高野さんは、どうすればもっと日本人が速く走れるようになるのか、アメリカに渡って、様々な指導者の指導法を勉強したそうです。あの、カール・ルイスさんにも教わったそうです。 そんな中、ある走り方に挑戦します。
「海外の選手はどちらかというと体の後ろ側の筋肉が発達している。後ろにスウィングする力が強いんですね。なので、ヒザを上げる練習をすれば、自然と地面を押せるんです。日本人は骨盤が少し起きているというか、後傾している。発達しているのは、体の前の腿とか、そちらが得意な方な筋肉なんです。ですから、ヒザは簡単に上がるんですね。綺麗に。逆に下げて後ろにスウィングするというのは苦手なんで。で、腿上げっていうとすごくみんな上手にできちゃう。で、上手にできると速くなると思って、外国人もやっているから日本人もやろうってことで昭和40〜50年代から やっていて、我々もそれを教わってきたんです。ただ、私はこれをやっても上手く前に進まない...というのが本能的にあったので、2002年〜2003年頃に ナンバ的な力の発揮の仕方を試みようということで、右側と左側の力の仕事を分けて、右・左・右・左という。それに挑戦し始めたんです。」
ナンバ走りといえば、象徴的だった選手が、末續慎吾選手ですよね!高野さんの指導のもと、2003年の世界選手権で、200mで3位になりました。そして現在、陸上短距離では100mで日本人がついに10秒を切って、初の9秒台という記録を出すのでは!?と、注目が集まっています。「最速の走り方」 を追求し続けている高野さんに、この記録についてどう思っているのか、伺ってみました。
「(10秒を)もう切るのは...切ると思います。ただ、 邪魔をしているのは、その9秒台の強い意識と、周りからの過剰な期待と本人のこだわり・・・9秒台にいきたい そういう気持ちの強さが邪魔をしているだけですね。 記録を意識して走るとだめなんです。 記録は追いかけると逃げて行くんです。 だから記録よりも走り方や勝負にこだわるというのが大事で、 結果記録がついてくるという風にしないとダメだといつも言ってるんですけど、どうしても欲が出て来るんですね。今日は風が追い風で、今日は9秒台が出そうだ!って周りも選手も思って。 出るものも出なくなるというのがありますよね。」
高野さんは他にも、日本ランニング振興機構で理事長も務められていて、たくさんの人が走ることを楽しみ、極め続けて行けるように、活動をされています。そんな高野さんが練習方法などを解りやすく解説してくれている本、『「走る」のなぞをさぐる〜高野進の 走りの研究室〜 』が、 少年写真新聞社から発売されています。こちらも是非、ご覧ください。そして高野進さん、貴重なお話、ありがとうございました!